【役者名鑑】第2回:前山剛久<後編> 慢心せず、上を目指し続ける30代に


役者さんの人生を辿り、演じることにかける情熱をお聞きする新企画「役者名鑑 on Youtube」第2回の後編。今回のゲストスピーカー、前山剛久さんは、2月7日生まれ。今年、30歳の節目と共にデビュー10周年を迎えました。

インタビューの後編では、現在までの経験を振り返っていただきました。シェイクスピア作品から、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage、舞台『刀剣乱舞』、そしてグランドミュージカル『王家の紋章』へ。今の前山さんが、座右の銘に掲げた言葉は「慢心は人間の最大の敵だ」(シェイクスピア『マクベス』より)。

未来へ向けて、「前山剛久」という表現者の強度を高める言葉をお届けします。

シェイクスピア作品で開けた視界の先

――後半では、前山さんの現在、そして未来について詳しくお話を伺えればと思います。前山さんは以前、Dステの『お気に召すまま』をやった時が大きなターニングポイントだったとおっしゃっていましたね。

そうですね。前半でお話した『仮面ライダーウィザード』とか、ターニングポイントというといろいろあるんですけど、中でも大きかったのが『お気に召すまま』でしたね。あの時にやっと「自分は役者なんだ」と強く思えたというか。憧れていた先輩方のお芝居を理解できた瞬間でもあったんです。自分の芝居にがむしゃらだったのが、ようやく地に足を着けた感じがしたんですよね。

――視界が開けた、という感じですか?

お芝居の基本であり、大事なことって「会話」をすることだと思うんですけど、そこに純粋に立ち返れたというか・・・。今までって、台本を追いかけてたんだなあと。『お気に召すまま』の時、先輩から「台本を読むな」と教えていただいて、それを今でも自分の中で大切にしているんです。台本を読んでいるうちはリアルなお芝居ではないから。心から出た言葉を生み出すために、今もあまり台本は読まないよう心がけているんですが、それをすごく理解できたのが、『お気に召すまま』でしたね。

――シェイクスピア作品、かつ、オールメールは、昨年3月に『十二夜』で再びご経験されましたよね。ご自身の変化はどのように感じていらっしゃいましたか?

いろんなトライの仕方ができている、という実感がありました。今まで表面的に演じていた部分を、いろんな経験を踏まえて深くすることができたと感じられたのが、自分にとっては大きかったです。いろんな作品でいろんな経験をさせていただく中で、『お気に召すまま』で教えていただいた「台本を読むな」ということを、感覚的にだけではなく頭でも理解しながら、お芝居を取り組めるようになったのが『十二夜』だった気がします。

――ここ数年、それはご出演される作品の幅からも感じられますね。

去年の最後に、『No.9 -不滅の旋律-』という作品に出演させて頂いたんですね。再々演の作品だったんですが、僕と子役の子だけが新キャストで。そこに混ざって勝負していく中で、また一つ成長できたなっていうのがすごくありました。

周りの方々からも、演出の白井晃さんからもいろんなアドバイスを頂けて、そこでもまた役者として成長できたんですよね。何回成長するんだって感じなんですけど(笑)。すでに出来上がっている座組に参加することは不安でもありましたけど、30手前にしてまだ成長できると感じられたことに驚きましたね。まだまだ可能性がある、人間まだまだ成長できるんだって感じられたのは、大きかったです。

『No.9』、ヒプステ、刀ステ、そして『王家の紋章』へ――作品の振り幅が深みを生む

――同じ音楽にまつわる作品ですが、ご出演中の『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage(以下『ヒプステ』)ではまったく違うお顔を見せていただいています。

そうですね、まったく毛色が違いますよね(笑)。昨年は『No.9』と『ヒプステ』と、全くベクトルの違う作品を1年の間にやったんですけど、対象的な作品を同時期にやれたことが、自分の中の“深み”につながった印象があります。

『ヒプステ』では、美しくかっこよく見せることとお芝居をリンクさせるということが、自分の中ですごくしっくり来たんですよね。これはきっと、いろんな作品にトライしてきたことが、この『ヒプステ』という作品に挑戦した時に活きているなって感じられたんです。

