『夜想 百物語』オンラインで広がるイマーシブシアターの可能性――DAZZLE飯塚浩一郎・荒井信治インタビュー


ダンスカンパニー「DAZZLE(ダズル)」が、360度没入型オンラインイマーシブシアター『夜想 百物語』を、4回に期間を分けて開催している。『夜想 百物語』は、日本の伝統的な怪談会である百物語をモチーフとしたオンラインイマーシブシアター。VR配信アプリ「REALIVE360」を活用した、オンラインでの体験型公演となっている。

近年、ロンドン・ニューヨークなどで人気を博している体験型公演形式「イマーシブシアター」に対して積極的に取り組んできたDAZZLE。今回、オンラインという新たな取り組みへ挑戦することについて、その手応えと創作の過程について、DAZZLEのダンサー・演出家・振付家である飯塚浩一郎と荒井信治に話を聞いた。

DAZZLE meets イマーシブシアター

――いち早く日本で「イマーシブシアター」に取り組まれていたDAZZLEさんですが、この手法に最初に惹かれた時のことを教えてください。

飯塚:私がイマーシブシアターに出会ったのはニューヨークの『Sleep no more』と『Then she fell』です。従来の舞台作品などとは全く違う感覚で、心を動かされた、というのが第一印象でした。その刺激の強烈さもよく覚えています。

舞台ではなく立体的な建物で行われる、演者も観客も移動しながら展開する、演者と観客の関わりがある、など特徴をあげたらキリがないのですが、一言で言えばイマーシブシアターは「鑑賞」ではなく「体験」が本質なんだと思います。

その上で、私が惹かれたのはイマーシブシアターが「予測不能」であることと「個人的な(特別)な体験」であることです。自由に動ける、見たいものを自分で決める、そしてその体験はその人間だけのものになる。これは、通常の舞台表現・映像表現とは全く違う提供価値だと思いました。

デジタルで複製可能なコンテンツが溢れる中で、フィジカルで複製不可能な体験は相対的に貴重になっていると思います。

また、「体験」を作るという目的からDAZZLEが積み上げてきたアイデアや技術を逆算したときに、自分たちが新しいイマーシブシアターを作れるのではないかと可能性を感じました。

――勝手な想像なのですが、この手法を知った時、「参加型」というのがシャイな日本人とどの程度マッチングするのか?と思いました。DAZZLEさんは、日本における「イマーシブシアター」にどのような可能性を見出していらっしゃいましたか?

飯塚:私も当初、日本人に合うだろうかという懸念を持っていました。実際に、ニューヨークの作品が合わなかった、という方も多かったので。

DAZZLEでは作品世界を理解をしやすい設計に留意していますし、自由に選択できる、ということは性格にあった行動ができるということでもあるのかなと思っています。逆に、ダンス・舞台が好きな方々以外にも、元々参加型のエンターテインメントが好きだった方々も観に来て下さっているような印象があります。

また、ダンスを観る、ということを一つ切り取っても、イマーシブシアターでは「近くで好きな角度から観ることができる」というのはとても素晴らしい魅力の一つで、勝算の大きな要素でした。私は舞台作品の本番中に、演者として舞台上で他のメンバーのパフォーマンスを間近で見続けてきたわけですが、「これがダンスの一番いい見方なのかもしれない」と常々思ってきました。

「デジタルで無ければ出来ないことをやろう」

――今回、イマーシブシアターはさらに「オンライン」という形で広がることになります。コロナ禍ということもあってのことだと思いますが、この「オンライン」上演については、どのようにお考えですか?

飯塚:世界中の誰もがどこからでもいつでも見られること、そしてつながることが出来ることがオンラインの魅力だと思います。一方で、本来、生の公演で行われるものを映像化するだけでは劇場での感動を越えられないと思い、「オンラインで、デジタルで無ければ出来ないことをやろう」と考えて今回の企画に辿り着きました。

VRコンテンツが安定的にオンラインで楽しめるようになってきたので、360度の視界を自由に操ることにより「観客が見たいものを見る」というイマーシブシアターの特徴を備えた作品を作ることが出来るようになりました。

撮影時のハードウェア、提供時のソフトウェア、回線スピードなど、今後テクノロジーが進化することにより、これまでやりたくても出来なかった試みがどんどん生まれると思います。

――「オンライン」で観客が参加するための構想を、一部教えていただけますでしょうか。

飯塚:今回の『夜想 百物語』では、人が集まることで成立する、意味があるものとして「百物語の儀式」を選びました。自分の部屋からこの世のどこかにある和室にみんなで集まって怪談を聞く、というのは新しい体験なのではないかと自分でもワクワクしています。

また、DAZZLEユーザーズサイトからのチケット購入時には14篇の物語の中から一つ、自分が観たい物語に投票することができます。本編に選ばれるのは投票の上位7篇となり、当日配信された時に初めて分かる仕組みです。さらに、選ばれた内容により、エンディングも変化します。

イマーシブシアターは観客と一緒に作り上げるもの

――『百物語』というタイトルに込めた思いは?

