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「再演にして“決定版”を観に来て欲しい」ナイロン100℃『百年の秘密』KERA、犬山イヌコ、峯村リエにインタビュー

2018年4月7日(土)に東京・本多劇場にてナイロン100℃ 45th SESSION『百年の秘密』が開幕した。本作は作・演出をケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)が手掛け、2012年に初演された作品。

友情を結んだ二人の少女がそれぞれの人生を生き、人生の局面で再会する・・・。二人の間の秘密、そして二人を取り巻く秘密の深淵が、シリアスかつシニカルに浮かび上がる、一族の栄枯盛衰が描かれた大河ドラマだ。6年ぶりに再演される本作の主人公となる二人の女性は、初演と同じく犬山イヌコと峯村リエが演じる。開幕前に、KERA、犬山、峯村に話を聞いた。

ナイロン100℃『百年の秘密』KERA×犬山イヌコ×峯村リエインタビュー

初演時はセットが決まってから台本を書いていました(笑)

――再演決定時のコメントに「『百年の秘密』をどうしても再演したかった」とありましたが、そのお気持ちをもう少し詳しく教えてください。

KERA:どうしても再演したかったんです(笑)!再演したい作品としたくない作品の間にどんな差があるかと聞かれても、うまく答えられないんですよ。なぜ再演するのかというと、やりたいから。具体的な理由がある訳ではなく、再演したくない作品が嫌いかというと、全然そんなことないですしね。

犬山:再演に向かない作品もあるってこと?

KERA:ああ、それはあるね。この前やった『ちょっと、まってください』(2017年)は再演するとなんだかカッコ悪い気がするんです。あれは一回きりだからいい。でも『百年の秘密』は二人(犬山、峯村)が出来るうちにもう一度やっておきたかったという気がします。

――犬山さんと峯村さんは本作を再演します、と耳にした時、どう思われましたか?

峯村:ええっ!また4歳の役をやるの!?って最初に思いましたね(笑)。

犬山:限界ですよね!この役ができるかどうかの。

KERA:4歳の役なんだから、役者が40代だろうと50代だろうともはや関係ないって(笑)。

犬山:むしろ10~20代くらいを演じる方が厳しいかもしれない(笑)。

峯村:私は4歳を演じるのが厳しいですね。初演の時に自分ではぴょんぴょん跳んでいたつもりが、後でそれを映像で観たら「どすん、どーん」っていう感じで(笑)。

KERA・犬山:(笑)。

峯村:それを6年経ってもう一度やるとなったら、はたしてどういうことになるんだろうと。

KERA:・・・ステージの床をトランポリンにする(笑)?

峯村:靴にバネを仕込むとか(笑)?

犬山:でも、じっとしていなければならない時に困るよね?ユラユラしちゃうから(笑)。初演時はすごく大変でした・・・これ、上演出来るんだろうか?って。

――具体的にどこが大変だったんですか?

KERA:・・・俺を追い詰めるのか(笑)。

峯村:まあ皆さんが想像されるとおりです(笑)。

犬山:壮大な話だったし、二人のやり取りも膨大な量だったからね。

KERA:笑いが中心の作品ならともかく、この作品は「ドラマ」だからどこに着地するかをいつも以上に分かってないと役者はやりづらかったと思います。時系列があちこちに飛んで真っ直ぐに進まない話。そこがミソとなる話だったから。順番通りに観ると「ああ、この人たちは最後にこうなるのね」ってすんなり分かるんだろうけど、初演時はほとんど役者に説明しないまま書いていったから。

ナイロン100℃『百年の秘密』KERA×犬山イヌコ×峯村リエインタビュー_4

――初演時の忘れられない思い出、印象的な出来事などありますか?

犬山:すぐ思い出すのは、特殊な場面ばかりです。

KERA:みのすけが演じる役の頭がおかしくなってしまった場面とか(笑)。

犬山:KERAさんが安澤(千草)に延々ダメ出しをしていることとかも。「それは池を観ているような目線に見えない!」とかね。

峯村:私たち以上に「転換」を担当する若者たちが猛特訓していましたね。

KERA:動いている物に映像を映すのはこの公演が初めてだったからね。でも元々そうするために作ったセットではないからすごく重たくて動かすのが本当に大変そうだった。今回はもっと軽くしますから!