――音楽がお好きな前山さんですが、原作の『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』は舞台に出演する前からお好きだったと聞きました。

はい。原作CDのドラマトラックが好きで、舞台に出演できることが決まる前からよく聞いてました。もともとラップも好きだったので、楽曲も聴き込んでいて、カラオケ行った時にもよく歌っていました。演じさせていただいている「夢野幻太郎」というキャラクターは、小説家で嘘をつくキャラクターなんですが、そこにすごく“深み”があって、役者としてすごく試される役だと思っているんです。役者って、究極を言うと「嘘をつく仕事」なので。嘘をどれだけ“本当のように見せるか”という部分に、夢野幻太郎という役の面白さを感じていますね。

ラップって、音の間に自分の感情を乗せていくので、音楽のジャンルの中で一番「芝居」に近いと思うんですよ。『ヒプステ』は、作品やラップが好きという気持ち、夢野幻太郎という役への興味、役者として演じる面白さ、すべてが自分という人間にマッチしたという印象です。

――2.5次元作品は、原作があるからこそのおもしろさが、観ている側にも演じる側にもあるのではと思います。

鶯丸役を演じさせていただいた舞台『刀剣乱舞』はまた違う面白さがあります。『刀剣乱舞』は、すごく自由度がありますよね。“本丸”が違うことから新しいストーリーを見いだせる。こういう作品って、今までなかったと思うんですよ。お客様も「今回はどういう作品が生まれるんだろう?」って毎回ドキドキしながら観る楽しみがきっと大きいですよね。

でも、正直今までで一番しんどかった舞台がどれかと言ったら、刀ステです。上演時間が3時間半ぐらいありましたし、かなり激しい殺陣がついていたので、もう、出る度に疲弊していくという日々で(笑)。末満(健一)さんが描く美しく耽美的だけど切なく退廃的なストーリーの中に生きるので、心も身体も疲弊していくというのは当たり前ではあるんですけど。それ故に、この苦しみがあるから鶯丸は相方である大包平を大事にしているんだなあと、役への学びが深められた気がしますね。(苦しみがあったからこそ、)舞台『刀剣乱舞』の素晴らしさを、鶯丸という役の演じる回数を重ねれば重ねるほど感じています。

――そして、夏にはミュージカル『王家の紋章』でイズミルの部下・ルカ役とキャロルの警護役・ウナス役(※Wキャスト2役)を演じることも発表されました。ついに、グランドミュージカルの舞台を踏まれますね。

役者としてやっていく上で、グランドミュージカルに出ることを一つの目標としていたんです。事務所ともそういう話をしていたので、30歳という節目に帝国劇場に立てる機会をいただけたことは、すごくありがたいですね。目標を達成するためにボイストレーニングなどもしてきましたけど、それで実際に役を勝ち取れるようになれるかどうか、確証もなかったですし・・・。言ってはいないんですけど、通らなかったオーディションもありました。だからこそ、辿り着けた『王家の紋章』では、最高のパフォーマンスを見せなければいけないなと強く感じています。

今の“前山剛久”を形作るシェイクスピアの書いた名台詞「慢心は人間の最大の敵だ」

――デビュー10周年、30歳の節目を迎えた今、挑戦していきたいことはありますか?

・・・若作り、ですかね(笑)。30歳を超えると、みんな「腰が痛い」とか言うじゃないですか。だから、しっかり「メンテナンスしたい」という意味です。そしてこの先、ミュージカルも2.5次元も、映像作品にもどんどんトライしていきたいんです。唯一無二の役者になりたい。「この人、ミュージカルも出てるし、2.5次元も出てるし、映像も出てる!」って思ってもらえる存在になりたくて。そのためには、ちょっと面白い言い方かもしれないけど、若作りも必要だと思うんですよね。パフォーマンスを保っていかなきゃいけないし、綺麗に保ち続けていかなきゃいけないし、ということで、一番挑戦していきたいことは若作りです(笑)。

