松居大悟が挑む『イヌの日』稽古場レポート!尾上寛之、玉置玲央らが熱いセッションを繰り広げる


長塚圭史率いる阿佐ヶ谷スパイダースが2000年に初演し、2006年に再演した『イヌの日』が、2016年8月に約10年ぶりに上演される。今回の演出を手掛けるのは、劇団ゴジゲン主宰で、映画『アズミ・ハルコは行方不明』(12月公開)やクリープハイプのMV監督を務めるなど映像作品にも活躍の場を広げる松居大悟。稽古場が始まって約2週間。松居と俳優たちが熱いセッションを繰り広げる稽古場の模様をレポートする。

ある男が小学校時代の同級生たちを15年間もの長きに渡り、防空壕に監禁する・・・というショッキングな設定で描かれた本作。今回の台本は、長塚が書いた初演と再演の台本を合わせ、松居が新たに再構築したものとなっている。この日は、物語のクライマックスとなる場面の稽古が行われていた。

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松居が見つめる中、一通り場面の通しが行われていく。稽古場には独特な雰囲気が充満しているが、松居が「ハイ」と声をかけるとそれぞれの表情がふっとほぐれ、危ういバランスを保っていた空気が緩む。そして自然と松居の演出卓の前に、円陣を組むように役者たちが集まってくる。

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「最後の台詞、もうちょっと(言うのを)待ってみようか」。台本に目を落とし、台詞や動きを一つ一つ確認していく松居。その間、役者たちは今演じたシーンを振り返り、それぞれの感触や抱いた印象について言葉を交わしていく。尾上寛之演じる中津という役について、玉置玲央は「こいつ、怖いよなあ・・・バグってるよ」と率直な感想を漏らす。作品の中の人物たちが、なぜここにいて、なぜこのような行動を取り、なぜこう言ったのか。行間を深く深く掘り下げていく作業が始まった。

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「この二人は久しぶりに会ったのかな?」「いや、ここまでの間にも会ってたと思う。つるまざるを得なかったんじゃないかな」「お互いが手放せない存在になってるんじゃない?」・・・誰かが投げかけた疑問に、自身の役について思うこと、演じていて感じたことを、共通認識として持てるよう言葉にしていく。

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その途中で、松居が「これ、(お酒を)飲んだ後かな?」と新たなシチュエーションを提示すると、玉置がすかさず「俺は、行くぞって誘われてついて来ただけかと勝手に思ってた」と持っていたイメージを伝える。「時間は?日にちでもいいんだけど」などと重ねられる松居の問いは、さらにその状況の輪郭に明確さを求める。観客に伝わるかどうか分からないようなところまで細かく続くその追及は、まるで発掘作業のようだ。

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玉置演じる広瀬という青年に対して「広瀬さんって、暗くないですか?」と問いかける台詞があるが、その“暗い”という表現に対しても、いつもなのか?この時だけ暗いのか?一人の人間として、その空間にどうあるのかをディスカッションしながら突き詰めていく。話し合いをまとめ、松居が「じゃあ、これでもう一回やってみようか?」と、改めて声をかけ、再び場面を通すと、さっき観たものとは台詞も行動も重心を変えた人物たちが、芝居の中で動き出した。

稽古再開前、玉置が「お客さんはどう思うんだろうね?」と呟いた。本番の幕が開くまで、彼らは考え続け、探り続け、物語を深化させ続けるのだろう。新たな『イヌの日』の誕生が待ち遠しい。

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エンタステージではこの日、玉置玲央、大窪人衛、目次立樹の3人にインタビューを敢行。柿喰う客、イキウメ、ゴジゲンというそれぞれ劇団に所属する彼らが、劇団の外で感じることや、今回の作品にかける思いなどを聞いた。後日の掲載をお楽しみに。

『イヌの日』は、8月10日(水)から8月21日(日)まで東京 ザ・スズナリにて上演される。

【スポット動画】https://youtu.be/aplCLIpLEps

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