多部未華子、小日向文世らが白井晃演出で“性”も“時”も越える物語『オーランドー』開幕


2017年9月23日(土・祝)に神奈川・KAAT神奈川芸術劇場<ホール>にて、『オーランドー』が開幕した。本作は、英国女流作家ヴァージニア・ウルフの代表作を、アメリカの劇作家サラ・ルールが翻案した作品。今回、KAAT神奈川芸術劇場の芸術監督を務める白井晃の演出で、日本初上演を果たした。事前に行われた公開フォトコールと囲み会見には、白井のほか、出演する多部未華子、小日向文世、戸次重幸、池田鉄洋、野間口徹、小芝風花が登壇。公演に向けて、意気込みなどを語った。

『オーランドー』舞台写真_2

主人公は、16世紀のイングランドに生を受けた貴族のオーランドー。エリザベス女王をはじめ、あらゆる女性を虜にするオーランドーだったが、恋に落ちたロシアの姫君サーシャには手ひどく振られてしまう。傷心のまま、トルコに渡ったオーランドーだったが、その地で30歳を迎えた時、なんと一夜にして艶やかな女性に変身!そして18世紀、19世紀と続いていく物語を、6名の俳優で20役以上を演じながら描いていく。

『オーランドー』舞台写真_3

主演の多部が演じるのは、物語の中心となる美貌の青年オーランドー。まず、ここまでの手応えを聞かれた多部は「がんばりたいと思います。・・・順調なんですかね?」と共演者に確認。池田に「もちろん順調ですよ」と落ち着いた答えをもらうと、ほっとしたように胸を撫で下ろし、「恋は盲目というように、がんばって(恋に)溺れていきたいと思います」と控えめに意気込んだ。

『オーランドー』舞台写真_4

小日向は、オーランドーを見初めるエリザベス女王役。女王らしい豪華絢爛な姿を披露し、「こんな衣裳を着る機会があるとは夢にも思っていなかったので、芝居を続けていてよかったなと!こういう衣裳を着て、顔を真っ白く塗って、(芝居を)やりたいなとずっと思っていたんですよ。望みが叶ったというか(笑)」と顔をほころばせた。

衣裳といえば、6人の役者で20役を演じ分けるということだが、演出の白井は「皆さん、変わり身が大変だと思うんですけどなんですけど、楽しい七変化ぶりを観て楽しんでいただけると思います」とコメント。

『オーランドー』舞台写真_5

すると「私たち3人(戸次、池田、野間口)で何役も何役もやるんですけど、着替える時間がほとんどないんですよ」と池田。会見に登壇時の衣裳が“女性完成形”だと言い、「もうちょっといい衣裳が着たかった・・・。白井さんは、この衣裳で『貴婦人を演じてくれ』と言うんですが、貴婦人になるモチベーションがなかなか上がらず・・・。我々の姿だけを観たら、ホラーが始まるのかと(笑)」とこぼした。

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戸次も「メイクも、これ途中でやめたわけじゃないですからね、狙いですから。こんなムラのある状態で、普通(舞台に)出ませんから(笑)!」と、複雑な乙女(?)心を打ち明ける。

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さらに、野間口が「ご存知の方もいらっしゃると思うんですが、白井さんの稽古は、稽古も長ければ、時間も長いんですよ・・・夏が終わっちゃいました」と遠い目をすると、白井は「そんなこともないですよ。今回はかなりぎゅっと凝縮して・・・」というと、役者陣が「そんなこと、ないこともないですよ(笑)!」とすかさずツッコみ、濃密な稽古で培われてきたコンビネーションを感じさせた。

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また、オーランドーが恋に落ちるロシアの姫君サーシャを演じる小芝には、自身の得意とするスケートをするシーンが、劇中にある。芝居としてスケートをどうやるのかと問われると「床を蹴る演出になっているんですけど・・・説明するのが難しい・・・」と苦笑い。しかし、本当に滑っているかのような優美な表現で、舞台上でその姿を再現しているので、ぜひ注目したいところだ。多部と一緒に滑るシーンもあるそうで「多部さんは、男らしくぎゅっと連れていってくれるので、すごくかっこいいです。サーシャとして、多部さんを誘惑しながら、精一杯がんばりたいと思います」と語った。

最後に、多部は「少人数の舞台ですが、華やかに盛大に、楽しんでいただけるようにがんばりますので、ぜひ観にいらしてください」と呼びかけ、会見を締めくくった。

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フォトコールでは、オーランドー(多部)が成長しながら、エリザベス一世(小日向)をはじめ、ロンドン中の貴婦人(戸次重幸、池田鉄洋、野間口徹)を虜にしながらも、1608年にロンドンを襲った大寒波と共に現れたサーシャ(小芝)と恋に落ちるシーンまでが公開された。

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多部は、かわいらしくも凛々しいオーランドーを好演。物語の後半、女性になったオーランドーとして、どんな姿を見せてくれるのかが楽しみだ。小日向は、豪華絢爛な衣裳が映える威厳を見せつつ、恋に落ちた女性の心情を丁寧に表現。

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そして、ストーリーテラーのような役割で、戸次、池田、野間口は、年代も性別も異なる人物たち(時には人ではないものまで)を次々と演じ分けながら物語を進めていく。池田が言っていたように、舞台袖から出たり引っ込んだりと大忙しの3人だが、それがまた演劇的な楽しさを感じさせる。3人のほかにも、舞台上では林正樹、相川瞳、鈴木広志が奏でる生演奏が、物語に寄り添い、時にその一部となりながら、作品を彩る。

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さらに、サーシャとして、雪の精のような可憐さを見せる小芝が、多部を演じるオーランドーの運命をどう振り回していくのか。舞台の上には、性も時も越える物語の結末を、ぜひ劇場で・・・。

KAAT×パルコ プロデュース公演『オーランドー』は、10月9日(月・祝)までKAAT神奈川芸術劇場<ホール>にて上演。その後、東京、長野、兵庫を巡演する。日程の詳細は、以下のとおり。

【神奈川公演】9月23日(土・祝)~10月9日(月・祝) KAAT神奈川芸術劇場<ホール>
【東京公演】10月26日(木)~10月29日(日) 新国立劇場 中劇場
【長野公演】10月18日(水) まつもと市民芸術館 主ホール
【兵庫公演】10月21日(土)・10月22日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

『オーランドー』舞台写真_14

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

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