舞台『文豪とアルケミスト』第５弾インタビュー！久保田秀敏×安里勇哉が感じた「文字の力」

特別インタビュー

2022年9月に上演予定の舞台『文豪とアルケミスト嘆キ人ノ廻旋（ロンド）』。文劇第5弾となる本作では、ついに芥川龍之介の内面が掘り下げられる。芥川と関わりの深いキャラクターが多数登場するが、中でも印象的な存在となるのが久米正雄だ。文劇第1弾より芥川龍之介役を演じてきた久保田秀敏と、久米正雄役として文劇初参加となる安里勇哉に、公演に向けて話を聞いた。

――文劇、第5弾でついに芥川龍之介の物語が深く掘り下げられますね。

久保田：そうですね。第1弾では、平野良くんが演じる太宰治が中心で、芥川龍之介が侵蝕されるという流れでした。その中で、芥川龍之介の周りの物語にも少し触れていたんですよね。今回の仮台本をざっくり読ませていただいたんですが、今回は親友であり、同志である久米正雄の作品に関わる物語になるので、芥川龍之介を演じさせていただく僕としても、今までのどの作品よりも思い入れの強いものになるのではという期待でいっぱいです。

――第1弾では名前だけの登場だった久米正雄が、安里勇哉さんに決まったと聞いた時は？

久保田：安里くんとは、音楽劇『ガリレオ★CV』という作品で共演させていただいていたんですが･･･実は、その時も今回と同じような間柄の役だったんだよね？

安里：そうですね。ライバルではないんですが、ちょっと対立し合う役というか。

久保田：そうそう。今回お話をいただいた時「あ、似てる」と思って。なので、そこは何の心配もしてないと言いますか（笑）。役者としてすでに信頼できる関係性の上でスタートできるので、稽古もより楽しんでできるなと思っています。

――安里さんは、文劇初参加となりますが、現時点でどんな印象をお持ちですか？

安里：文劇という作品自体はもちろん知っていたんですが、今回の台本を見たら･･･めちゃくちゃエネルギーを使いそうだなと思いました。身体的なエネルギーはもちろん、心のエネルギーも。印象的だったのは、久米はそのエネルギーをうまく表に出せないということ。現代の言葉で言うと、ずっとツンデレなんですよね。

久保田：ふふふ（笑）。

安里：ツンデレというより、ヤンデレ寄りかな（笑）？素直になれないんだなあと。芥川のことは尊敬してるけれど、嫉妬もある。それを隠しきれなくて、性格上どう接していいか分からなくなる、みたいな。実際に演じてみたら全然印象は変わるかもしれないんですけど、最終的に、その複雑な感情をうまくこの世界観の中に溶け込ませていけたらいいですよね。

――久米もそうですが、夏目漱石など、文劇初登場のキャラクターも今回は多いですよね。

久保田：漱石先生はお名前だけ第1弾の時に出ていたので、ようやくという感じですね。それから、今回は海外勢も出てくるのが気になりますね。江戸川乱歩のペンネームの由来になっているエドガー・アラン・ポーとか。台本を見て、ふたりの掛け合いはコントっぽく日替わりになるんだろうなと想像したりして（笑）。

安里：でたでた（笑）。またわごちゃん（江戸川乱歩役和合真一）がおもしろショーをやるんだろうなって（笑）。

――そういう意味を含めて、場数を踏んだ方々が集まっているのも楽しみですね。

久保田：20代が1人らしいから、昭和くさい現場になるんだろうなと思って（笑）。

安里：ほんとですよ！平成生まれが1人なんでしょ？あと、みんな昭和っすからね（笑）。

久保田：でも単純に嬉しくもあるよね。僕らの年代になってくると、座組で1番上になる場合も多くなってくるし。それはそれで刺激になるけど、今回みたいな顔合わせだと思いっきりやれる安心感もあるよね。反面、ちょっとした油断もできないなっていう焦りも持ってないといけないなと思う。

安里：吉谷さんが一番怖いと思ってたりして。なんだこいつら～！って。

久保田：確かに、みんな我が強いな～って思うかも（笑）。ちゃんといいものを作ろうっていうテンションを持つ人たちの集まりだと思うので、稽古がすごく楽しみ。

――今回のお話の印象は？

久保田：今回の物語も、今の時代とリンクするような内容になっていて面白いな～と思いました。武器で戦うんじゃない、言葉で、想いで世を変えていく。争うのではなく、想い合えれば人は動くし、変われる。そういう強いメッセージ性が感じられて。今の世界情勢とも相まって、より観てくださる方々にも感情移入していただけるのではないかと思いました。

安里：ファンタジーな設定の中でも、人間ドラマがちゃんと根幹にありますよね。それから･･･基本的に言葉が難しい（笑）。初めましての日本語も多かったので、その辺りから勉強しなきゃなと。こんなに日本語っていろんな言い方があったんだ～って思いました。

久保田：そうだね、確かに難しい部分はあるね（笑）。

安里：小説の話や、作品の中の名言も結構引用されていたりするんですけど、台本を目で追っているだけだと「どういう意味だ？」ってなったりしたんですよ。結構、遠回しな言い方をしていたりするし。だから、ちゃんと伝えないとお客さんも置いていかれることになっちゃうんじゃないのかなって考えたり。

久保田：今って当たり前のように情報伝達ツールがあって、そこら中に情報が転がっているから、拾えば何かしら得れるものがあるし、何不自由ない生活ができますけど、文豪たちが生きていた時代の人たちは娯楽も少なかっただろうから。活字一文字一文字の力って、今の僕らが想像できないぐらいの大きなものだったと思うんですよね。だからこそ、生半可な気持ちで発すると言葉が持っている本来の力を全然お客さんに渡せなくなってしまうから、より慎重に伝えなければ、という重責があるよね。

安里：言葉をしっかり発して受け止められるように、僕自身あんまり本を読んだりしてこなかったんですけど、これを機に久米さんの作品を読んでみようかなと思っています。

――経験をたくさん積んだ皆さんの、言葉を届けるお芝居を楽しみにしています。

安里：今までにない平均年齢の2.5次元舞台なので（笑）。多分、2.5次元作品で1番平均年齢高いんじゃない？

久保田：うん、そうと思う（笑）。

安里：何の心配もなく稽古に入れる現場もあんまりないので、それも含めてすごく楽しみにしています。ぜひ、皆さんも楽しみに待っていてもらえたらと思ってます！

久保田：文劇シリーズを第1弾から観てくださっている方たちは、芥川龍之介の周りのキャラクターがついに出揃うので、より深く芥川の物語を味わっていただけるのではないかと。もちろん、途中参加の方にも分かりやすく作られていますし、詩や小説に触れてこなかった方も文劇に触れることで分かりやすく文学を楽しめるのではないかと思います。その上で、今の世を生きる僕たちの想いと物語がリンクする作りにもなっているので、自分の心に余裕があるなと思ったらぜひ観に来ていただきたいです。