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ペヤンヌマキ×安藤玉恵のブス会*『男女逆転版・痴人の愛』ゲネプロレポート!“逆転”はいつ起こるか分からない

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2017年12月8日(金)より、東京・こまばアゴラ劇場にて、ブス会*『男女逆転版・痴人の愛』が開幕した。この公演は、「ペヤンヌマキ×安藤玉恵 生誕40周年記念ブス会*」と銘打ち、主宰で脚本・演出を手掛けるペヤンヌと女優の安藤が、ともに40歳を迎える節目にタッグを組んだ新シリーズ。

ペヤンヌと20歳の時に出会ったという安藤は、本公演にこんなコメントを寄せている。「20数年で築いた遠慮のない関係を利用して、私は言いたいことを言いました。(中略)まだ激闘の最中ではありますが、今日観ていただくものが、私たちの現地点での、夢のかたちです」そんな安藤に対して、「40歳の今の私の全てを託しました」と語るペヤンヌ。二人の想いの強さ、絆の強さが色濃くにじんだ公演についてレポートする。

『男女逆転版・痴人の愛』舞台写真_02

主人公は、40歳の独身女性の“私=洋子”(安藤)。とある6月の雨の夜、客足の途絶えた馴染みのバーでマスター(山岸門人)と杯を交わしていると、変わった客が訪れる。15歳の少年ナオミ(福本雄樹)だ。

平凡で単調な日々を過ごしていた“私”の前に、突如現れた美しく影のある少年。複雑な家庭環境の影響もあり、自分の居場所を持たない15歳のナオミを美術展へ連れ出し、上質な肉を食べさせ、なんとなくかわいがるところから物語は始まる。

『男女逆転版・痴人の愛』舞台写真_03

ナオミを教育して、立派な男に育てあげることを決めた“私”は、程なくして、「小鳥を飼うような気持ち」で家に招き入れ、同棲を始める。居心地のいい家で、温もりと安心を覚えさせ、勉強を教え、いい大学へ入れて、自分好みの男へと成長させる、はずだった・・・。

しかし、年頃になったナオミは、その美しい顔立ちと摑みどころのない佇まいを駆使して、自由奔放に振る舞うようになる。自堕落な生活、金の無心、女遊び。日に日にエスカレートするナオミの行いに翻弄される“私”。これは、母性? それとも恋愛感情?その狭間で心揺れながらも、“私”はナオミの裏切りを許し、尽くし、身を滅ぼしていく―。

『男女逆転版・痴人の愛』舞台写真_09

ナオミを寵愛する“私”の、母性に溢れた優しさの中には、狂気がしっかりと潜んでいる。愛撫するような目つき、切実な表情。これまでのブス会*の過去作品はもちろん、これまで出演した数多の作品で観る者を魅了してきた女優・安藤の、また一つ新たな魅力を目の当たりにした。女の顔は、こんなにも優しく、危うく、恐ろしく、哀しく移りゆくのか。その様子は滑稽でありながらも、ちょっと他人事では片せない妙な説得力があるのだ。

『男女逆転版・痴人の愛』舞台写真_05

そんな“私”に呼応するように、時の流れと男女の虚しさを体現する福本もまた見事だった。最初は影を持ち、どこか寂しげだったナオミの頼りない背中が、次第に男のそれになっていく様、性を以って、日々傲慢に成長していく様は、見ていて目を背けたくなるような焦りや苛立ちがあり、それでいて、嫌でも目で追ってしまうような独特の引力を持っていた。

『男女逆転版・痴人の愛』舞台写真_06

そして、“私”とは別の角度から、ナオミに翻弄される二人の男を演じ分けたのは山岸。二人に比べて登場シーンこそ少ないものの、いずれもの男の存在感とそこから放たれる静かなる熱は、物語が進むうちに濃度を増していく気がした。

『男女逆転版・痴人の愛』舞台写真_07

男と女の妖しく耽美な世界に添えられたのは、時に重く低く唸り、時に高く叫ぶチェロの生演奏(浅井智佳子)だ。物語の抑揚や台詞の強弱に応えるように、艶やかに奏でられる音色がまた、観ているものの心を穏やかにしない。奏でるだけでなく、一つの役として、物語の大きなうねりに加担する。そんな一面も併せ持つ演出も、見どころの一つだった。

『男女逆転版・痴人の愛』舞台写真_08

男と女は、結局、互いに調教され、影響されゆく運命を避けられないのかもしれない。優位な立場、力を持つ側。その立ち位置はどういう瞬間に“逆転”するかわからないものなのだろう。

女の逞しさ、愛らしさ、醜さ、おかしさ。これまで、あらゆる角度から女の実態なるものをあぶり出してきたブス会*の、ペヤンヌの新境地。ペヤンヌマキ×安藤玉恵だからこその『痴人の愛』がそこにはあった。

『男女逆転版・痴人の愛』舞台写真_04

一人の少年を育て上げるつもりが、一人の少年に翻弄され、“女”を剥き身にされた“私”の行く末とともに、今後のブス会*にこの作品がどういった影響をもたらすのか、ブス会*のファンとして、そんなことを考えながら帰路に着いた。

ブス会*『男女逆転版・痴人の愛』は12月19日(火)まで、東京・こまばアゴラ劇場にて上演。

(取材・文/杉田美枠、撮影/宮川舞子)

(文/エンタステージ編集部)

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