――まさに、座右の銘に掲げられた「慢心は人間の最大の敵だ」ですね。

シェイクスピアの『マクベス』の中の言葉なんですけど、まさにそのとおりだと思っていて。僕自身、慢心で駄目になる人をたくさん見てきたんですよ。調子に乗ったら終わり、というか。だから僕は、慢心は最大の敵だし、毎回毎回が挑戦だと思っています。

自分がお芝居をしている時やパフォーマンスをしている時は、自分が一番だと思ってやるけれど、そうじゃない時はそんなこと思っちゃいけない。常に上を目指し続けることが大事だと思うので。

――前山さんにとって、シェイクスピアの影響は大きいですね。

そうですね。すごく影響を受けていますね。舞台版『PSYCHO-PASS サイコパス Chapter1―犯罪係数―』という作品で槙島聖護という役を演じさせていただいた時にも、シェイクスピアからの台詞の引用があって。その時も、自分ってシェイクスピアと密接に関わってるなって強く思ったんですよ。『お気に召すまま』『十二夜』も自分が変われたきっかけになりましたし、勝手にご縁みたいなものを感じております。「慢心は人間の最大の敵だ」・・・いい言葉ですよね。

――30代の前山さんも、楽しみにしております。最後に、ぜひファンの皆様へメッセージをお願いします。

はい。皆さん、前山剛久、30歳になりました。そして、デビュー10周年を迎えました。ここまでこられたのは、本当に皆様のおかげで、皆さんの応援が欠けていたら、もしかしたらここにいない可能性もありました。最近の新型コロナウイルスの影響で演劇を取り巻く状況が厳しくなっていて、本当にみんな辛い状況にあるというのもすごく感じていて。でも、そんな中でがんばれたのは、本当に応援のお陰です。

これからもっともっといい役者になっていきたいと思っています。そのためには、もしかしたら皆様にも辛い思いをさせてしまうことがあるかもしれません。例えば、僕の出演する舞台を観たいけど、どうしても観に行けない、とか。そういうことって起こっていると思うんです。そうなると、他の役者さんを応援しようかなとか、他のジャンルを応援しようかなってことにもなると思うんですよ。でも、そこで皆さんに目移りして欲しくないから、だからこそ常にいいパフォーマンスを心がけて、ずっと皆さんと楽しんでいただけるようにがんばるので、これからもよろしくお願いします。

前山剛久さんの今後の出演作品

『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage -track.2- replay
2021年3月11日~3月21日 東京・品川プリンスホテル ステラボール
【原作】EVIL LINE RECORDS
【演出】植木豪
【脚本】亀田真二郎
【音楽監督】Ts
【テーマソング】井手コウジ

【出演】
世古口凌、前山剛久、滝澤諒/
鮎川太陽、荒木宏文、宮城紘大/

加藤良輔、和田泰右、結城伽寿也/

Toyotaka、RYO、gash!、SHINSUKE、Dolton、KENTA、GeN、KIMUTAKU

【公式サイト】https://hypnosismic-stage.com/track2-replay/

ミュージカル『王家の紋章』
【東京公演】2021年8月 帝国劇場
【福岡公演】2021年9月 博多座

【原作】
細川智栄子 あんど芙~みん「王家の紋章」(秋田書店「月刊プリンセス」連載)
【脚本・作詞・演出】荻田浩一
【作曲・編曲】シルヴェスター・リーヴァイ

【出演者】
メンフィス:浦井健治/海宝直人(Wキャスト)
キャロル:神田沙也加/木下晴香(Wキャスト)
イズミル:平方元基/大貫勇輔(Wキャスト)
アイシス:朝夏まなと/新妻聖子(Wキャスト)
ライアン:植原卓也
ミタムン:綺咲愛里
ナフテラ:出雲綾
ルカ:前山剛久/岡宮来夢(Wキャスト)
ウナス:大隅勇太/前山剛久(Wキャスト)
イムホテップ:山口祐一郎

【公式サイト】https://www.tohostage.com/ouke/

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