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「演劇はみんなで作るもの、観る人がいないと成立しない」──白井晃×安田顕『ボーイズ・イン・ザ・バンド』インタビュー

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大きな劇場で演劇の上演が行われなくなって、数ヶ月が経つ。しかし6月に入り、少しずつ、いくつかの現場が動き始めた。7月18日(土)に東京・Bunkamuraシアターコクーンで幕を開ける『ボーイズ・イン・ザ・バンド~真夜中のパーティー~』もその一つだ。

脚本が書かれたのは約50年前。ゲイの友人たちによる一夜の誕生パーティーでの出来事を通して、ゲイの人々を取り巻く社会の現実や、それぞれのアイデンティティ、愛憎などを真正面から描く会話劇。現代と繋がる、どこか地続きの9名の物語を“劇場”という同空間で味わえる期待など今の率直な思いを、演出の白井晃、主演・マイケル役の安田顕に聞いた。

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いつでも誰もがマイノリティになってしまう

──上演にあたって、脚本にも手を加えられたそうですね。

白井:基本的には、原作どおりで、日本語にした時の言い回しを変えてるくらいです。ただ、僕は過去の上演を観たことがないんです。観てしまうとどうしても影響を受けるので、台本から自分が感じ取ることを中心にやっていこうと思っています。

──初演は50年以上前ですが、現代との差をあまり感じなかったと記者会見で仰っていましたね。

白井:もちろん同性愛を取り巻く状況は、初演された時と今とは大きく変化しています。解放運動もあったり、地域によって同性婚が認められるようにもなりました。けれど、今なお我々の心の中で同性愛について本当に共有できているか、というとそうではないんじゃないか。同性愛だけでなく、人種や、宗教や、もしかしたら経済的なこともそうかもしれません。線の引き方によってはいつでも誰もがマイノリティになってしまう。それは今もどこにでも転がっている。

この作品を、アメリカでイスラム教徒達だけが集まって会議を開いていると考えると分かりやすいかもしれないです。それも、9.11後だとすると・・・。同じく、今年の2~3月(コロナ発生)の時期にアジア系だけのコミュニティの人達が集まっているコミュニティがあったとしたら、バッシングがあったかもしれない。この作品を読んだ時に、これは同性愛がマイノリティとされた社会の話だけど、どういう状況においても起こりえるんだとは思いましたね。

安田:今、白井さんがおっしゃるまで気づいていなかったことがありました。僕は「マジョリティ・ネバー・ライト」という言葉は知っていて、「マジョリティはけして正しいことだけじゃない。だからマイノリティに対して目を向けましょう」ということだと思っていた。でも、「自分たちがいつマイノリティになるかもしれないってことだ」ということもあるんですね。そう考えると言葉の実感の仕方が変わって、共感になっていきますね。

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──安田さんは、この作品を読まれた時に最初難しかったと感じたそうですね?

安田:単純に、活字離れですね。もう、まいった(笑)!でも、知る喜びや学べる喜びというのは確かにあって、最初はワケが分からないけれど、分かってきたらやっぱりおもしろい。何がおもしろいかというと、いろんなクラシックの指揮者が同じ曲を演奏するのにも関わらず、お客さんが何度も聞きにくるのと一緒だと思うんです。曲のメロディが素敵なように、作品のストーリーと構成がおもしろいし考えさせるので、観たくなってしまう。もし観てくれたお客さんが全部は分からなかったとしても、興味があったらきっと調べると思うんだよね。そうすれば共感できて、お互いに学ぶことができる。

──安田さんの演じるマイケルについて聞かせてください。

安田:正直に答えますと・・・まだ掴みきれていなくて。でも不思議なもので、愛せるんですよ。今のところマイケルという人間のマイナスしか見つけられていないのに愛せる。たぶん人間くさいからでしょうね。孤独であったり、雄弁であったり、言葉の鎧をまとった人であったり、傷つきたくない時に人を傷つける人であったり・・・最低だけど、でも、憎めないんですよ。どこかで自分がそういう人を見かけていたり、そういう部分を持っているんじゃないですかね。

