ミュージカル『シャーロック ホームズ2 ~ブラッディ・ゲーム~』一路真輝インタビュー!「観終わった後には、あったかい気持ちになります」


昨年初春に日本初演され、大人気を博した韓国発ミュージカル『シャーロック ホームズ』。その第2弾となる『シャーロック ホームズ2 ~ブラッディ・ゲーム~』が早くも2015年4月26日(日)に開幕。名探偵シャーロック・ホームズと「切り裂きジャック」の対決を軸に、ドラマティックなメロディに乗せスリリングなストーリーが展開されていく本作。前作に続き、橋本さとし演じるホームズとの息の合ったコンビに期待が寄せられている助手・女性版ワトソンを演じる一路真輝に公演に向けての心境、意気込みを聞いた。

一路真輝

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――昨年春に上演されたシーズン1『アンダーソン家の秘密』に続き、はやくもシーズン2が上演されますね。

シーズン1『アンダーソン家の秘密』への出演が決まり、一昨年の秋にソウルへオリジナル公演を観に行きました。そのとき、作品の音楽に懐かしさを感じたんです。琴線に触れるというか。同じアジア人が作った音楽ということでどこか共通項があるのかもしれません。実際、シーズン1の日本版に出演したときも、歌っていて違和感がなかった。そういう部分に私もすごくひかれていたし、お客さまにも楽しんでいただけたと思います。ですから、シーズン2の上演が決まって嬉しかったです。

――会見で演出の板垣(恭一)さんが、「シャーロック・ホームズなのに、イギリス発ではなく韓国発のオリジナルミュージカルというのが面白い」と話されていました。

私もそう思います。不思議ですよね。もし、日本人がオリジナル作品を作るとしたら、きっと日本を舞台にしたり、日本の歴史を題材に時代劇だったり、時代劇をちょっとポップにアレンジしたりするんじゃないかなと思うんです。ですから、ロンドンが舞台のものを韓国の方がオリジナルで作ったということにすごくチャレンジ精神を感じるんですよね。外国を題材に、オリジナルのものを作っている。まずそれに驚きます。

――一路さんが演じるホームズの助手・ワトソンが女性ということも、“シャーロック・ホームズ”を知っている人たちにとっては意外ですよね。

そうみたいですね。実は私、“シャーロック・ホームズ”についての最低限の知識はありましたけど、小説や映画を観たことがなかったんです。だからワトソンが普通は男性だっていうのも、「ああそうだったっけ?」くらいな感じ。韓国へ公演を観に行くときに、この作品はワトソンが女性ですよって言われて「そうなんだ」って(笑)。ですから、私にとっては韓国で見た女性のワトソンが最初に見たワトソンだったので、そこにはあまり違和感はなかったんです。ただよくよく考えてみると、同じ屋根の下で生活している男女、でも探偵と助手。どんな風に二人の関係を作っていったらいんだろうと考えました。

――ワトソンのどんなところに魅力を感じますか?

ホームズを支え、医者であり、なぜか経理までこなしている敏腕助手、というところも女性として憧れますし、実はちょっと恋愛ベタなのところも可愛らしい。その両面がある素敵なキャラクターですよね。キリリと仕事を頑張るところは、シーズン1では板垣さんや振付の前田清実さんに私のなかにある男役の凛々しさを出すよう求められました。それはいくらでも出せますからね(笑)。私のそういう男役的な部分を活かした役は退団後にやっていなかったこともあって、この舞台を見た宝塚時代からのファンの皆さんにもとても喜んでいただけました。退団後に私が演じて来た役柄のなかでワトソンが一番好き、なんて言ってくださる方も多くて嬉しかったですね。

――そして、そんな一路ワトソンから見た、橋本さとしさんのホームズはいかがでしょう?

“はっちゃけて、必死になって、周りが見えなくなるくらいがむしゃらに走りまくっている橋本さとし”みたいな感じが、この作品のシャーロック・ホームズと重なっていますね。私はしっかりしている部分もあるんだけど、ちょっと抜けちゃう部分もあるんです。私が抜けている時に、さとしさんが突っ込んできたり、さとしさんが暴走しているときに私が引っ張ったり、というのがお互い自然にできるんです。なので、それがホームズとワトソンとしての関係にも活かされて上手くいってる気がします。私はもともと「橋本さとし」っていう役者さんが好きですし、ホームズをやっているときのさとしさんもワトソンの立場から見て愛しいというかほっとけない。そんな感じです。