犬山:皆も6年歳を取ったから、体力に気を使わないとね。

KERA:初演時は舞台美術の打ち合わせの時点では、まだ脚本がまったく固まっていなかったんです。セットが決まってから脚本を書いているようなものだったから、結果的にものすごく高い場所で萩原(聖人)が手紙を読むことになってしまったり(笑)。今回もそうなりそうですけどね。キャストが変わるところ以外はそれほど大きく変更せず、丁寧に稽古をしていこうかなと思います。

――セットと言えば、「庭」と「部屋」が一緒になっているというのが非常に衝撃的でしたね。

KERA:あれが普通に「庭」と「部屋」を転換して観せていくと、まさにアーサー・ミラーやテネシー・ウィリアムズの作品のようになるんですが、庭と部屋を同一空間にする、ということでちょっと変わった芝居になりました。

犬山:稽古中にいろいろ混乱をきたした記憶がありますよ。どういう感じでやればいいのかなと、話し合った記憶があります。舞台が始まってからはもはや何も思わずやっていたんですが。

峯村:こっちはお庭、こっちは部屋の中って自分なりに順応してやっていましたね。

犬山:ナイロン100℃では抽象的なセットでこれまで散々やっていたのに、この作品では具象のものがあるのにそこに別の不思議な空間が出来上がっていて・・・人間って固定概念があるから最初は戸惑うんですよね。

峯村:本当に。階段を降りたら部屋の中だというのにそこには大きな木があって!でも幕が上がってからは何も感じなくなっていました。

犬山:むしろ稽古場でまだセットがない時に「ここに木がある」と言われたときのほうが、どういう感じで自分はここにいればいいんだろうって戸惑いましたね。

KERA:最初は『ちょっと、まってください』のように、庭と部屋を盆を使って転換するって案もあったんですよ。台本が一ミリも出来ていない時ですが。でも二つの場を一緒にしちゃうとおもしろいかもしれないとふと思いついた。具象と抽象の合体みたいなアイディア。抽象的な芝居は山ほどやってきたんです。昔は本当にお金がない劇団だったからコントみたいなことしかできなかった。まあ、同時に、コントみたいなことが一番やりたかったんですけど(笑)。やがて『4A.M.』(1995年)のようにガッチリ具象化したセットでやる芝居もやれるようになった。セットも骨組みしかない芝居とかもやってきましたしね。そこでこの作品では、物理的には具象を使い、発想というか方法には抽象を混ぜてみたんです。効果的だったと思います。

ナイロン100℃『百年の秘密』KERA×犬山イヌコ×峯村リエインタビュー_3

『百年の秘密』が犬山イヌコ、峯村リエの代表作になってほしい

――『百年の秘密』のような、家族ではなくても非常に近い距離の存在である女性同士を描く際のおもしろさ、もしくは難しさをどのように感じていますか?

KERA:書いていてとてもおもしろかったですよ。これが男二人ならきっとそれほどはずまなかった(笑)。昔、シアターコクーンで芝居をやることになり、女性二人が子どもの頃友達で、その二人がだんだん大人になっていく話を提案したところ、何かの理由で却下され「こちらの詐欺師の話のほうがいいですね」って選ばれたのが『カメレオンズ・リップ』(2004年)でした。その時から『百年の秘密』の素がなんとなくあったんです。
『百年の秘密』は、それほど奇抜な話ではなく、不思議なことも起こらない、不条理劇でもない、『4 A.M.』みたいに赤い球が浮いたり『フローズン・ビーチ』みたいに虫がしゃべったりもしない。

犬山:お話的にはしごく真っ当でしたよね。

KERA:人生の中で誰しもが体験するような友達や家族とのこと・・・好きな人を奪い合うとか、子どもの頃、誰と仲良くしたかで揉めたりとか、息子に期待する父親との軋轢とか・・・。誰の身にも起こって不思議のないような些細な出来事をどんな手つきで演じ、語るか、そこにどんな実験的な演出をどの程度入れるか。そこからナイロン100℃としての独自性が初めて生まれると思うんです。例えるなら、杉村春子さんの『女の一生』を二人でやる、しかもものすごくめんどくさいバージョンで(笑)。

――ナイロン100℃らしい奇抜さ、実験的要素があるにしろ、実のところスタンダードな作品だと思いますが、犬山さんと峯村さんがこういった作品を演じる際、どのようなお気持ちで臨んでいらっしゃいますか?

KERA:初演の時は考える余裕もなかったんじゃない?

犬山:本当!特にこの二人にかかる比重がすごくて。それまでのKERA作品は群像劇が多かったから。

峯村:初演の時は本当にいっぱいいっぱいで、再演になった時、初めてKERAさんの演出を受けられる、という思いになりそうです。

KERA:自分はこの二人が絡む光景が大好きなんです。ほかの人の芝居を観る時にもあるんですが「この役者が出てきたらあの役者と絡んでほしい」そういう気持ちと同じなんです。『百年の秘密』の後に上演する『睾丸』は三宅弘城とみのすけの二人を軸にする予定です。ナイロン100℃と劇団健康、その創成期から支えてくれた女性二人と男性二人、その代表作として、今後それぞれのプロフィールから省かれない作品になってくれるといいなあと願っています(笑)。

ナイロン100℃『百年の秘密』KERA×犬山イヌコ×峯村リエインタビュー_5

よくこんな作品が書けたなと思う、今より自分はすごかったかも(笑)

――初演から再演までの6年間で皆さんそれぞれに様々な経験を重ねてきているかと思います。それを踏まえると台本や役に対する触れ方、向き合い方に変化が生まれたりしませんか?