白井:いいですね。演劇って、安田さんが演じるマイケルと、別の役者さんが演じたマイケルは違うはずなんですよね。「何故か愛せる」って、安田さんのどこかにシンクロさせようとしていること。自分の中にあるマイケル的な部分を見つけていただけるとすごくいいなと思っていたので、今の話を聞いてすごく嬉しいですよ。

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コロナ禍での稽古「マイナスなことだけじゃない!」

──稽古ではずっとマスクを着用しているそうですね。

安田:今日だって、今初めて白井さんの顔見ましたよ。目は口ほどにものを言うというけど、目だけだと限界ありますね。

白井:僕も安田さんの口を見て、新鮮です。マスクで稽古をやらなきゃいけないのは本当にキツイですよ。稽古初日にいろいろ話していたらふら~っとしてきたんです。酸欠状態になっちゃって(笑)。役者さんもこれからテンションが上がってくると、マスクが苦しくなるから大変だと思う。

安田:あと、やっぱり表情って大事ですね。僕は伏し目がちだから、なるべく大きくリアクションしていこうと思っています(笑)。

──役者さん同士も顔が見えないと、互いから分かることが少ないですよね。

安田:(劇場は)前方の席の人はある程度表情が分かるけど、後ろの席の人は全体で把握する。そこが白井さんの才能が発揮されるところでもある。俳優はマスクしているとお互いそれなりに感情などを表現しているんですが、マスクを取ってみたらトゥーマッチかもしれない。でも一番後ろの席だとそれぐらいでちょうどいいかも・・・ということがはやくわかる可能性があるかもしれない。

白井:そう思います。稽古場では客席の空間が読めなくて小さくまとまってしまいがちなので、「もっとこっち(客席側)に空間があることを意識しながらやりましょう」と言うケースもあるんです。でも、マスクをしているからエネルギーを大きく使えることもあるでしょうね。

安田:そうですね、マイナスなことだけじゃない気がする。むしろプラスに転じたらラッキー。

白井:おもしろいことが起こる可能性はありますよね。

──そのような状況で、稽古中に意識をしていることは?

白井:この作品はキスやハグがいっぱい出てくるんですけど、キスは触れないようにするとか、見えないようにするとか、しているように見えればいい。ハグも、しながら体を離すこともあるかもしれません。いつもより離れた距離で話すこともあるかも。そういったことはメリットに変えていきたいですね。今回は9人の登場人物がいるので、9人×8通りの感情の流れがある。その距離感がおもしろい人間関係に作用すればいいな。

だからといって、極端にみんなが2メートル離れながらやるというようなことは不可能。お客様が「大丈夫かな?」と気が向くのは作品としてもあまり良くないので、自然な範囲で気をつけながらやりたいですね。

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演劇の価値とは・・・「すごく貴重で、尊厳のある時間だと思うんです」

──演劇はぶつかりあい。今、この時期、舞台に臨む率直な気持ちは?

安田:つたない言葉になりますけど、今はまだ土俵にあがらずシコ踏んでいるんですよ。シコ踏んで、練習用の土俵にあがって、何回かぶつかって、その時は白井さん・・・まぁ現役の親方にガッとぶつかっていって、本番は「お前ら土俵に行ってこい!」とぽーんと投げてもらう。そんなぶつかり合い(笑)。

白井:いろいろなリモートの演劇や、オンラインで発信される表現を見てきましたし、こういう表現が新しく生まれるんだなとは感じていました。

でもやっぱり僕は、演劇とは、みんなが一つの場所に集まって、みんなで知恵を絞って議論しながら、肌身で、空気を感じながらものをつくる時間はすごく貴重で、尊厳のある時間だと思うんですよね。皆さんと顔を合わせながら稽古をした時に、みんなで想像を働かせ合いながら、疑問をぶつけ合いながら、僕も安田さんからの質問に対して「ん?そうか、そういう考えもあるのか」と考えてみたりする。そのことによって表現が膨らんでいく。これが貴重な時間なんだよね。