荒井:イマーシブシアターはまず場所ありきで制作をスタートさせます。それが今回は和室でした。蝋燭が灯る薄暗い部屋で演者と観客が円になって座り怪談を語り合う、最初に浮かんだのはそのような絵でした。怪談話を変えたり、語り部を変えることにより、ずっと続けていける作品になるのではないかと思いました。

舞台作品と違い、イマーシブシアターは観客と一緒に作り上げるものです。ずっと続けていき、いつか皆さんと百の物語を作りあげたい。そんな思いを込めて『夜想 百物語』というタイトルにしました。今回は我々の用意した怪談話のみですが、いずれは観客が持ち寄った怪談話をDAZZLEが語り、踊るというような特別な体験も届けたいと思っています。

――オンラインで初めて「イマーシブシアター」に触れる方へ、楽しみ方のアドバイスをお願いします。

荒井:DAZZLEがリアル空間のイマーシブシアターで意識していることの一つに、「五感の全てを刺激する」ということがあります。オンライン版では逆に生では表現できない「視覚」と「聴覚」に特化した作品に仕上げています。見たことのないアングルを、耳元でのささやきを是非体験してください。そのすべてはあなただけのものです。

――DAZZLEさんとしての“オンライン版”イマーシブシアターへ、それぞれ期待することを教えてください。

荒井:VRゴーグルが簡単に手に入るように、触覚を伝えるデジタル技術などが一般化すれば、どんどん”オンライン版”の可能性が広がっていきますね。僕が期待するのはリアルではできない体験ですね。心臓を掴むとか。

飯塚:『夜想 百物語』は、お客様の発想次第で、色々な楽しみ方が出来るかと思います。3日間見ることができるので、友人たちと時間を決めて一緒に見て、それぞれが観たものを共有するなど。外に出るのがはばかられる状況だからこそ、たくさんの人がオンライン上でこの不思議な世界に集まって同じ時を過ごして頂けたらと思います。

今後は、システムが安定的になればライブでの配信作品もトライしてみたいですし、ARなどの技術を使えば、ユーザーの部屋に演者が登場することもできるでしょう。テクノロジーの進化を注視して、新しいクリエイティブを生み出し続けて行きたいと思っています。

『夜想 百物語』概要

【配信日時】
第一回:2月27日(土)20:00~3月2日(火)19:59 ※終了
第二回:3月13日(土)20:00~3月16日(火)19:59 ※終了
第三回:3月27日(土)20:00~3月30日(火)19:59
第四回:4月10日(土)20:00~4月13日(火)19:59

【所要時間】約60分

<チケット情報>
【販売URL】
DAZZLEユーザーズサイト:https://www.elzzad.jp/
※購入時に投票可能(期限あり)
楽天チケット:http://r-t.jp/dazzle_realive360
※投票なし

【料金】2,500円(税込)

【出演】
DAZZLE
(長谷川達也/宮川一彦/金田健宏/荒井信治/飯塚浩一郎/南雲篤史/渡邉勇樹/高田秀文/三宅一輝)
青木仁美、岩下朱里、加藤花奈、澤村佳子

【演出】荒井信治
【脚本】荒井信治 長谷川達也 金田健宏
【音楽制作】林ゆうき 桶狭間ありさ 山城ショウゴ 高木亮志 菅野みづき Austin Gruhn
【照明】矢鍋智子

【視聴方法】「REALIVE360」アプリ https://realive360.jp/

【公式サイト】https://a100stories.com/

あらすじ

私はある人に誘われ、新月の夜に寂れた日本家屋を訪れた。
「百物語の宴を執り行いたい」
21世紀もだいぶ過ぎた今、 酔狂なことだと思ったが、
何が起きるのか興味があり参加することにしたのだ。

百物語は古来より行われてきた怪談遊びであり、降霊術の一つ。
百の火を灯し、 参加者が怪談を一つ話すごとに、蝋燭の火を消していく。
九十九話まで話し終えたら、百話目は話さず朝を待つ。
全ての火が消えてしまうと、本物の怪異が現われる・・・。

話す怪談話を持ち合わせていなかった私は、
いくつかの候補の中から代読してもらう話を選んだ。
題名のみで内容は分からないが、 怪しげなものばかり。

話が始まり、その語りぶりから私はこの宴がただの遊びでないことに気づいた。
何が、目的なのだ――?

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