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BTLive『エンターテイナー』×新国立劇場『怒りをこめてふり返れ』翻訳家・水谷八也トークショーレポート

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BTLive『エンターテイナー』×新国立劇場『怒りをこめてふり返れ』翻訳家・水谷八也トークショー

世界で活躍する俳優・監督のケネス・ブラナーが率いるケネス・ブラナー・シアター・カンパニーによるロンドン・ギャリック劇場での上演舞台3作品を映画館で楽しむことができる「ブラナー・シアター・ライブ(以下、BTLive)」。その演劇の背景を深堀りし、作品をより楽しめるトークショーイベント「BTLive『エンターテイナー』×新国立劇場『怒りをこめてふり返れ』~翻訳家水谷八也さん<ジョン・オズボーン>を語る~」が、1月7日(土)東京・シネ・リーブル池袋で開催された。

2016年11月から日本で劇場公開され、再映を望むファンからの多くの声に応えて、2016年12月よりアンコール上映を実施している「BTLive」。ラインナップは、2016年のローレンス・オリヴィエ賞最優秀助演女優賞をジュディ・デンチにもたらした『冬物語』や、トニー賞、オリヴィエ賞、エミー賞を受賞した監督ロブ・アシュフォードがジョン・オズボーンの戯曲を演出、ケネス・ブラナー主演の『エンターテイナー』、ケネス・ブラナー監督の実写映画『シンデレラ』で主役を演じたリリー・ジェームズとリチャード・マッデンが再び恋人役を熱演した『ロミオとジュリエット』など注目作ばかり。

BTLive『エンターテイナー』×新国立劇場『怒りをこめてふり返れ』翻訳家・水谷八也トークショー_2

1月7日(土)の『エンターテイナー』日本ファイナル上映後、本作を手がけた劇作家ジョン・オズボーンによる舞台『怒りをこめてふり返れ』(2017年7月東京・新国立劇場にて上演予定)の翻訳を担当している翻訳家・水谷八也をゲストに、演劇ライター・大堀久美子を進行役に迎えてトークが開始。

第二次大戦後のイギリスを舞台に、古びたミュージックホールであらわにされる主人公の芸人アーチー・ライスと、その一家の興味深い人間関係を描いたドラマである『エンターテイナー』。まず、今回の「BTLive」で上演される他2作品がシェイクスピア作品であり、本作はテイストがかなり違うことについて大堀から話がされると、水谷は「初演は1957年。1956年の第二次中東戦争でイギリスが失敗し、イギリスがダメになっていく時代。その時代にオズボーンが書いたわけで、そのイギリスが大きく出ているんです。ケネスが2016年にこの作品を選んだのも、関わりがあると思う。2016年にイギリスがEUから離脱を決めたわけですが、イギリスがこれからどうなっていくのかという分からなさに、1950年代半ばの斜陽のイギリスと似た空気があったんだと思う」と解説。さらに、水谷は「アーチーはある意味イギリスそのもの。アーチーが娘のジーンに『俺の目を見ろ、目の中が死んでいる』と言いますが、そこにイギリスの姿を投影していると考えられる」と、ミュージックホール文化の衰退と、アーチーの芸人としての終焉が、時代と重なって描かれていることについて語った。

BTLive『エンターテイナー』

そして、ジョン・オズボーンの背景について、水谷は「イギリスには階級が明確にあって、彼は労働者階級の出身。それまでのイギリス演劇界の描く世界は、だいたい上流階級。オズボーンはそういう世界とは全く無縁の人で、物が言いたいんだけど、言ったとしても世の中に響かないような、そういう鬱屈とした状態があって、その背景から出てきた感じがしますね」と説明。続いて、「『エンターテイナー』の前に書かれた『怒りをこめてふり返れ』では、労働者階級のジミーと中産階級のアリソンという夫婦がいるんですけど、ジミーがずっとアリソンに怒りをぶつけるんですよ。そういう芝居がその前までは全く無かった。それはオズボーンが、労働者階級の背景を背負っていたからだと思いますね。彼は複雑な人間で、客席や舞台との関係や、民衆の視点というものに関心を寄せていたし、古い物を壊そうとしていたんだけど、ミュージックホールのような古い物の中に自分が信頼できる物があるという、彼の中に2つの相反する方向性が共存しているんですよ」と、オズボーンについて分析した。

