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映画作家・河瀬直美の新演出でプッチーニの名作オペラ『トスカ』全国5都市で上演!稽古場&会見レポート

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2017年10月15日(日)の新潟・りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館を皮切りに、全国5都市で上演されるプッチーニ歌劇『トスカ』<新演出>。演出を手掛けるのは、『萌の朱雀』『殯の森』などの叙情的な心に響く作品でカンヌ映画祭などでも高い評価を得ている映画作家の河瀬直美。一体どんな仕上がりになっているのか、事前に都内で行われた公開舞台稽古と会見の模様をお伝えする。

オペラ『蝶々夫人』『ラ・ボエーム』など、数々の傑作を残したプッチーニの作品の中でも人気演目の一つである『トスカ』。過酷な運命を神に嘆くトスカが歌う「歌に生き、恋に生き」、死を前にしたカヴァラドッシが人生の美しさを歌う「星は光りぬ」など、数々の美しいアリアが有名である。

1800年6月のローマで、美人で情熱的な歌手トスカの恋人で画家のカヴァラドッシは、脱獄した政治犯を匿って逮捕される。トスカを自分のものにしたいと狙っていた警視総監スカルピアはカヴァラドッシの命と引き換えにトスカの身体を要求し・・・。

『トスカ』稽古場会見_2

今回の新演出では、舞台であるローマから、時代不明の日本のとある集落“牢魔”に移し、役名もトスカが「トス香」、カヴァラドッシが「カバラ導師」、スカルピアが「須賀ルピオ」というように、日本風にアレンジされている。その理由を、河瀬は「時代も場所もアバウトにすることで、異国の物語を観ているという感覚ではなく、普遍的な感情の中に、人間が見えてくるのではないか」と述べている。

以下、役名・元の登場人物名と共に出演者を紹介する。トス香(トスカ)役はルイザ・アルブレヒトヴァ、カバラ導師・万里生(カヴァラドッシ)役はアレクサンドル・バディア、須賀ルピオ(スカルピア)役は三戸大久、アンジェロッ太(アンジェロッティ)役は森雅史、堂森(堂守)役は三浦克次、スポレッ太(スポレッタ)役は与儀巧、シャル郎(シャルローネ)役は高橋洋介、看守役は原田勇雅、牧童役は鳥木雅生。

『トスカ』稽古場会見_3

稽古場の中央、張り詰めた表情でテーブルにつくトス香役のアレブレヒトヴァに、須賀ルピオ役の三戸が迫る。真正面で二人を見つめていた川瀬は、三戸に「そこはあまり乗り出さない、反り返らないで。このぐらい」と自らの動作も交えながら、細かい指示を出していく。河瀬の演出を反映しながら、トス香と須賀ルピオのやりとりはヒートアップし、須賀ルピオの手を逃れて出口への数段の階段を駆け上がるトス香。絶望に打ちひしがれたトス香は、舞台中央にひざまずき、悲しみに満ちたアリア「歌に生き、恋に生き」を情感たっぷりに歌い上げた。

『トスカ』稽古場会見_4

オペラ演出の経験はない河瀬が抜擢された理由は「救いようのない悲劇にも『希望』を与えられる作家だと思うから」だという。それに対し、河瀬は「人間は、本質的には動物だから、危険が迫るとそこに自分も刃を向けるのが本能です。それが過剰になると、国家間や民族間の争いが起こったりします。でもそこに、表現や芸術によって、かすかでも一筋の光を見出すことができる。そこを信じてやっていきたいです」と方向性を示す。

『トスカ』稽古場会見_5

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そんな河瀬の演出について、今回指揮を務める広上淳一(東京・石川公演)と大勝秀也(新潟・富山・沖縄公演)は、「違うジャンルで活躍されている監督が、いろんなアイデアを提供してくれるので、我々も新鮮な気持ちで舞台作りをしています。オペラのおもしろさをお客様と共有できる、そんな舞台が出来上がりつつあることがとても嬉しいです」(広上)、「河瀬さんは、テキストにある人間の感情や誰もが持つエゴ、欲望を着実に捉え、表現する天才的な才能をお持ちです。僕らはそれをうまく歌手たちとつなげ、舞台からお客様へ届ける役割を果たしたいです」(大勝)と語った。

『トスカ』稽古場会見_7

『トスカ』稽古場会見_8

トス香役のアルブレヒトヴァと、カバラ導師役のバディアについては「歌も演技も日本人にはないパッションが出ています。それが日本の若い歌手たちにもすごく刺激になっていると思うし、影響されて演奏もパッションのあるものになる。そういう良いケミストリーが起きている現場です」と大勝。

河瀬も、二人について「『トスカ』を読んだ時に思った、トスカのピュアさ、カヴァラドッシの女たらしっぽさは、二人の感じにピッタリなので、そのままでやって欲しいです」と笑顔でコメントした。

『トスカ』稽古場会見_9

また、『トスカ』のスカルピアといえば、オペラの悪役の代名詞のような役だが、今回初めてスカルピア=須賀ルピオを演じる三戸は「ステレオタイプなスカルピア像を、最初の立ち稽古で河瀬さんに壊された感じです。従来とはまったく違うところからのアプローチで、探りながらやっています」と明かした。河瀬と三戸が、どんなスカルピア像を作り上げるのか、楽しみである。

『トスカ』稽古場会見_10

脱獄してカバラ導師に匿われるアンジェロッ太役の森は「僕自身が臆病なもので、アンジェロッ太も生に執着した臆病な役として作っていたんですが、やはりそうではなく、人間性を深め厚みを出していこうと、皆からアドバイスをもらいながらやっています。とても刺激的な、見たことのない『トスカ』になるんじゃないかと思います」。

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堂守(今回の公演では堂森)役の三浦は、スカルピア役とアンジェロッティ役の経験も持つ。今回の河瀬演出について「河瀬さんの映画ファンの方々が、初めてオペラを見に来たり、逆にオペラファンの方々が河瀬さんの映画を見たりと、お客様の相乗効果に期待したいです」と新たな取り組みへの楽しみをのぞかせた。

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スポレッ太役の与儀は、沖縄出身ということで「今回、全国5都市で公演を行いますが、指揮者も替わり、オーケストラも違います。ですから、それぞれの劇場で全然違った公演を見られると思いますので、全国の皆様!めんそーれ、うちなーんかい!沖縄へお越しください!!」と話を締めくくった。

美貌のトス香をめぐる愛憎の三角関係を、美しい音楽とパッションに満ちた演技、そして川瀬直美の新しい演出で贈るプッチーニ歌劇『トスカ』。実際の舞台がどんなものになるのか、本番が楽しみである。

プッチーニ歌劇『トスカ』<新演出>は、以下の日程で上演される。

【新潟公演】10月15日(日) りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館
【東京公演】10月27日(金)・10月29日(日) 東京芸術劇場 コンサートホール
【石川公演】11月8日(水) 金沢歌劇座
【富山公演】11月12日(日) 新川文化ホール 大ホール
【沖縄公演】12月7日(木) 沖縄コンベンションセンター

※河瀬直美の「瀬」は旧字体が正式表記

(取材・文・撮影/月島由美)

(文/エンタステージ編集部)

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