日本人俳優初の快挙なるか?~トニー賞にノミネートされた日本人たち


『王様と私』

おととし、2013年のトニー賞。
ミュージカル部門作品賞に選ばれたのは、2005年の同名映画を舞台化した『キンキーブーツ(Kinky Boots)』[2013-]。この作品に製作者の一人として関わった川名康浩さんは、日本人として初めてのトニー賞受賞者になった。

2007年初演のブロードウェイ・ミュージカル『キューティ・ブロンド(Legally Blonde)』にアソシエイト・プロデューサーとして参加した川名氏。
2011年、プロデューサーとして加わった『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(Catch Me If You Can)』[2011]がミュージカル部門作品賞、翌年『エビータ(Evita)』[2012-13]がリバイバル作品賞にノミネートされたが、どちらも受賞は逃した。3年連続ノミネートでようやくつかんだトニー賞だった。

これ以前にも、数人の日本人がトニー賞にノミネートされている。

日本を代表するコスチュームデザイナー/アートディレクターだった故・石岡瑛子さん。
1988年に『M.バタフライ』[1988-1990]で演劇部門の舞台美術賞と衣裳デザイン賞、2012年には『スパイダーマン(Spider-Man: Turn Off The Dark)』[2011-2014]でミュージカル部門衣裳デザイン賞にノミネート。
『M.バタフライ』は作品賞ほか3部門を受賞したが、惜しくも石岡さんの受賞はならず。

また、2005年のトニー賞では、かつて(1976年)日系人のマコ岩松さん(故人)が主演男優賞候補になったミュージカルのリバイバル『太平洋序曲』[2004-2005](演出/振付:宮本亜門)で、松井るみさん(ミュージカル部門舞台美術賞)とコシノジュンコさん(ミュージカル部門衣裳デザイン賞)が個人でノミネートされて話題を呼んだが、このときも栄誉を手にすることはかなわなかった。

日本人“俳優”初のノミネート

日本人の俳優として初めてトニー賞候補となったのは、1950年代前半の日本でジャズシンガーとして活躍していたミヨシ・ウメキさん(故人)。日本では「ナンシー梅木」の芸名で活動し、レコードリリースだけでなく音楽劇映画にも出演していた。
その後渡米し、マーロン・ブランド主演の映画『サヨナラ』[1957]では、在日米軍人と恋仲になり、心中の道を選ぶ日本人女性を演じて1957年にアカデミー賞助演女優賞を受賞。アジア人初のオスカー像を手にした、まさに「ハリウッドで活躍する日本人俳優」の草分け的存在。

そして彼女は、1959年にさらなる快挙を達成。
C・Y・リー原作の同名小説をミュージカル化した『フラワー・ドラム・ソング(Flower Drum Song)』[1958-1960]に出演し、第13回トニー賞でミュージカル部門最優秀女優賞にノミネート。これもアジア人としては初めてのこと。

父と共に香港からサンフランシスコへ密入国し、歌で日銭を稼ぎながら暮らすことになった中国人女性のメイ・リーが、見合いするはずだったクラブ経営者・彼に憧れるクラブの女性歌手・彼女と(一応)付き合っている地元の名士の息子らとの四角関係に巻き込まれたりしながら、なんだかんだの末に大団円を迎える…という、どことなく「チャイナタウン版・夏の夜の夢」っぽいストーリーのミュージカルコメディ。
残念ながらトニー賞は逃したが、1961年には映画化もされ、ブロードウェイのオリジナルキャストとして出演。舞台で演じたのと同じメイ役を演じて、ゴールデングローブ賞にノミネート(2度目)された。

米軍キャンプやナイトクラブで歌っていたジャズシンガーで歌唱力は折り紙つき。アメリカでもすでに複数枚のレコードをリリースしていた「プロの歌手」だけあって、英語の歌もお手の物だったナンシー梅木ことミヨシ・ウメキさん。
母国語でないセリフで演技をし、母国語でない詞の歌で感情表現して観客を魅了しなければならないミュージカル。もともと英語が得意でない日本人俳優にとって、ただでさえ高いブロードウェイの壁。その最高峰を決めるトニー賞の壁はさらに高く分厚い。

そんな日本人俳優初の快挙から56年。
今年で69回目を数えるトニー賞で、渡辺謙さんが日本人俳優として二人目・初の主演男優賞候補に。
しかも、『フラワー・ドラム・ソング』を手がけたリチャード・ロジャースオスカー・ハマースタイン二世の代表作『王様と私』でのノミネートだ。

二人の日本人俳優をつなぐ「名コンビ」

『回転木馬』『南太平洋』『サウンド・オブ・ミュージック』など、ロジャース&ハマースタイン作品は日本でも宝塚や日本人キャストで何度となく上演されている。たとえ二人の名前は知らなくても、彼らの作品を観たり、タイトルを聞いたことのある人は少なくないはず。

60年間にわたるキャリアで40作以上のミュージカルを製作。トニー賞・アカデミー賞・グラミー賞・エミー賞に加え、ピューリッツァー賞も受賞という偉業を達成した作曲家:リチャード・ロジャース(故人)と、8度のトニー賞と2度のアカデミー賞(歌曲賞)に輝いた作詞家:オスカー・ハマースタイン二世(故人)。

1920年代から活躍してきた二人がコンビを組んだのは、1943年初演の『オクラホマ!(Oklahoma!)』から。
1959年初演の『サウンド・オブ・ミュージック(The Sound of Music)』まで、第二次大戦後の「ブロードウェイ黄金期」を牽引、一時代を築いた名コンビとして知られる。

二人の作品は、明るくコミカルな曲調で覚えやすく口ずさみやすい歌が多い一方、ストーリーには社会問題や世界情勢などシリアスなテーマが盛り込まれている。
観客の年齢・性別を問わず幅広く受け入れられ、今も世界中で親しまれ上演され続けているのも、ロジャース&ハマースタインのそうした作風に理由があるのかもしれない。

そうした彼らのミュージカル作品は、もちろん多くのトニー賞を受賞。
前々回のトニー賞で、二人が1957年にテレビ放送向けに書いた歌曲と脚本を元に製作された『Rodgers + Hammerstein’s Cinderella』が衣裳デザイン賞を受賞し、35個目のトニー賞獲得となった。

『王様と私』

今回は、渡辺謙&ケリー・オハラ主演のリバイバル版『王様と私』が9部門にノミネート。
彼らの作品がリバイバルされ続ける限り、この記録はまだまだ伸びていきそう。

果たして今年、ロジャース&ハマースタイン作品36個目のトニー賞は実現するのか?
史上二人目、個人・俳優としては初となる日本人の受賞は・・・?
気になる授賞式は、いよいよ6月7日夜(日本時間:8日朝)!

また、WOWOWでは「第69回トニー賞」の授賞式を独占生中継する。『生中継! 第69回トニー賞授賞式』はWOWOWプライムにて6月8日(月)午前8:00から同時通訳で生中継。
字幕版はWOWOWライブにて6月13日(土)よる8:00放送。

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