舞台『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』鳥越裕貴×岸本勇太×中屋敷法仁インタビュー!今回の文ステは「密度濃いめ」


2021年4月16日(金)に大阪で開幕を迎える舞台『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』。文ステシリーズ第5弾となる本作は、2018年3月に公開され大ヒットした映画を舞台化する。シリーズを主演として牽引してきた中島 敦役の鳥越裕貴と、文ステ初参加になるフョードル・D役の岸本勇太、そして演出の中屋敷法仁にインタビュー。

メインキャストは7名だけ。これまでに比べ、少数精鋭で映画を舞台で表現するだけでなく、今回は脚本を原作者である朝霧カフカが手掛け、これまでに明かされていないエピソードや登場人物たちの関係性が描かれるという。中屋敷が繰り返し口にしていた「密度濃いめ」だという稽古場。その様子を、3人それぞれの視点で語ってもらった。

3年前は母のような気持ちで観た

――文ステ、いよいよ第5弾ですね。今回は、2018年3月の映画『DEAD APPLE』を舞台化するということですが、まず、原作の映画をご覧になった時の感想を伺いたいです。

中屋敷:原作の映画が、ちょうど舞台『文豪ストレイドッグス』の第1弾を上演した頃に近かったので、当時、映画館に足を運んで観たことをすごく覚えています。舞台版に「関わっている」という、文ストを愛する気持ちが高い中で観ましたね。もう3年前になるんですね。この3年間で、原作も舞台もいろんな展開をしてきたので、今回の舞台は、その当時の衝撃を受けた気持ちとはまた違った角度の気持ちで取り組めるんじゃないかなと思っています。鳥ちゃんはどうでした?

鳥越:そうですね、僕は敦の母親のような気持ちになってしまって(笑)。いつまでグズグズしているんだ君は~!みたいな目線で観てしまいましたね。そんな気持ちを思い出しながら、映画の舞台化が決まったと聞いた時は一人の文ストファンとして「これをどう舞台化すんのやろ?」と思いながら、見直しました。

――岸本さんは、本作から文ステにご参加されますが、映画をご覧になっていかがでしたか?

岸本:出演が決まってから、アニメも全部観させていただいて。映画は、もう5回くらい繰り返し観ています。映画ではもうちょっと、フョードルがどういう人物なのか分かるのかなと思っていたんですが、最後まで謎めいている人物だなあとすごく感じまして・・・。その謎めいた部分や奥底に潜む怖さみたいなものを舞台でどう見せられるだろうかと考えながら観ました。

――『DEAD APPLE』では、「異能 対 自分」が大きな見どころの一つになっていますが、現時点で、中屋敷さんの中ではどんな演出プランを立てていらっしゃいますか?

中屋敷:構造としてはすごくシンプルに、と思いました。「異能 対 自分」というのは、つまるところ、自分自身と向き合うこと。自分の内面と向き合うというのは、すごく俳優さんにとってとても原始的な作業なんじゃないかなと思っています。自己を省みるというか、自分の存在を問い続けるというと、単純なアクションとして見せるのではなく、俳優さんの演技や台詞、感情の起伏を丁寧に伝えていくことになるんじゃないかなと。映画は非常に映像美が豊かで、いろんな風景を見せてくれたんですけど、舞台では、俳優さんの表情や声色などで、それを見せることができたらいいなと思っています。

カフカ先生が脚本を書かれるというのがどういうことか

――いろいろと制約の多い中ですが、お稽古の進み具合は?

鳥越:始まって3日目ぐらいで最後まで通しました。

岸本:そうでしたね(笑)。

中屋敷:(笑)。

――早い・・・!ちなみにこれまでは脚本も中屋敷さんが手掛けられてきましたが、今回、脚本が朝霧カフカ先生(脚本協力:内田裕基)ですね?

中屋敷:カフカ先生が脚本を書かれるというのがどういうことかというと、これまではアニメや小説・漫画で出ていた情報を舞台で表現することが主だったんですけど、今回は、舞台版で初めて出る新しいキャラクターの情報、舞台版で初めて出てくるエピソードがあるということです。責任はカフカ先生に取っていただこうと(笑)。ここでしか見られない文ストの側面が現れるというのが、今回の文ステの特徴かなと思います。

――鳥越さんと岸本さんは、その脚本を読んでいかがでしたか?

