有罪か?無罪か?主役は事件、主体は観客『TERROR -テロ-』開幕


2018年1月16日(火)に東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて舞台「TERROR-テロ-」が開幕した。本作は、弁護士でもあるドイツの作家フェルディナント・フォン・シーラッハの初戯曲であり、テロリストにハイジャックされた民間旅客機を撃墜した空軍少佐の判決を巡る法廷劇。観客が「有罪」「無罪」を評決する衝撃的な内容となっており、日本では2016年8月に朗読公演として上演されている。

『TERROR -テロ-』舞台写真_2

ストレートプレイとして日本初上演となる今回の演出は森新太郎が手掛ける。出演者は、橋爪功、今井朋彦、松下洸平、前田亜季、堀部圭亮、原田大輔、神野三鈴の7名。公開ゲネプロの舞台写真と共に、出演者の橋爪、今井、松下、神野、演出の森よりコメントを紹介する。

◆橋爪功
年明け早々おつき合いいただくには、『TERROR』に込められた想いとテーマは、少々大きく、重きに過ぎるものかも知れません。何せ、ドイツの辣腕弁護士にして小説家であるシーラッハ氏が、長年温めた題材を初めて戯曲にしたためた作品ですから。けれどテロは遠い外国のことではなく、日本の私たちにとってもすぐそばに迫っている脅威だと思うのです。
不特定の膨大な情報が流れ込んでくる、種々の報道やネット環境とは違い、演劇は精査された知識と思索に対して開かれた「窓」です。普段は目を背けがちな、世界と人間の抱える問題について劇場でひと時、私たちと一緒に心を傾けていただくお客様に深く感謝いたします。

◆今井朋彦
この作品の主役は事件そのもので、主体は参審員であるところのお客様です。裁判長は証言を引き出す、参審員に結論を導く役回りだろうと意識しながら稽古してきました。舞台上の登場人物が話しを聞かせている相手は、参審員である客席です。稽古場でも常にそのことを意識してきましたが、実際に客席空間を前にすると稽古場とはまったく違った感覚で、稽古場で想像していたより芝居の“アテ”が見つかった気がしています。作品の最大のポイントは、有罪か無罪かの判断を最終的には観客が下さなければならないという点。登場人物たちの台詞や仕草の一つ一つが、有罪に傾いたり無罪に傾いたりと、見る側の気持ちを変えていくのを楽しんでいただければと思います。

◆松下洸平
これまでの自分の演劇経験の中では最高に難しい作品でした。今回のコッホ少佐は超優秀な軍人という設定ですし、声を荒げたら負け、という裁判の中で毅然としていなくてはならない役です。厳しい質問に誠実に回答しながらも、感情は動きます。でも、それを表せない。感情を表したらダメな役というのは本当に大変で・・・。先日の稽古では、じっと手を組んでいた腿のあたりに手の後がついてしまうくらい汗をかいていました(苦笑)。客席の皆さんは芝居を観ているのか、参審員として本物の裁判を観ているのか、しばしば錯覚する局面があると思います。緊張感のある舞台なので、そこを楽しんでいただきたいですね。自分としては今回の作品に参加できたこと、今回いただけた役を演じるのは大きなチャレンジなので、全力で明日からの本番と向き合っていきます。

◆神野三鈴
不器用な私に、台詞の一語一音まで緻密な演出をつけてくださった森新太郎さんや、橋爪功さんを始めとする頼もしい共演陣に支えられ、稽古の日々を走り切ることができました。
劇場とは本来、束の間日常を忘れ、心を解放するために足を運ぶ場所。けれど『TERROR』は、お客様に「命」や「罪」についての深い思索と大きな決断を迫ります。だからこそ、お客様と私たちの間には想像を共有したことで壮大なドラマの伽藍が築かれ、終幕には互いの健闘を讃え合う拍手が響くはず。この舞台はきっと、そんな奇跡のような時間を生み出してくれると信じています。

◆森新太郎(演出)
研ぎ澄まされた作家シーラッハの強靭な台詞と、そこに宿る重い問いかけに導かれ、余分なものを全てそぎ落とした、人間と言葉だけが息づき・ぶつかり合う、まだ誰も見たことのない舞台が誕生しました。これを実現するため、過酷な要求に応えてくれた俳優陣に心から感謝しています。
でも作品を完成させるには観客が席に着き、裁判に参加して下さることが不可欠。『TERROR』における一番の主役。結末を左右し、作品の持つ意味合いを変える力を持つのは観客なのですから。テロの暴力と不条理に向き合い、“演劇を越える演劇”をお客様に体験していただけたら幸いです。

『TERROR -テロ-』舞台写真_3

観客は、一般参審員として弁護士と検察官の論戦を最後まで目撃した後、この裁判について有罪か無罪かの評決を行う。その結果に応じ、日によって違う二通りの結末が描かれる。
「有罪」か?「無罪」か?
どちらの判決が下るのか、誰も分からない。日本初上陸となった朗読公演では、なんと全公演で「有罪」という結果となったという。しかし、公開ゲネプロの結果は「無罪」。初日の結果も「無罪」となっている。今回の上演では、“テロ”に対する日本の意識の変化を観ることができるのではないだろうか。

公式HPや‏PARCO STAGE Twitterでは、過去に上演された各国公演時の判決結果と共に、日本公演の結果を毎日紹介している。ぜひ、公演と共に日々の判決の行方にご注目を。

【公式HP】http://www.parco-play.com/web/program/terror/
【‏PARCO STAGE Twitter】@parcostage ‏

舞台『TERROR -テロ-』は、1月16日(火)から1月28日(日)まで、東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて、2月17日(土)・2月18日(日)に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて上演。

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