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浦井健治『ペール・ギュント』公演レポート!日韓による人生の“祝祭”

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12月6日(水)より東京・世田谷パブリックシアターにて上演されている舞台『ペール・ギュント』。「日韓文化交流企画」である本作には、一生をかけて「おのれ自身」を探し求めるペール・ギュント役に浦井健治をはじめ、趣里やマルシアなど日本人俳優15名と韓国の俳優5名、スタッフも日本の演劇史に名を連ねるような力強いメンバーがそろった。

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イプセンの名作『ペール・ギュント』は、一人の男の生涯を描く壮大な叙事詩。ペール(浦井)は夢見がちな青年で、彼の将来を案じる母オーセ(マルシア)をよそに自由奔放な日々を過ごしている。ペールの無垢な魂に惹かれたソールヴェイ(趣里)と結ばれるが、「遠回りをしろ」という闇からの声に導かれるように、海を越え世界をさまよう。何度も財産を築き、また一文無しになる波瀾万丈の冒険の果てに、やっと故郷を目指すが・・・。本当の幸せ、真の自分をどこまでも追い求める、150年経った今も古びない壮大な「自分探し」の物語だ。

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演出は、2018年平昌冬季オリンピックの開・閉会式の総合演出を担当するヤン ジョンウン。韓国演劇史上初めてイギリスのグローブ座やバービカン・センターに招聘されるなど活躍し、国際的に評価の高い演出家だ。『ペール・ギュント』については2009年に初演、韓国で大きな賞を受賞するなど評価され、13年には来日公演も行ったが、今回「浦井健治のペール・ギュントを見てみたい」というヤンの希望で日韓版の上演が実現した。

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休憩15分を含む約3時間の公演。前半、嘘つきで奔放なペール・ギュントが唯一大切にしてきた存在である母オーセを演じるマルシアが惹きつける。控えめながら、そこに在るだけで世界が安心する母親という存在。「おっかあ、なにか愉快なことを話そうよ!」と笑う息子を、目を細めて眺める包容力と儚さ。一幕の終わりに沸き起こった拍手には、マルシア“おっかあ”への称賛も含まれていただろう。

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もう一人、ペールの心を奪う女性ソールヴェイは趣里が演じる。夢見がちでファンタジーの世界に生きているようなペールと、現実に住むソールヴェイ。彼女は、めくるめく旅をするペールと現実世界とのつなぎとなる。趣里が持つ、どこか人間離れした無垢な雰囲気が、ヤンの描く現実世界とよく合う。

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二人の女性から離れ、ペールは世界各地、上へ下への旅をする。丘、平原、トロール(妖精)王国、モロッコ、砂漠、エジプト・・・まるでジョバンニが銀河鉄道で旅をするように、星の王子さまが星々を旅するように、たくさんの地を訪れ、いろいろな出会いを繰り返す。

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各地で出会うさまざまな人(人以外も)は、浦井以外が一人数役を演じる。トロール王(石橋徹郎)、フウフウ(碓井将大)、やせた男(古河耕史)・・・誰もが個性的でそれぞれが主人公だ。ペールに恋するイングリ(万里紗)や緑衣の女(ユン ダギョン)、邪悪かつ神々しくもある見知らぬ乗客(キム デジン)やボタン作り(辻田暁)らが強烈な存在感でペールに迫る。各地で彼らがペールにさまざまな動きで迫ってゆく。そのムーブメント(ダンス、動き)の不可思議な調和が美しい。

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寓話的な世界を、鍛えられた俳優たちが生身の物語にしている。また彼らの衣装も鮮やかで楽しい。ペールが訪れる場所がそれぞれ個性的で吸引力があるので、旅をするペールを客席から眺めるというより、ペールと同化して共に旅をする気持ちにもなる。

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ペール役の浦井は、舞台にいないことがほぼない。出ずっぱりで、長い語り、歌、動きなどさまざまな方法で観客を楽しませる。大仰にホラを吹き、女性を大胆に口説き、乱痴気騒ぎに身をまかせ、トロール(妖精)王や悪魔のようなものとも対峙する。観客の嗜好によっては目を覆いたくなるような演出にも、笑顔で立ち向かう浦井の姿を見ていると、彼は明るい役が似合うなと思う。あっけらかんとした軽やかさだけではない何かを感じるからだろうか。

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また、青年期から老年期への変化も丁寧に演じられていた。演出のヤンは「浦井が『ビッグ・フェラー』(2014年)で中年男性を演じた時には驚きました」と言っているが、年の移り変わりを嫌味なく表現する。

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そして、国広和毅の音楽が良い。舞台左右にそりたった壁の上はバンドスペースになっており、目まぐるしく曲調の変わる音楽を奏でる。民族音楽、ロック、時には自ら歌い、鮮やかに世界を彩る。そこに美術と照明があいまって、ステージがさまざまな異国へと変貌する。変化する美術は、世田谷パブリックシアターの縦に長い舞台空間を切り取ったり、奥行きを広げたりと、視覚的にも楽しい。劇場の舞台がどこまでも続く地面の連なりのようにも見える。

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日韓文化交流企画ということで、韓国語の台詞もあり、字幕がつく。演出のヤンが選んだ日本人俳優と、信頼を寄せる韓国人俳優の融合が、ボーダーを越えて旅をするペール・ギュントの人生そのもののようだ。

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日韓文化交流企画 世田谷パブリックシアター+兵庫県立芸術文化センター 世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演『ペール・ギュント』は、12月24日(日)まで東京・世田谷パブリックシアターにて、12月30日(土)・12月31日(日)に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールにて上演。また、12月20日(水)には全国各地の映画館でライブ・ビューイングの開催も決定している。

◆『ペール・ギュント』ライブ・ビューイング
~日韓文化交流企画 世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演~
【日時】12月20日(水)18:30開演
※開場時間は映画館によって異なる
【ライブ・ビューイングHP】http://liveviewing.jp/peergynt/
【公式HP】http://setagaya-pt.jp/performances/201712peergynt.html

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※辻田暁の「辻」は「一点しんにょう」の「辻」が正式表記

(撮影/細野晋司)
(取材・文/河野桃子)

(文/エンタステージ編集部)

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