鳥越:僕は、単純にすごく分かりやすくなったなあと思いましたね。舞台『DEAD APPLE』からはじめて文ステを観てもおもしろいし、これまで文ステを観てくださっている方にも「あっ、そうなってたんや~!」という驚きがあるのがおもしろいなと。文ステだけじゃなく「文豪ストレイドッグス」というコンテンツが何度観てもおもしろいものなんだと再認識しましたね。

岸本:映画では描かれていない部分・・・舞台で初めて知ることができるキャラクター同士の物語や関係性が見えてくることで、「こういうことだったんだ」と腑に落ちることがたくさんありました。これを、舞台として「文豪ストレイドッグス」というコンテンツを愛する皆さんにお届けできることがすごく楽しみです。

圧倒的なクオリティで来るので、若干引いてます(笑)

――鳥越さんは、初演からずっと中島敦役を演じていらっしゃいますが、映画の公開当時「母親目線」で見てしまった敦に、今はどう向き合おうとしていらっしゃいますか?

鳥越:敦を演じる上で、僕の頭の中にはずっと孤児院の院長先生の影があるんです。同時に「生きる」ということもテーマとして持っていて。そのバランスを、ハンドリングするのではなく、でも崩れないように、大切に大切に作っていきたいんです。今回に関しては、忘れていた過去と向き合うことが大事になってくると思うので、特に避けては通れないなと思っていますね。

――岸本さんが演じられるフョードルは、先ほどおっしゃっていましたが謎めいていますよね・・・。

岸本:謎めいた部分について常々考えていますが、フョードルの行動にはいくつもの「裏切り」が出てくるので、観てくださる人たち・・・原作を知っている方も、知らない方も、いい意味で裏切っていけるようなものを舞台上でずっと持っていたいなと思っているんですけど。掴みどころのない怖さは、稽古の中で自分に求めていきたいです。

――中屋敷さんには、おなじみの鳥越さんと、初めてご一緒する岸本さん、それぞれどう見えていらっしゃいますか?

中屋敷:敦は、完成に向かってはいけないキャラクターだと思っているので、常に新鮮に、生まれたてでいなければいけないんですね。鳥ちゃんは、それを保ち続けてくれているのですごいなと思っています。作品を重ねたり、資料を読み込めば読み込むほど重くなってしまうんですけど、いっつもお腹を空かせた子どもの精神で稽古したり。しゃべっている姿を見ていると、僕自身も何作もやっているとあぐらをかいてはいけないと思わされて。鳥ちゃんのおかげで、僕の新鮮味も保たれているなといつも感じています。

岸本くんは初めましてなんですけど、圧倒的なクオリティで来るので、若干引いてます(笑)。

岸本:えっ、なんでですか(笑)!

中屋敷:フョードルって、こちらからは不思議に見えるんだけど、本人はすべて見通しているという不気味さがあって。あんまりジタバタしないし、緊張感が抜けないキャラクターなので、その圧迫感をちゃんと稽古場にも持ち込んでくれているんです。

文ステ初参加なのにそれを感じさせない岸本くんの存在感と、ずっと出ているのに初参加みたいな鳥ちゃんの新鮮味、その対比が見ていてすごくおもしろいです。

岸本:そういう意味でよかったです(笑)。

鳥越:(笑)!

――鳥越さんと岸本さんも、初共演ですよね。お互いどんな印象を持たれていますか?

鳥越:僕は誰とは言わないけどわっるい先輩に捕まってほしくないなあと思っていますね。そういう先輩にひっかからないように、僕が必死に守っています。というのは冗談で(笑)。初参加を感じさせない堂々とした感じがすごいなあと。

岸本:いやいやいや!

