「Dream Stage -読奏劇-」太田基裕インタビュー!楽曲や映像作りを通して再確認した表現の“欲”


“「朗読」を楽曲の「Music Video」のように届ける”ことをコンセプトとした「Dream Stage(ドリームステージ)-読奏劇-」が、いよいよ始動する。第1弾として8月12日(水)に配信されるのは、太田基裕が読むシャルル・ペロー著「眠る森のお姫さま」。

本企画では、制作側が俳優の意向を汲み、読む作品を決定した。太田はどんなことを考えて本作の撮影に臨んだのか?本作には、太田が自粛期間中に作りためた自作の楽曲が使用されている。クリエイティブな方面に興味があるという太田が、どんなことを考えているのか、撮影終了後に聞いた。

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――収録を終えられてみて、いかがでしたか?

いや~、難しかったですね(笑)。普通の朗読劇はこれまでにも経験したことがあったのですが、今回はまた違うアプローチで。音楽や映像としての演出があったりしたので、また全然違う感覚でした。監督がどのように仕上げてくださるのか、僕自身にも撮影していただいている時は完成形が分からないので、出来上がるのが楽しみですね。カメラ5台で撮った映像や音楽をどう組み合わせて調理されるのか。僕自身も素材の一つとして、いいものが撮れているといいなと思っています。

――今回、太田さんに読んでいただいたのは、シャルル・ペローの「眠る森のお姫さま」です。この作品を選ばれた理由は?

この企画のお話をいただいた最初の段階では、日本の文学作品にするという案もあったんですよ。でも、僕自身としてはもうちょっと分かりやすくて、皆さんにも馴染みのある作品の方がいいんじゃないかなと思ったんです。少しでも触れたことのある題材で、観てくださる方の中にも知っているという感覚があった方が、朗読に入り込みやすいのかなと。それをプロデューサーにお伝えした結果、ご提案いただいたものの中からこの作品を選びました。

――この作品は、ディズニー映画や童話としても広く知られていますが、実は、今回太田さんに読んでいただいた「ペロー版」と「グリム童話版」では少し内容が違うんですよね。

そうですよね。よく知っている作品なんですが、このペロー版は今回初めて読みました。観てくださる方も、そういう方が結構多いんじゃないかな・・・。その違いとかも楽しんでもらえたら。でも、古い翻訳のものなので、言葉使いや言い回しが馴染みのないものが多くて。

――太田さんは、ちょうど『ボーイズ・イン・ザ・バンド』という海外戯曲作品にご出演されている最中ですが、翻訳ものをどう捉えていらっしゃいますか?

翻訳ものは、本当に難しいです。文化が異なるから、物語のバックボーンに馴染んでいるものがまるで違うんですよね。舞台で演じる時は、演出の方に相談したり、確認したりしながら進めていくんですけど、演じる上で「どこまで理解できているのか?」「果たしてこの理解であっているのか?」という不安は常につきまといます。

――この「眠る森のお姫さま」も、驚く表現が時々出てきましたね。

ありましたね、ちょっとブラックな笑いが・・・(笑)。それは、時代感の現れなのかなと思います。時代と共に価値観は変わっていますから。そのあたりも、この朗読で感じてもらえたらいいですね。

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――この「読奏劇」は“MV風”に仕立てることをテーマにしています。太田さんも、音楽がとてもお好きですよね。

僕、クリエイティブな方面にすごく興味があるんです。たくさんのカメラで一度に撮ったものをどう編集されるんだろう、とか・・・。できることなら、これの編集作業も見たみたいぐらい(笑)。舞台では画角を考えるというような思考がないですから、撮影する方はどういう思考で考えているんだろう?「こっちの方がいい」というのは、どういう理由で決めるんだろう?と興味津々です。

――太田さんも、自粛期間中にたくさんの音楽や映像を作って公開していらっしゃいましたよね。先ほど、マネージャーさんから「舞台『弱虫ペダル』の手洗いチャレンジがきっかけだった」と伺ったのですが・・・。

実はそうなんです。Twitterで、ペダステのメンバーが「手洗いチャレンジ」でバトンを始めたのを見て、「え、動画を作るの?!回ってきたらどうしよう・・・!」と困っていたんですよ。動画なんて作ったことがなかったですし、あれこれ悩んでいるうちに、バトンが回ってきちゃったんです(笑)。

せっかく作るなら、BGMをつけて、イイ感じの動画にできないかなと思ったんです。時間だけはあったので。動画の編集は、ペダステにパズルライダーとして参加していた馬庭良介くんにお願いして手伝ってもらいました。これが、やってみたらとてもおもしろい作業だったんです。

――太田さんの上げられた手洗い動画、すごく凝っていて初めてとは気づきませんでした。

馬庭くんが、すごくがんばってくれたんです。でも僕、彼が作ってくれたものにめちゃめちゃ注文をつけたんですよ・・・。「ここもうちょっとこうして」とか、「文字のフォント変えてほしい」とか。でも、お互い表現にはこだわりと意地があったから、彼もいろんな希望に応えてくれて、あの動画が完成しました。