稽古場や劇場から2ヶ月ちょっと完璧に離れてしまっていたのでドキドキしました。実際に稽古場に行くと、嬉しくなる。これは何なんでしょうね!・・・やっぱり人間ってそういうもんなんじゃないでしょうか。生身で、集まってなにか話したり、ものを作ったりするのが、本来の人間の本能だと思うんです。一人じゃできないけどみんなで集まっていろんなことができるから、演劇って好き。そうやって僕なんか演劇を始めた人間なので、そのことを改めて思い出させてくれました。

安田:・・・いやぁ、・・・今、ぐっときました!ずっと好きなことをやってこられたんだ・・・感動してしまいました。「やっぱりこれが好きなんだ!と実感した」と聞いて、ぐっとギアが入りました。四の五の言わずにやります。煮るなり焼くなりお願いします。できないことはできるまでやらせていただきます。できることは、違う課題をください。そして本番に導いていただけるように・・・と、それしかないですね。ブーブー言う時間もないし!

白井:安田さんは「分かった!」と思う瞬間のギアの入り方がすごくて、頼もしい。これからいろんな議論があると思うし、いろんな疑問が出てくると思うけど、それを一緒に解決しながら芝居をやっていきましょう。僕はいつも、稽古場には宝物がいっぱい落ちていて、それを探し当てる場所だと思っています。その宝探しを一緒にさせていただけるのは楽しみな時間ですね。

安田:稽古前にいろいろ調べてみましたけれど、『イエス・キリストの生涯』全6話という番組があったんですよ。カトリックの役なので勉強しようと思って、でもこれから聖書を読むのは大変だろうと思ってげんなりしていたけど、映像を見てわかることもあった。「そのラザーニャをテーブルワインで洗い流せ」という台詞の意味とかね。たぶん10調べて0.5ぐらいしか分からないものなんだよね。

白井:敬虔なカトリックという役柄なので、そういった聖書からの引き合いを出してくるんですよね。日本人にはちょっと分かりにくいけど、演じる側は腑に落ちていると表現が変わってくる。だから熱心に『キリストの生涯』全6話を見ようとされたことに感動しています。

安田:ステイホームでよかったのは、LGBT関連の番組をいろいろ見て知れたことですね。基礎を一つ一つ飲み込んでおくと、これからぶつかり稽古が始まった時に役に立つはずです。

──大きな作品の幕があくのに、4ヶ月ほどかかりました。これからの意気込みを聞かせてください。

安田:今回はみんなが同じ状況だから、嘆いていられないですよね。

白井:演劇を観に来ていただくというのは、これだけいろんな情報が氾濫している中でも、特別な時間だったんです。それが演劇のいいところでした。

今回3ヶ月ぶりぐらいに演劇が動き出して、その時間がさらに特別になった感じがしています。作る側も、観に来てくださるお客様の気持ちを考えると、よりその価値が膨らんでいます。・・・ずっと芝居を作ってきたのに、緊張感がありますよ。その緊張感をいい形でみなさんに共有させてもらえればいいですね。やっぱり演劇はみんなで作るものなので、観る人がいないと成立しない。来てくださるってことがすごく嬉しいので、その瞬間がもう一回、劇場で再現されることをすごく楽しみにしています。

◆公演情報

『ボーイズ・イン・ザ・バンド~真夜中のパーティー~』
【東京公演】7月18日(土)~7月28日(火) Bunkamura シアターコクーン
【宮城公演】8月8日(土)・8月9日(日) 東京エレクトロンホール宮城
【北海道公演】8月15日(土)・8月16日(日) カナモトホール(札幌市民ホール)
【大阪公演】8月21日(金)~8月23日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
【東京凱旋公演】8月27日(木)~8月30日(日) なかのZERO 大ホール

【原作】マート・クローリー
【演出・上演台本】白井晃

【出演】
安田顕/馬場徹、川久保拓司、富田健太郎/浅利陽介、太田基裕、渡部豪太/大谷亮平、鈴木浩介

※東京公演(Bunkamuraシアターコクーン分)のチケット7月11日(土)より再販売開始
チケットぴあはこちら

【公式サイト】https://www.bib-stage.jp/

            

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