撮り下ろし写真掲載!ミュージカル『夢から醒めた夢』ゲネプロレポート「よりシンプルに、より深く」


6月9日(金)より自由劇場にて上演中のミュージカル『夢から醒めた夢』。劇団四季のオリジナル作品として長らく愛されてきた本作が、浅利慶太の演出により4年振りに甦った。初日に先駆けプレス・関係者向けに公開されたゲネプロ(最終舞台稽古)の模様をレポートしたい。

ミュージカル『夢から醒めた夢』ゲネプロレポート_2

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好奇心旺盛な少女・ピコは、不思議な空気をまとう夢の配達人の案内によってマコという名の少女に出会う。マコは交通事故ですでに死んでおり、大好きな母親に別れを告げるため、1日だけ自分と入れ替わって欲しいとピコに頼む。彼女の願いを受け容れたピコは、あの世とこの世との境界の場所・・・霊界空港でさまざまな人々と出会い、生きることの意味を心に刻んでいく――。

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四宮なぎさは明るく前向きなピコを好演。『ライオンキング』ヤングナラや福岡でのアイドル活動の経験を活かし、生命力に満ち溢れたピコを魅力的に構築していた。ピコは観客から愛されることが非常に大事な役柄なのだが、彼女のチャーミングな笑顔や自らを犠牲にして他者の幸福を願う懸命さを見ていると、心の柔らかい部分が刺激されるのを実感する。

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マコを演じる堤梨菜は美しいソプラノを武器に可憐な演技を見せる。ピコに1日だけもらった命を得た瞬間、頬がバラ色に染まる様子が印象的だった。

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また、デビル役の下村青は夢の配達人、マコの母を演じる野村玲子はマコ役の経験者。老夫婦を演じる山口嘉三、斉藤昭子らとともに、ベテラン勢が若い俳優陣を支えているのが良く分かる。特に野村の娘を愛するあまり、気持ちが揺れてしまう母親の姿は痛いほど胸に迫って来た。

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今回は多くの衣裳が初演時のデザインに戻され、振付は謝珠栄が担当。冒頭の遊園地の場面をはじめ、ショーアップ的な要素が薄れ、全体的に登場人物の心情に強いフォーカスを当てる演出にシフトしたように感じた。1980年代から上演されていることもあり、劇中のいくつかのポイントが時代とともに変わっていくのも本作の特徴だが(部長の場面やメソの自死の原因、名簿からコンピューターへの変更など)、毎回、ひねり技が繰り出される「マコを捜せ」のシーンは今回もくすっと笑えるラインナップ。ぜひ注目していただきたい。

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『夢から醒めた夢』の物語はシンプルで、演出的にも昨今流行りの大きな仕掛けがあるわけではない。が、子どもから大人までどの世代が観てもそれぞれに“刺さる”部分があり、いつの時代でも成立する普遍的な作品なのだと今回改めて感じた(10代の頃にはビクともしなかった老夫婦の出会いのシーンで、今は毎回涙腺が崩壊する筆者である)。自分の将来に希望を見出せない若い世代から、日々の生活に疲れた大人たちまで、あらゆる年代の観客たちに“忘れかけていた優しさ”を届けてくれるミュージカル作品。ぜひ劇場でピコとともに夢の世界にひたって欲しい。

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なお、現在発表されているメインキャストは以下の通り(変更の場合もあり)。

ピコ 四宮なぎさ
マコ 堤梨菜
マコの母 野村玲子
メソ 松本悠作
デビル 下村青
エンジェル 桑島ダンテ
ヤクザ 和田一詩
暴走族 野島直人
部長 宮川智之
老人 山口嘉三
老婦人 斉藤昭子
夢の配達人 近藤真行

<男性アンサンブル>
鈴木凌平
関廣貴
高木裕和
田極翼
棚橋麗音
星潤

<女性アンサンブル>
川畑幸香
熊田愛里
権守美加子
豊永晴加
水野瑞葵
吉田藍
(五十音順)

浅利演出事務所 ミュージカル『夢から醒めた夢』は、6月22日(木)まで自由劇場(東京・浜松町)にて上演中。前売りチケットは完売だが、毎公演、若干枚数の当日券は出るとのこと。

(取材・文/上村由紀子)
(撮影/エンタステージ編集部)

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