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音楽劇『ペール・ギュント』加藤和樹×橋本淳インタビュー!「新たな世界を体感しに、ぜひ劇場へ!」

ノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセンが19世紀末に書いた『ペール・ギュント』を、演出家・白井晃が新たな音楽劇へ――。「自分であるとは何か?」の答えを探すために世界中を放浪するペール・ギュントの姿を通して、今を生きる人々の心に深く響く作品となりそうだ。この作品で3年ぶりに共演する、加藤和樹橋本淳に現在の心境や、稽古場でのお互いの演技についての感想を聞いた。

『ペール・ギュント』加藤和樹、橋本淳

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――加藤さんは、2013年の『オセロ』以来の白井さん演出作品になりますね。

加藤:はい。2作目になります。“白井ワールド”にまた入れるのかと思うと、楽しみが8割ぐらいで、あと2割は「今回はどうしごかれるのかな」という(笑)。

――橋本さんは、白井さんとは初めてですね。

橋本:ちょうど去年の7月くらいにお話をいただきました。今回の作品の制作スタッフと3年前にご一緒していたこともあって、それがきっかけで声をかけてもらいました。白井さんの作品は前から観ていたので、白井さんの演出と聞いて、ぜひやらせてほしいと。『ペール・ギュント』という作品も知ってて、ちょっと分かりづらい作品だと思ってたので、白井さんがどう料理するのかな、っていう興味もありましたし。ドキドキしながらお受けしました。

――橋本さんは、この作品前にもイプセン作品をやっているんですよね。

橋本:そうなんです。この前、『海の夫人』をやらせていただきました。でも、『海の~』はイプセン後期の作品でしたし、女性参政権を得た時代作品でしたから。今回のイプセンがもっと若い時代に書いた詩劇の『ペール・ギュント』は、同じ人が書いたとは思えないような、世界の広がり方が面白いなと思いましたね。

――なるほど。加藤さんは台本を読んだ感想はいかがでしたか?

加藤:台本は現代の言葉に変わっていたので、原作の和訳を読んだときより分かりやすくなっていました。ペール自身がどう自分探していくか、という物語ですけど、今回ペールとして探求していく内くんは大変だろうなっていうことを最初にすごく思いましたね。

『ペール・ギュント』加藤和樹

――おふたりは共演歴がありますよね。

橋本:2回かな?

加藤:でも絡んだ?

橋本:3年前の舞台では絡んだよね。

加藤:そっか。

橋本:でもすごい前な感じ。

加藤:そうだね。

――では、3年ぶりの共演ということで、稽古場でのお互いの印象は変わりました?

加藤・橋本:(同時に)変わらない…(笑)。

――そうですか?

橋本:でも、落ち着いた印象は前よりあるかも。大人っぽくなった感じ。

加藤:そう?

橋本:見た目と違って、いい人なので(笑)

加藤:おい!(笑)

橋本:今回和樹くんと初共演の人に和樹くんの印象を聞いたら、「怖そう」だって。だから、「見た目は怖そうだけど、すごくいい人だよ」って触れ回っておいたから(笑)

加藤:ありがとうございます(笑)助かります。

橋本:ギャップがあって、すごく魅力的で柔らかい人だなっていうのは、前から変わっていないかな。とがってもいないし…。

加藤:そうかな(笑)

『ペール・ギュント』橋本淳

――では、加藤さんは、橋本さんについての印象は変わりました?

加藤:なんか…落ち着き過ぎてて。

橋本:(笑)

加藤:前は、そんな感じじゃなかったんですけど、やっぱりお互いに歳を重ねたし、いろいろ経験したんだろうなと思った。一緒にいて、すごく頼もしいです。彼は、探究心が強いというか、気になったことはすぐに聞くんです。まだ稽古に入ったばかりだけど、もう白井さんに聞きに行ってる姿を見てる。それが刺激にもなる。以前と変わらずに気になる存在ですね。

橋本:ほー(笑)

――おふたりのほかにも、若いキャストが揃っていますね。

加藤:内くんをはじめ、若いキャストがたくさんいるので、それぞれがどういうアプローチで表現するのかなっていう。まだ演出的に決まってない部分もあるし、僕らもまだ試し試しやっているところです。これからまだまだ作っては壊して、再構築していく作業をやってくことになると思うんです。それに僕らがついていけるかどうか、ですよ。

★次ページでは、演出の白井晃、そして共演者について伺いました。ご覧ください!