――シーズン1の二人のコンビがとても素敵で、またあの二人が観られる!と楽しみにしている方も多いです。初共演とは思えないくらいの息の合った二人の演技でした。

自分たちはまったく意識していないんですけど、予想外に周りの評価が良いんですよね(笑)きっと、さとしさんと私、お互いに持っている個性がうまく活きているんだと思います。「さとしさんがこう演じるから、私はこういこう」っていうこともなくて、たまたま二人が持っていた本質的な部分と、演技の質が、なんとなくうまくいったんじゃないかな? 前回、稽古を見ていたプロデューサーさんがさとしさんと私に「これは名コンビになるね!」っておっしゃったんです。私はとっさに「迷コンビ?」が頭に浮かんだんですけど(笑)。ま、それも確かにありますが(笑)、名コンビに見えていたのはうれしいですね。私は普通にやっているだけでしたし、さとしさんもきっと普通にやっていらした思いますが、どうやらそれがうまくかみ合っていたみたいです。

『シャーロック ホームズ』

――シーズン1の公演中に起こった、思い出に残るエピソードはありますか?

東京の千秋楽公演のとき、あるシーンでさとしさんが出てこなくなっちゃって。私1分くらい…もうちょっと長かったかな?舞台上に置き去りにされたんです。でもそれはさとしさんに悪気があったわけではなくて、あとで分かったんですけど、その日のスペシャルで私を驚かせようとして何かを取りにいったらそれが無かったらしいんです。舞台袖であわてて何かを探しまわっているさとしさんが見えるんですよ。ひとり残されてどうやってつなごうとテンパっている自分もいるんだけど、袖に見えるさとしさんも可愛らしく見えちゃったという…(笑)別の公演では、私が舞台上でセリフを忘れちゃって、さとしさんがフォローしてくださった事もありましたね。でも、そのフォローが逆に私をドツボにはまらせてしまったんですけど(笑)お互い足を引っ張りながら、(笑)助け合っていた公演でした。でも、そんな話をお互い笑って話せるんです。それってある意味貴重な関係っていうか。それがシーズン2にも活かせたらいいなって思っています。

一路真輝

――そんな二人が揃って、先に開催された製作会見では、その嬉しさと同時に、シーズン2の曲が難しいことを心配していると話されていました。多くのミュージカルに出演された二人が揃って「難しい」と言われたのが意外でした。

シーズン2が決まったときも、ちょうどソウルでオリジナルのシーズン2が上演されていたので観に行ったんですが、曲が進化していたというか、すごくパワーアップしているのを感じました。これを歌うのは大変だ、とそのときにも思ったんですが、先日の製作会見で、韓国でシーズン1からホームズを演じているソン・ヨンジンさんが来日されたんですけど、彼に「(シーズン2は)覚悟しておいた方がいいよ、曲が難しいから」って言われて、やっぱり!と(笑)。私も実際に観て感じたと伝えたら、「僕たちも稽古がすごく大変だったんだよ」って。そんなふうにあらかじめ分かってもいたし、韓国のキャストの方にもおどかされて不安な気持ちを抱えつつ、譜面を見ながら自分のなかで噛み砕いているところです。確かに、歌うのは難しいですが、曲を聞くとやっぱりなにか琴線に触れてくるんですよね。それはこの作品に限らず、韓国産ミュージカルの特徴なのかな。

――どのような部分が難しいんですか?

シーズン2に関していえば、全体的にキーの限界まで声を張らないと歌えない曲ばかりなんです。体力的にも、声帯的にもすごく大変なんですね。でもそれをやらないと、ワトソンの今回のテーマである“危機感”は出ないと思うから、理想はオリジナルと同じにしたいですね…。そのへんは演出家やボイストレーナーと相談していこうと思っています。それから、曲って1番、2番、サビ、1番、2番…って繰り返されるような展開が多いと思いますが、この作品では、1番、2番、サビ、でまた1番になるかと思えば、1ダッシュ、1ダッシュダッシュ、みたいにメロディが微妙に違っていたりするので難しいですね。拍子もよく変わるし、譜面だけではわからなないことも多いんです。推理劇ですから、歌詞も明確に伝えないとお客さんがストーリーについてこれなくなってしまうので、なかなか手強いんですよ(笑)