BTLive『エンターテイナー』×新国立劇場『怒りをこめてふり返れ』翻訳家・水谷八也トークショー_3

さらに『エンターテイナー』の裏話として、水谷から「1956年の『怒りをこめてふり返れ』初演を、ローレンス・オリヴィエが観に来ていたんです。1回目では作品をよく理解できなかった彼ですけど、アーサー・ミラーとその妻のマリリン・モンローに誘われて再び観に行ったんです。そこで、ミラーも褒めていたので、オリヴィエもその気になって、楽屋でオズボーンに自分のために書いて欲しいと言ったんですよ。そこで、オズボーンが1幕を書いていた『エンターテイナー』を渡したんです」というエピソードも飛び出し、盛りだくさんのトークショーとなった。

世界最高峰の才能が集結した本格舞台を日本に居ながら映画館で体験できる「BTLive」。演劇ファンだけでなく、映画ファンにもぜひ観て欲しい企画だ。

「BTLive」および、新国立劇場『怒りをこめてふり返れ』に関する情報は以下のとおり。

◆「BTLive」 今後のアンコール上映劇場及び上映日
シネ・リーブル池袋
『冬物語』:2016年12月24日(土)~2016年12月30日(金)
『エンターテイナー』:2016年12月31日(土)、2017年1月2日(月)~1月7日(土)
『ロミオとジュリエット』:2017年1月7日(土)~2017年1月13日(金)

YEBISU GARDEN CINEMA
2017年2月25日(土)~2017年3月10日(金)に『冬物語』と『ロミオとジュリエット』を上映

アミューあつぎ映画.comシネマ
『ロミオとジュリエット』:2016年12月31日(土)~2017年1月13日(金)

名演小劇場
『冬物語』:2017年2月4日(土)~2017年2月10日(金)
『ロミオとジュリエット』:2017年2月18日(日)~2017年2月24日(金)

静岡シネギャラリー
『冬物語』:2017年2月20日(月)~2月25日(土) 連日13:00
『ロミオとジュリエット』:2017年2月26日(日)~2017年3月3日(金)連日13:00

◆「BTLive」ラインナップ作品基本情報
『冬物語』
作:ウィリアム・シェイクスピア 出演:ジュディ・デンチ、ケネス・ブラナー
演出:ロブ・アシュフォード、ケネス・ブラナー
ストーリー:
時代を超えて親しまれるシェイクスピアによる強迫観念、贖罪にまつわる悲喜劇を、トニー賞とエミー賞の受賞振付家ロブ・アシュフォードとアカデミー賞ノミネート俳優ケネス・ブラナーが新たな息吹を吹き込んだ。アカデミー賞助演女優賞の受賞歴をもつジュディ・デンチがポーリーナを演じ、ケネス・ブラナーが嫉妬と怒り、そして贖罪に苦しむリオンティーズを演じている。

『ロミオとジュリエット』
作:ウィリアム・シェイクスピア 出演:リリー・ジェームズ、リチャード・マッデン
演出:ケネス・ブラナー 演出・振付:ロブ・アシュフォード
ストーリー:
大ヒット映画『シンデレラ』で主役シンデレラを演じたリリー・ジェームズと王子を演じたリチャード・マッデンが、世界で最も有名な悲恋ドラマで再び共演。トニー賞受賞俳優デレク・ジャコビがロミオの友人マキューシオを演じ、本格的な舞台作として脇を固めている。

『エンターテイナー』
作:ジョン・オズボーン
出演:ケネス・ブラナー
演出:ロブ・アシュフォード 振付:クリス・ベイリー
ストーリー:
第二次大戦後のイギリスを舞台に、古びたミュージックホールで露わにされるライス一家の人間関係を描いたドラマ。ケネス・ブラナーはアーチー・ライスを演じ、ロブ・アシュフォードが演出する。

◆新国立劇場『怒りをこめてふり返れ』公演情報
作:ジョン・オズボーン 翻訳:水谷八也 演出:千葉哲也
出演:中村倫也 中村ゆり 浅利陽介 三津谷葉子 真那胡敬二
ストーリー:
英国中部のある大都会の屋根裏部屋。貧しい下層階級に生まれたジミーは、妻アリソンと、同じ下層階級出身の友人クリフとの奇妙な三人の共同生活を続けていた。ジミーは、政治、宗教、あらゆる旧世代の価値観や秩序に激しい怒りをぶちまけ、さらに搾取により裕福で欺瞞に満ちた生活を送る憎むべき中産階級出身の妻アリソンにいらだち罵倒する。善良なクリフはジミーに怒りの矛先を向けられ憔悴したアリソンをやさしくなぐさめるのだった。
ある日、アリソンの友人ヘレナが部屋を訪れる。窮状を見かねたヘレナは、アリソンの父親レッドファーン大佐に連絡を取り、説得されたアリソンは実家に戻るのだが・・・。

公演日程:2017年7月12日(水)~7月30日(日)
会場:新国立劇場 小劇場

(取材・文・撮影/櫻井宏充)

(文/エンタステージ編集部)

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