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――橋本さんは白井さんの演出を受けてみてどうですか?

橋本:そうですね。いろんなタイプの演出家さんがいらっしゃいますけど、白井さんは、あえてポイントを決めずに役者と一緒の目線で演出される方だなって思います。もともとご自身で持っているビジョンがしっかりあると思うんですよ。でも、それをあえて言わずに、役者の関係性とか距離感を見ながら一緒の目線で作り上げていくみたいな感じです。今回の作品においては、「自分に近づける」ってことと、「偶発性」を求められていると思う。アドリブじゃないですけど、毎回同じことは起きない、たまたまその場所で起きたときに、何を感じるのか、っていうことを大事にしてる。自分の中に作ってきたものはもちろんありますけど、それをどこまで捨てるのか、っていうのが、今回の自分のなかでのテーマかなと。白井さんに見てもらって、ジャッジしてもらう。こっちも責任感を問われるような作品作りではあるので、怖さもありつつ楽しさもある感じなんですけど、面白いですね。白井さんは、プレイヤーとしての面も持ってる方ですから、そこも普通の演出家さんとは違う立ち位置で、一緒に役者と作品を作ってる印象も受けました。

加藤:あっちゃんが言ったように、白井さんは、「形だけで入らないでほしい」と言うよね。中から出てくるものでやりたいって人なので。僕はいつも「型にはまるな」って言われる。「もっと自分の中でリアルにしてからやりなさい」って。分かってるんだけど、なかなか型からやるのが抜けなくて…。何にも頼らないで、自分の中身だけ、中から出てくるものだけでつくらないといけないのは、前回『オセロ』をやった時もそうだったな。毎回同じことが起こらないことを大事にしたいんだろうなと。

『ペール・ギュント』橋本淳

橋本:「静かな演劇をやりたいわけじゃないから」って言ってたけど、これは皮肉じゃなく、感覚で立ち上げたものを演劇としてお客さんに見せるために、どう消化するかっていうことに重きを置いているからで、形作りというか、今までやってきたものがみんなそれぞれにあって、その経歴のサビをいかに落として、素っ裸で立ったその怖さと戦って、どう表現してお客さんに伝えていくのか。それぞれが自分自身との戦いだよね。ペールじゃないけど。

加藤:そうそう。

橋本:「本当に自分自身と戦って、会話して、お客さんを巻き込んで、どう作品にできるかっていうことが大事」「守るんじゃなくて、攻撃的に作品を作っていって、大ボケか大当たりか、それくらいの勢いを持ってやりたいんだ」って白井さんは言ってましたけど、そういうコンダクターがいると、役者としては安心感がある。この人だったら一緒についていきたい、って思わせてくれるというか。

加藤:たしかに、道連れがどうこうって言ってた。

橋本:そうそう。博打。それくらいの気持ちがあるからって。

――今回フリー・ジャズピアニストのスガダイローさんが音楽で参加されて、生演奏が入ることでも、新たな挑戦を感じます。

加藤:即興で演奏される場面もあるので、それは楽しみな反面、役者としてはそのバンドの音の力に負けないようにエネルギーを出さないといけないっていう。そこは実際にやってみないと分からないですけど、そこでも戦いですね。

――稽古場では小道具とか、舞台セットの端々が見えてきて、作品の輪郭が見えてきた感じもありますか?

