『ダンス オブ ヴァンパイア』サラ役・神田沙也加にインタビュー「セクシーとイノセントの対比を楽しんでください!」


ヴァンパイアと人間たちの騒動を、ゴシックホラー風のビジュアルと、ウィーン生まれのミュージカルならではの重厚でメロディアスな音楽に乗せて描き出す、ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』。ディズニー映画『アナと雪の女王』日本語版のアナの声で一躍知名度を上げた神田沙也加は、日本版初演の時から本作の大ファンで、ずっと出演を熱望していたそうだ。彼女が演じるのは、ヴァンパイアのクロロック伯爵と、ヴァンパイア研究家の助手アルフレートの両方に愛される村娘サラ。「この役が私のターニングポイントになるかもしれません」と、なみなみならぬ決意でサラ役に挑む神田に、サラというキャラの魅力や、ミュージカルというジャンルへの思いなどについて語ってもらった。

『ダンス オブ ヴァンパイア』神田沙也加

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サラは可憐さと危なっかしさと強さのバランスがいいヒロイン

──『ダンス オブ ヴァンパイア』のサラ役は、以前から演じたかった役だそうですね。

私はミュージカルを観る時に「この中でどの役だったら、自分ができるかなあ?」と考えるクセがあるんです。特にサラは初演を観た時から「自分だったら…」という目で観ちゃってて、構想を膨らませていた役でした。だからその知らせを聞いた時は…車の中だったんですけど、後部座席でひっくり返って喜びました(笑)。

──神田さんにとって『ダンス オブ ヴァンパイア』という作品の魅力は?

始まりは結構雰囲気があるんですけど、フィナーレでは会場全体を巻き込んで、お祭みたいな騒ぎになるんです。それだけ客席参加型のミュージカルである、っていうのが魅力かな。あと、ちょっとコメディとして考えてもいい部分もあるんですよ。クロロック伯爵が、サラっと「自分は夜型だから」って言い出したりとか(笑)。何かそういう、ヴァンパイアがチャーミングに見えてくるミュージカルなのかな、という風に思います。

──サラはどういう風に演じようと思っていますか?

小悪魔的でかわいらしい役ですけど、あまり自分から仕掛ける感じにはしたくないんです。どちらかというと、何も知らないというイノセント感が危うくて、結果そこが小悪魔的だというのを、色濃く見せたいと思います。計算づくで動いているという風には見せたくないです。

──ずっと考えていた構想と違った部分や、新しい発見は?

稽古では、答え合わせをしているような気持ちでした。特に、サラは自分が思っていた以上に我も芯も強くて。サラのような、自分が知らない外界に憧れるヒロインって、どこかか弱くて、うるうると外を眺める感じになりがちなんですよ。でもサラはそうではなく、非常に「自由になりたい」と渇望している女の子であるという。あとすごく、バランスがいいですね。

──どういった所が?

可憐さと危なっかしさと強さのどれかが偏っているヒロインって多いと思うんですけど、サラはその三本の柱が絶妙なバランスで立っている。現代的でちょっと身近な…お姫様でもない、何か近しい感じがする不思議なヒロインです。

──共演者の方たちの印象はいかがでしょうか。

山口さんは『レ・ミゼラブル』でもご一緒させていただいたんですけど、久々に真横に立ってみて、すごく大きくてビックリしました(笑)。今回は特にヴァンパイア役だから、そういう風に存在感が見えるのかもしれないですけど、本当に心してやらないとな、と思います。
Wキャストの(舞羽)美海ちゃんは、とても努力家でストイックなんですけど、人に対してはとても柔らかくて人懐っこいですね。アルフレート役の(平方)元基君と良知(真次)君は、すごく対極で面白いです。元基君は熱くて、良知君はクール。歌声からしても対照的なので、印象が違うデュエットを、何回も観て楽しんでもらえたらなと。

──舞羽さんには演出家から「セクシーに」というリクエストがあったそうですが。

アハハハハ! 美海ちゃんにそういうオーダーが出たのなら、今回のWキャストのセクシー担当は美海ちゃんなんですよ。今それを聞いて「よし! じゃあ私、よりイノセントな方向で行こう」と思いました(笑)。セクシーとイノセントの対比が出た方が、多分面白くなると思いますし、それならば美海ちゃんの方が(セクシーは)絶対適任です。