何をクリエイトしているんだ?という感じだったんですけど、それがおもしろくて。そして、人にいちゃもんつけるんだったら自分でも作れるようになるべきだ!と思って、勉強を始めてみました。音楽を作る上でも、絵があった方が想像力も湧くなとも思ったので。でも、ほんとに趣味として始めただけです。

――それが、その後の音楽と動画作りにつながっていったんですね。

音楽や動画を作る中で、自分の中に「これじゃない」「こうしたい」っていう意思があることを知ったんです。「もっとこうしたい」という“欲”があったんだ、よかったと思って。俳優は、作品の演出意図のもとで工夫していくものですし、台詞も決まっているけれど、その中でも自分が「こうしたい」と思う意思でものを作っているんだと気づけたことが、すごくおもしろくて。それって、“自分”として生きていく上で必要なモチベーションなんだと気づくこともできました。

――そういうのって、忙しい毎日の中だと気づきにくいものだったかもしれませんね。

そうですね。ちょっと大げさな言い方かもしれないけれど、こだわり、美学って、機械では判断できないことだし、人間それぞれのパーソナリティとマインドがあってのことだから。そういうことを考えていたら、「僕はロボットじゃないんだ」と思えて、なんか、嬉しかったんですよね。同時に、自分、めんどくさいなと思ったんですけど(笑)。

――大事なことです(笑)。太田さんは、ご自身の中で音楽も大事にされてきましたよね。

もともと音楽がとても好きで、学生時代はバンドとかもやったりしていたんですけど。ペダステの手洗いチャレンジの時は、アコースティックギターで弾いたものをiPhoneで録音しただけだったんですが、音楽もパソコンで作ってみたらおもしろいんじゃないかなと思って。動画と同じように、だんだんこだわりが出てきてしまってソフトとか機材を揃えちゃいました。

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――今回の映像のBGMに、太田さんがお作りになれた音楽が使われると伺いました。

そうなんです、ありがたい話で・・・。自粛期間中に作った30曲ぐらいの中から、この本を読んでイメージに合いそうなものをピックアップしてお渡ししました。まさか、こういう形で使っていただく機会があるとは想像もせずに作っていたので、何かしら物語の世界観を表現する上での足しになっていたら嬉しいんですけど。

――作品に、俳優とはまた違った形で関わることになりますね。

ちょっと恥ずかしいですね(笑)。僕は音楽のプロではないので、つたないものではあるんですけど、今の自分そのままを乗せてもらうということは、それはそれで意味のあるものになるのかなと。自粛期間があってよかったと思いたいですね。

――自粛期間を経て、演劇界を取り巻く状況は大きく変わってしまいました。太田さんは、振り返ってご自身に意識の変化は感じますか?

演劇に触れられない期間、音楽を聞いたり作ったりするころで救われてきました。常にエンターテインメントの一つとして演劇を捉えているのですが、改めて、エンターテインメントへの自分の愛情を確認できた期間だったなと思いました。

でも、僕も経験しましたが公演が中止になってしまったり、客席を50%で上演することで、観れなくなってしまったお客様が出てしまうことは、とても残念です。やっぱりお客様の前で芝居をする楽しさは、稽古とは雲泥の差なんです。僕らの仕事は、誰かに観てもらって、何かを感じてもらって成立するものなんだと改めて感じました。

――この「読奏劇」は、映像作品として配信されるので、おうちで安心して楽しんでいただけるといいですね。

朗読も、音楽を使っていただくのも自分自身としてはチャレンジだったので、そういう面も含めて総合的に楽しんでもらえたらいいですね。一つのエンターテインメントとして、いい余白を残して楽しんでもらえたら。内容も、この話は知っている方も多いと思うので、もともとのストーリーを知ることで新しい発見もあると思うし。いろんな角度から楽しんでもらえたらいいですね。

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――配信開始当日は、本編を観た後にフリートークで出来上がりを観た太田さんのお話が、生で聞けるんですよね!

それ!僕、基本的に自分のお芝居を観ていられないんですよ。皆さんには観ていただきたいけど、僕は見たくない・・・。ある種、拷問だ~(笑)。というのは冗談で、皆さんと何かを共有しながら観れたらいいなと思います。一緒に楽しみましょう。

『Dream Stage -読奏劇-』

【#1】8月12日(⽔)21:00~
太⽥基裕
朗読「シャルル・ペロー 著/眠れる森の美⼥(原題:眠る森のお姫さま)」
https://ima-ticket.com/event/117

【#2】8月22日(⼟)21:00~
⼤平峻也
朗読「⼩泉⼋雲 著/雪⼥」
https://ima-ticket.com/event/118

【#3】8月29日(⼟)21:00~
崎⼭つばさ
朗読「太宰治 著/⾛れメロス」
https://ima-ticket.com/event/119

【#4】9月5日(⼟)21:00~
橋本祥平
朗読「ヴィルヌーヴ 著/美⼥と野獣(原題:ラ・ベルとラ・ベート『美し姫と怪獣』)」
https://ima-ticket.com/event/120

※以降順次出演者・配信⽇・朗読作品を発表予定!

【公式Twitter】@dreamline_inc
【公式サイト】https://dreamline.link/dream_stage
【チケット】イマチケ https://ima-ticket.com/dreamstage

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

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