橋本:プレ稽古を小さめの場所でやってたんですけど、本稽古で広い空間に移動して、27人のキャストが並ぶとやっぱり違いますね。今回白井さんは、現代とペールがいる時代を並行して描いてる。二重構造になっているんですけど、みんながそう思ってないと思うけど、僕は三重構造に感じるときがある。稽古場で日々感じることが変わるので、この空間の中に立ってるだけでいろんなものを、いろんな人のいつもと違う動きが目に入っただけで、なんか少しゾワっとする感覚というか、普通の芝居ではあまり感じないようなことがある。頼るものが何も無いセットなので、そこで頼るのは人だったり壁だったり、地面だったり。ほんとうに五感がすごく敏感になるというか…。

『ペール・ギュント』加藤和樹

加藤:僕は、「いま自分が何者なんだろう」ってなる瞬間があるんだよね。何者でもないんだけど、そこに存在している人をやってるとき。そこがね、いま僕の中では一番クエスチョンな部分で悩んでる。同じ空間のなかに二つの世界があるっていうのを上手く見せられればいいんだけれど…。まぁそれは白井さんが外から見ていろいろ判断していくことだとは思うんですけども。でも、稽古場と舞台ではまた見え方も違ってくる感じがするし、舞台稽古でも変わっていきそうな予感がします。

――ペール役の内さん、ペールが恋に落ちる娘ソールヴェイ役の藤井美菜さん、ペールの母オーセ役の前田美波里さん以外の人たちは、何役も演じられると聞いています。

橋本:まだ暫定ではありますけど、僕は6、7役くらいはやりそうです。でもそれは全然別の役ではなくて、ペールに対する関わりとか、どう影響を与えるかっていうのが薄く一つでつながってる感じなんですよ。それをどこまで出すか、出さない方がいいのかっていうバランスを見ているところです。白井さんのキャスティングの妙を感じます。和樹くんがやる役もそうですけど。特に声を変えたりとかじゃなくて、さっきも言った、自分自身の中から出すっていう白井さんの言葉からも、一人の俳優が何役もやってるのが見えても良いんだろうな、っていう演出の意図を感じるので。だから、他の人が演じるのを見てるのが面白い。1幕でやってた役と違う役をやってるんですけど、なんか一瞬、1幕の役が見えて来るというか。

加藤:あれは面白いよね。

橋本:錯覚というか。そんな感覚ありますね。

――白井さんは、「加藤くんにはこれまでにやったことのない役を与えた」って言ってたんですけど、橋本さんから見るとどうですか?

橋本:そうかもしれない…。けっこう印象としては豪快なイメージなんだけど、そこに繊細さが入り交じってるような役をやってる。一見そうは見えないんだけど、自分のなかでいろんなフラストレーションとかを抱えながら、それを押し隠してペールに関わってくっていう役をやってる。自分と戦ってる役というか。意外と普段の和樹くんに近いのかも。芝居ではそういうの見たこと無いかも。和樹くんファンは知らない顔なんじゃないかな?…僕も彼の全てを知ってるわけじゃないけど(笑)。そういう根本の姿がはしばしに漏れ出てるのは面白いかも。

加藤:(笑)。

――では逆に、加藤さんからみた橋本さんが演じているのを見て…

加藤:お芝居でこんなに頼りない感じを出せるなんて…って感じ。それをあっちゃんは出せるんですよね。普段はしっかりしてるし、決して弱くないんですよ。でもこの作品では、相手のなにかにすがる頼りないとことか、失意のなかにいる表情だったりとかすごい。まだそのへんの表現はまだ探ってるところだとは思うんですけどね。かわいそうに見せるとか、弱く見せるのを、それこそ内から出すのって難しいんじゃないかなって思うんですよね。

橋本:うーん(照)。

加藤:その起こった事実を、例えば、悲劇だったりとかっていうことを、まず自分の中で本当のことにしないといけないわけですから。

『ペール・ギュント』加藤和樹、橋本淳

――その自分のなかで本当にする作業はどんなふうに作っていくんですか?

加藤:どうやって作るんですか?

橋本:えっ、僕!?(笑)作品と現場と共演者によって作り方は全然違うけど、だいたいは、自分の今までの歴史と照らし合わせて、感情をセンスメモリーとかから探って立ち上げていくかな。でも、今回はみんなを見ながら、もらったものから立ち上げる方が大きい気がする。だから、自分の作業としては、いかにアンテナを広げて、みんなからもらうかって感じ。それがいいか、まだ確定はしてないけど。今回は、そこに頼った方が近道なんじゃないかなっていう感じがしてます。