鳥越:この中屋敷さんが引いてしまうぐらいですから。

中屋敷:(笑)。

岸本:僕は、鳥越さんのことは以前から一方的に知っていまして。大先輩ですけど、今回ご一緒してみて、めちゃめちゃ優しい方だなと思いました。最初から「なんてで呼んだらいい?」「全然気を使わなくていいよ」ってフランクに接してくださったので、一気に肩の荷が降りたというか。すでに出来上がっている座組に新しく参加していくというのは、やっぱり緊張しますし、どうしても気を張ってしまうものなんですけど、その一言ですごく楽になったのでありがたかったです。これからも仲良くしていただきたいなと思っています。

――今回、岸本さんのほかにも太宰 治役の田淵累生さんと、澁澤龍彦役の村田 充さんと、初参加の方がいらっしゃいますね。岸本さんは、シーン的に田淵さんとの絡みが多そうですが。

岸本:稽古を通じてコミュニケーションを取って、しっかりと関係性を作っていきたいと思います。

――鳥越さんは、村田さんと久しぶりの共演ですね。舞台上での久しぶりの再会はいかがでしたか?

鳥越:植ちゃんとも話していたんですが、この作品の顔合わせの時も充さん独特の雰囲気で。また唯一無二のキャラクターを作りはるんやろうなあと、本読みの段階からすでに確信がありました。本人は「早くみんなに追いつかないと」って言ってましたけど。いろんなこと話しながら「ああ、この感じこの感じ」って、久しぶりの感覚を味わっています。

今、困ってるんですよ・・・みんながかっこよすぎて

――出演者が限られている分、一つの人物の色が濃く出てきそうです。

中屋敷:それね。今、困ってるんですよ・・・みんながかっこよすぎて。一人ひとり、めちゃくちゃお芝居がいいし、とにかくかっこいいんですよ。それ故に、物語としてちゃんと「伝える」という使命感に駆られています。照明を暗めにして、みんなの顔が見えない場面を作った方がいいかな?とか。

カフカ先生が、舞台用に台詞を書き直していて「生」でしゃべることでめちゃめちゃ響く、そういう展開にしてくれているんですよ。ストーリーも舞台で初めて明かされるオリジナルの要素が出てきてアツいんですけど、キャラクターの飛び抜け方もこれまで以上な気がしていて。これをどう抑え込もうかと・・・野放しにするととんでもないことになりそうなんですよ。そんな恐怖を感じるくらい、皆さん魅力的です。

――『DEAD APPLE』は、登場人物の持つ「枠」を超えての関係性が強く描かれていますから、その妙も楽しみです。

中屋敷:敦は、(泉 鏡花以外の)武装探偵社のメンバーに会えないですからね。これまであんなに楽しくミニコントを作ってきたメンバーがいませんから。

鳥越:やっぱり、武装探偵社のメンバーはしょうもないなって、今回の稽古場で痛感していますね(笑)。

中屋敷:これまでは結構楽しいシーンや愉快なシーンを作ってこれたんですけど、今回出てくるメンバーはワイワイするようなメンバーじゃないので。1シーン1シーンを丁寧に作っていかないと・・・こう言うと、今まで探偵社のシーンをノリで作ってきたみたいに思われちゃいそうだけど(笑)。

鳥越:だから今回は、敦が一人でボケて一人でツッコんでる、みたいなとこありますからね。「これ、鳥越がやってるんちゃうか・・・?」って思われないようにしないと(笑)。

中屋敷:(笑)。これまで同じ作品には出てるけど、絡みがあんまりなかったキャラクター同士の接点も多いので、意外な化学反応が起きるかもしれないね。

鳥越:今回は、祥平とのシーンも多いですからね。いかに、ふざけるか(笑)。芝居でも、稽古のオフでも、常に狙って。楽しみます。

岸本:これまでの文ステに比べると、『DEAD APPLE』は少し話が重めですよね。僕は、その影で「フョードル、糸引いているんじゃない・・・?」と思わせられるように、その裏ににじませていけたらと思います。

――物語の中では「自分自身との戦い」が鍵となりますが、皆さんが今、克服したいものってありますか?

鳥越:僕は、とにかく花粉です。こんなにひどい年は初めて・・・。普段薬は飲んでいないんですが、本番中もこの状態が続くようなら、薬を飲むことも考えないとって思うぐらい、ひどい!

岸本:薬飲んでないんですか?

鳥越:飲んでない。飲んだら負けな気がする。

岸本:何と勝負してるんですか(笑)!僕も花粉症なんですけど・・・薬、飲んでます。

鳥越:負けだ~!