KERA:まあたった6年でそんなに自分は成長していないので(笑)、今回は改めて細かいところまでちゃんと確認してやろうと思っています。台本や映像を突き合わせてみたんですが、「俺ってあの時、よくここまで出来たなあ」って感心しました。プロット(骨子)を決めずに頭から書いてよくこんな作品が書けたよなって思います(笑)。

一同:え~!それはすごい!

KERA:こういう作品ってなかなか行き当たりばったりでは書けないタイプの芝居ですよね。普通はまず計算づくでプロットを立てる。さもなくば、まずは時系列順に考えて、この場面とこの場面を入れ替える・・・っていう作り方をしそうじゃないですか。どちらもやっていないんです。人物相関図には時間をかけたけど、そこが決まったらあとは書き進めながら先を考えた。そう思うとこの頃のほうがむしろ今よりすごかったかもしれない(笑)。

峯村:じゃあどうなるか分からない状態で書いていたってことですか?

KERA:若干先のことは計算しながら書いていましたけどね。次できっとこうなるだろうから、その前にこうしておいた方がいい、というくらいです。普通の作家さんがやるようなオチからの「逆算」はしないです。小説家、脚本家問わず、オチから「逆算」して書く人、多いと思うんですよ。その人の作品を読むとあまりに整理されすぎているからそれが分かってしまうんです。
この作品の中では、「この人は将来二人のどちらかとくっつく・・・」というくらいしか考えずにその前の場面を書いていましたね。

ナイロン100℃『百年の秘密』KERA×犬山イヌコ×峯村リエインタビュー_2

――さて、今回の再演に向けてどのような心構えで臨みたいですか?

犬山:もはや気持ちとしては新しい作品を演じると思ったほうがいいかも。稽古をしているうちにいろいろ初演時のことを思い出してしまいそうですが。

峯村:私は、台本の解釈を間違えていることが多いので、再演になったことで「ああ、ここはこういう意味だったのか!」って確認できるかもしれないです(笑)。

犬山:でもKERAさんの本って割といっぱいいっぱいの状態でやる方が良いのかも(笑)。解釈しすぎると逆に余計な考えが出てきてしまいそうです。とはいえ、再演をやるなら別の角度からも見てみたいですね。

――最後に、再演を待ちわびているお客様にメッセージをお願いします。

KERA:なかなかこういう作品は書けない、一生に一本と言える作品なので、ぜひ生で「決定版」を観に来ていただきたいです。

犬山・峯村:決定版!なんだかいいですね(笑)!

ナイロン100℃『百年の秘密』KERA×犬山イヌコ×峯村リエインタビュー_6

◆公演情報
ナイロン100℃ 45th SESSION『百年の秘密』
【東京公演】4月7日(土)~4月30日(月・休) 
下北沢 本多劇場
【兵庫公演】5月3日(木・祝)・5月4日(金・祝) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【愛知公演】2018年5月8日(火)・5月9日(水) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
【長野公演】2018年5月12日(土)・5月13日(日) まつもと市民芸術館 実験劇場

【作・演出】ケラリーノ・サンドロヴィッチ
【出演】
犬山イヌコ、峯村リエ
みのすけ、大倉孝二、松永玲子、村岡希美、長田奈麻、廣川三憲、安澤千草、藤田秀世、猪俣三四郎、菊池明明、小園茉奈、木乃江祐希、伊与勢我無
萩原聖人、泉澤祐希、伊藤梨沙子、山西惇

(撮影/エンタステージ編集部)

(文/エンタステージ編集部)

ナイロン100℃ 45th SESSION『百年の秘密』

作品情報ナイロン100℃ 45th SESSION『百年の秘密』

二人の女性の半生を描くケラリーノ・サンドロヴィッチの書き下ろし!

  • 公演:
  • キャスト:犬山イヌコ、峯村リエ、みのすけ、大倉孝二、松永玲子、村岡希美、長田奈麻、廣川三憲、安澤千草、藤田秀世、猪俣三四郎、菊池明明、小園茉奈、木乃江祐希、伊与勢我無、萩原聖人、泉澤祐希、伊藤梨沙子、山西惇

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