加藤:僕も一緒で、現場にあるものや、共演者だったり、交わすセリフのなかで受け取る感じ。自分の言葉を本当にしなきゃいけないのもそうだし、相手からもらう言葉も自分のなかに落とし込んで、それを自分の中で信じ込むというか。ちゃんと会話をしてそこで物語、人間関係を役としてつくることをしていかなくちゃと思ってます。

――まだまだ稽古場でいろんなことが起こりそうですね。本番の舞台がいまからすごく楽しみです! 最後に、公演を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。

加藤:本番の幕が上がっても、舞台で何が起こるかわからないって気持ちで演じてると思います。ある意味それがこの作品の“売り”でもあると思うんです。そこで何が行われて、何が起こって、そしてペールという人間がどんな人生をたどっていくのか、っていう。その背景にどういう世界が広がっているのかってことも。KAATという劇場で生まれる『ペール・ギュント』という世界、決して一つではない世界を、楽しみにしていただきたいなと思います。

橋本:…てことですよね。もう言うことない(笑)あ、でも、なかには翻訳ものだからとか、外国の昔の戯曲っていうことで、難しいんじゃないかって思う方がいるかもしれないけど、そんなことは一切ないです! 観た人それぞれがどこか共感する部分があって、自分のことを顧みるような作品になると思います。お客さん参加型というか、客席までもが『ペール・ギュント』の世界になるんじゃないかなって思うので、その時間と空間を体験しに、生の芝居を見に劇場に来ていただきたいです。


◇加藤和樹(かとう・かずき)プロフィール◇
1984年10月7日、愛知県出身。2005年、ミュージカル『テニスの王子様』で注目され、その後、舞台、ドラマ、映画などで活躍。最近の主な舞台出演作に、『ロミオ&ジュリエット』『レディ・ベス』『タイタニック』。また、俳優活動と並行して、2006年のCDデビュー以降、音楽活動や声優としての活動も行っている。今秋放送予定のドラマ『薄桜鬼SSL~sweet school life~』に特別出演、2016年4月の帝国劇場公演『ミュージカル『1789 バスティーユの恋人たち』(演出・小池修一郎)の主演が決定。

◇橋本淳(はしもと・あつし)プロフィール◇
1987年1月14日生まれ、東京都出身。2004年、ドラマ『WATER BOYS2』でデビュー。2007年、NHK朝の連続テレビ小説『ちりとてちん』でヒロインの弟を好演。以降、ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍。最近の出演作に、舞台『海の夫人』城山羊の会『トロワグロ』『HISTORY BOYS』『世迷言』『ピグマリオン』『温室』『阿呆の鼻毛で蜻蛉をつなぐ』、ドラマ『連続ドラマW 夢を与える』『軍師官兵衛』。2016年1月、世田谷パブリックシアターにて二兎社の舞台『書く女』に出演。

◇音楽劇『ペール・ギュント』あらすじ◇
落ちぶれた豪農の息子で、母と暮らしているペール・ギュント。かつての恋人を結婚式から奪取して逃亡するが、その恋人に飽きたら彼女を捨て、妖精の娘と婚礼寸前まで行くが逃げ出すような男だった。
その後、純情な移住民の娘ソールヴェイと恋に落ちるペールだったが、ソールヴェイにふさわしい自分になるまで、彼女を待たせたまま放浪の旅へ。世界中を遍歴したのち、老いて帰郷をする。
果たしてペールの人生は、特別な意味のあるものだったのか?
彼はずっと待ち続けていたソールヴェイのもとにたどり着く――。

ペール・ギュント
2015年7月11日(土)~20日(月・祝) KAAT神奈川芸術劇場 ホール
2015年7月25日(土)~26日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

作:ヘンリック・イプセン
構成・演出:白井晃
翻訳・上演台本:谷賢一
音楽・演奏:スガダイロー
振付:小野寺修二
出演:内博貴、藤井美菜、加藤和樹、堀部圭亮、橋本淳、三上市朗、前田美波里 ほか

★公式サイトはこちら★

(文/金本美代)

ペール・ギュント

作品情報ペール・ギュント

「自分自身とは何か?」現代にも通じるテーマが、胸に響くイプセンの傑作

  • 公演:
  • キャスト:内博貴、藤井美菜、加藤和樹、堀部圭亮、橋本淳、三上市朗、前田美波里、ほか

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