『ダンス オブ ヴァンパイア』神田沙也加_2

写真提供:東宝演劇部

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ミュージカルは、自分の知らなかった一面を自分で初めて知る場

──最近は声優や音楽活動など、かなりお仕事の幅が広がってますよね。その中で神田さんにとってミュージカルとは、とても大切なものではないかと思いますが。

そうですね。私は初舞台が宮本亜門さん演出の『Into the Woods』だったんですけど、あそこで亜門さんが「歌いながら演じることってすっごく楽しいし、色々な可能性で溢れている」ということを示してくださらなかったら、多分やってなかったと思うんです。やっぱり演じていて、いい所取りをしているような気持ちになったんですね。歌でも芝居でもダンスでも「私はこんなことができます!」ということを、アピールできる場なんだなあと。逆に言うと、自分の知らなかった一面を自分で初めて知るという場でもあるし、そういうことが尽きることのない世界です。

──だとすると、やはりミュージカルからは離れられないと。

そう思います。やっぱりその年齢に合った役だったり、作品だったりというのはこれからもあると思うんですけど、そのたびに何か新しい発見があるジャンルなのかな? と。だから続けて行きたいですね、どんどん。

──今後挑戦してみたい役柄や、あるいは役者以外に挑戦したいことはありますか?

具体的には『マイ・フェア・レディ』のイライザです。あと『ロミオとジュリエット』のジュリエット。これはミュージカルじゃなくてもやってみたいヒロインです。あとは、みんなが悪い中で一人だけ優等生という役が多いので、逆にちょっと悪い役もやってみたい(笑)。最近はナレーションもやらせていただけるようになったんですけど、もっとすごく固い番組だとか、あるいはリラクゼーションみたいなミニ番組なんかもやってみたいです。この声を聞いた時に「リラックスさせる力があるなあ」とか「言いたいことがすごく明瞭に入ってくるね」とか、伝えなきゃいけないモノに対して、クルクルと表情を変えるナレーションができるナレーターになれたらなあと。私にとって声と舞台は、やっぱりとっても大事だなあと思います。

──これで日本では四度目の上演となる『ヴァンパイア』ですが、今回はここが違う! というポイントはありますか?

まずクロロック伯爵のお衣裳やウィッグが変わるので、より迫力と艶かしさが増幅しています。それと今回のサラとアルフレートは、動き回ったり走り回ったりとかを、割と積極的にしていく人ばかりなんですよ。特に平方元基君は(笑)。一回みんなで暴走してみて、演出で整理整頓していただいて、すごくフレッシュで躍動感がある舞台になっているんじゃないかなあと思っています。
でも過去の公演とかの予備知識がなくても楽しめるし、特にミュージカルは初めてという方にこそ観ていただきたいです。そんなに敷居が高くなくて、誰でもウェルカムな舞台なので、多分ミュージカルのことを大好きになっていただけると思います。

──ちなみに神田さん自身は、伯爵とアルフレートならどちらの男性に惹かれますか?

(即答で)クロロック伯爵(笑)。アルフレートも親近感があって、可愛らしいと思うんですけど。でも無知な状態の時って、自分が知らないことをたくさん知ってそうな人と話したいと思うし、知らない場所に連れていって欲しいと思うんですよね。私もそういう所があるので、伯爵に喜んでついていきます。


◇神田沙也加 プロフィール◇
1986年東京都出身。2004年に『Into the Woods』(宮本亜門演出)で初舞台を踏む。『レ・ミゼラブル』帝劇開場100周年記念スペシャルキャストでコゼットを演じる。2014年、ディズニー映画『アナと雪の女王』日本語吹替版のアナ役を務め、同年の紅白歌合戦では本国エルサ役の声を務めたイディナ・メンゼルとの共演を果たした。現在は女優・声優の他、ギタリストのBillyとともに音楽ユニット「TRUSTRICK」で活躍している。

◇ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』◇
2015年11月3日(火・祝)~11月30日(月) 帝国劇場(東京)
2016年1月2日(土)~1月11日(月) 梅田芸術劇場 メインホール(大阪)
2016年1月15日(金)~1月17日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール(名古屋)

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