――会見では、ソン・ヨンジンさんがシーズン2、橋本さとしさんがシーズン1のナンバーをそれぞれ披露されましたね。

二人の歌は素晴らしかったですが、やっぱり大変だ、というのが正直な感想(笑)でも、意外だったことがありました。ソン・ヨンジンさんが会見前にずっと楽屋で発声練習をしていらっしゃったんです。あんなパワフルで素敵な声を持っている人は、さっと来て歌ってしまうんじゃないかと思っていましたからほんとうに驚きました。ずーっと歌っていらっしゃるんですよ。自分が歌うキーを確認したり声を出したり。思わずさとしさんに、「さとしさんはいいの?」って言ったら、「俺はあんなに歌ったら、本番で声無くなっちゃうよー」って(笑)。この二人の違い、面白いですよね。そしてさとしさんは、会見で素晴らしい歌を披露されていました。さとしさんはさとしさんのペースで準備をしていらっしゃるんですよね。私はどちらかというとソンさんタイプで、やらないとダメな人。それが自分の中ですごく未熟者だと思っていたんですよね。そんなことしなくても歌えるようになりたいな、って・・・。でもソンさんの姿を見て、国境を超えてやってきた、素晴らしいパワフルボーカルの方でも努力をしているんだというのを見たら嬉しくなりました。

――稽古場ではシーズン2初参加の方々の意外な一面が見られるかも知れないですね。

クライブ警部役の別所哲也さんとは初共演なんですけど、ミュージカル界って狭いのか、あまり初めての感じがしないんですよね。よく舞台を観せていただいているし。さとしさんと別所さんも同じ役をダブルキャストで競演されていますしね。逆に別所さんも私の舞台を観てくださっていたそうです。共演が楽しみですね。なにより一緒に歌うことが楽しみ。さとしさんと、置いていかれないようにしようねって話をしています(笑)。

――最後に、公演に向けての意気込みをお願いします。

今回の物語は副題に『ブラッディ・ゲーム』とあるように、切り裂きジャックとの話。すごく残酷な物語なんじゃないかと思われるかもしれません。実際に歌詞に残忍な表現があったり、残酷な場面もありますが、私は台本を最後まで読んで、人間の心の葛藤とか、人間の本来あるべき姿とか、そういうことがすごく丁寧に描かれている、“人間愛”の作品だなって思ったんです。だから、ご覧いただいた後にきっとあったかい気持ちになってお帰りいただけると思います。ぜひ劇場にお越し下さい。


◇一路真輝(いちろ・まき)プロフィール◇
1965年1月6日生まれ、愛知県出身。宝塚歌劇団トップスターとして、『風と共に去りぬ』『ベルサイユのばら』などの話題作に出演、1996年、日本初演となる『エリザベート』のトート役をもって退団。同年、ミュージカル『王様と私』で女優としてのスタートを切る。2000年に東宝版『エリザベート』初演でエリザベート役に臨み、2006年まで出演した。主な出演作に、ミュージカル『キス・ミー、ケイト』『アンナ・カレーニナ』、音楽劇『リタルダント』、ストレートプレイに『ガラスの仮面』『スワン』など。また年1回のコンサート、ライブ活動もコンスタントに行っている。1996年第22回菊田一夫演劇賞、2004年第12回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。

◇ミュージカル『シャーロック ホームズ2 ~ブラッディ・ゲーム~』あらすじ
1888年、ロンドン。売春婦が連続して変死体で発見。この狂気的な殺人事件の捜査をロンドン警視庁から依頼され捜査に乗り出すホームズと助手のワトソン。事件解決のため、バーミンガム警察から派遣された敏腕刑事・クライブも加わり、徐々に真相に迫っていくが彼らだが、その行く手で新たな殺人事件が起こり、かつてない窮地に陥る…。
名探偵シャーロック ホームズと、実在した世紀の殺人鬼“切り裂きジャック”の行き詰まる対決が始まる!

<スケジュール>
【東京公演】2015年4月26日(日)~5月10日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
【福岡公演】2015年5月16日(土)、17日(日) キャナルシティ劇場
【兵庫公演】2015年5月21日(木)~24日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

<演出>板垣恭一
<訳詞>森雪之丞
<上演台本>斎藤栄作
<音楽監督>佐藤史朗
<脚本>キム・ウンジョン
<作詞>ノ・ウソン
<音楽>チェ・ジョンユン

<出演>橋本さとし、一路真輝、秋元才加小西遼生良知真次(Wキャスト)、
竹下宏太郎、まりゑ、春風ひとみ、コング桑田、別所哲也

Photo:(3枚目)『シャーロック ホームズ ~アンダーソン家の秘密~』より

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