岸本:あとは、結構人見知りなタイプなもので、目標はこの現場の皆さん全員と仲良くしていただくことです。そして、めちゃめちゃ台詞と戦っているので!それを乗り越えて、皆さんと仲良くなれたらいいなと思っています。

中屋敷:どの舞台も全員大事なんですけど、今回、特に密度が高い気がしていて。一人で舞台に立って、一人で場面を成立させられるような圧力を持った俳優さんばかりで、あんまりこのメンバーを自由にさせると劇場が壊れちゃうんじゃないかという恐怖を覚えているので(笑)。

ちゃんと整理しないと、魅力的なシーンが目白押しで、観ている人の感情がなかなかついていかないと思うんですよ。どう整理するか、迷う日々です。なんとなく、自分の中の「何か」を捨てなきゃいけないなと・・・。「大好きだけど、ちょっと後ろを向いてくれ!」とか言わないといけないかも、とか。それが苦しいですね。乗り越えなければ。

配信でご覧になる方に、ぜひやって欲しいこと

――本作は、東京公演全16公演で配信されることも決定しています。

中屋敷:配信のいいところって、メモを取ったり、調べたりしながら見られますよね。これ、ぜひやってほしいんですけど、配信を『DEAD APPLE』の劇場版の資料とか、劇場版そのもののことを考えながら観てもらえると、この舞台版をさらに楽しんでもらえる気がします。

鳥越:確かに!どこが違っているか、とか見つけながらね。

中屋敷:そうそう。僕も配信で演劇を観るのが好きなんですけど、配信は配信のおもしろさがあるなと思いました。劇場でたくさんのお客様と一緒に観るのとはまた違う味わい方ができたら、もっと楽しんじゃないかなと!調べたり、考察したりしながら観てほしいなと思ったりしてます。

岸本:舞台は、稽古で培ったものをそのまま劇場で、生で感じていただけることが一番で、配信があることを意識してお芝居をすることはないんですけど、劇場に来られない方、劇場のキャパシティ以上の方にも観ていただける環境があるというのはとてもいいことだと思います。

――新たな一面をいろんな角度で楽しめる予感がする『DEAD APPLE』、開幕を楽しみにしております。

鳥越:文スト、文ステ、どちらも追ってなくてもこの作品から観ても楽しめる。「生の舞台の素晴らしさ」を伝えられる。観たら「前回の作品も観てみたい」と思ってもらえる。そんな作品です。劇場に来れる方、来れない方、いろんな事情があると思います。遠征するなら、配信でたくさん観たらええやん!って方もいらっしゃるでしょう。僕はやっぱり舞台は生で観ていただきたいと思いますが、どんな形でも、この作品を感じていただきたいという気持ちが一番です。この作品が持つメッセージ性を、ぜひ、何らかの形で受け取っていただけると嬉しいです。

岸本:この作品で描かれている「自分自身の戦い」と同じように、今、皆さんも日々大変な中で戦っていらっしゃると思うので、観ていただけたら自分を投影できるものがあるんじゃないかなと思います。大変な時期ですが、劇場に足を運べる方は劇場で、難しい方は配信で、ぜひこの作品を楽しんでいただけたらと思います。

中屋敷:上演時間は、そんなに長くないんですよ。すごく観やすい作品になっていると思います。視覚的な表現、文学的なメッセージ、7人の俳優が持つコアな魅力にすべてを凝縮していることもあり、かなり密度の濃い、何度観ても味わい深いものになっているので、ぜひ皆様、よろしくお願いいたします。

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舞台『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』公演情報

上演スケジュール

【大阪公演】2021年4月16日(金)~4月18日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
【東京公演】2021年4月23日(金)~5月5日(水・祝) 日本青年館ホール

キャスト・スタッフ

【出演】
中島 敦役:鳥越裕貴
泉 鏡花役:桑江咲菜
芥川龍之介役:橋本祥平
中原中也役:植田圭輔
太宰 治役:田淵累生
フョードル・D役:岸本勇太
澁澤龍彦役:村田 充
ほか

【脚本】朝霧カフカ
【脚本協力】内田裕基
【演出】中屋敷法仁
【協力】春河35

ライブ配信

東京公演全16公演のライブ配信を実施

【特典】公演ごとに異なるデザインのブロマイド
【配信料金】2,500円(税込)
※詳細は公式サイトをご確認を

【公式サイト】http://bungo-stage.com/
【公式Twitter】@bungo_stage

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