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劇団四季『エクウス(馬)』観劇レポート!~少年はなぜ、6頭の馬の目を突き刺したのか~

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劇団四季『エクウス(馬)』観劇レポート

【撮影:上原タカシ】

6月26日(日)に自由劇場(東京・浜松町)で開幕した舞台『エクウス(馬)』。劇団四季が1975年の初演以来「現代を告発する」というテーマのもとに、斬新な演劇的手法を用いて上演し続けてきた濃密な会話劇だ。

精神分析医として様々な患者たちと接するダイサート(味方隆司)のもとに、旧知の家裁判事・ヘスター(中野今日子)がひとりの少年を連れてくる。少年の名はアラン(横井漱)。17歳のアランはアルバイト先の乗馬クラブの厩舎で、6頭の馬の目を次々に刺すという事件を起こしたのだ。

劇団四季『エクウス(馬)』観劇レポート_2

【撮影:上原タカシ】

ダイサートはアランと向き合い、彼がなぜ事件を起こしたのか探ろうとするのだが、次第に自らが抱える問題も露呈し、何が「正常」で何が「狂気」なのか混乱していく。そしてとうとう、頑なに心を閉ざしていたアランが事件の夜のことを語り出し・・・。

自由劇場の舞台上に置かれた法廷のような装置とそれを取り巻く客席(=ステージシート)。ステージシート上には実際に観客が座り、出演者も自分の場面以外は席に着いた状態でシーンを見守る。

ダイサート役の味方は、精神分析医として、また家庭内に不和を抱えたひとりの人間として揺れ動く感情を、ビビッドになり過ぎない表現で的確に魅せる。アランの心の闇を引きずり出そうとすればするほど、自らの闇も露わになっていく様が心に刺さった。

劇団四季『エクウス(馬)』観劇レポート_3

【撮影:上原タカシ】

アランを演じる横井は心を閉ざした状態から、次第にダイサートに救いと新たな父親像を求め、反発しながらも彼に寄り添っていく変化を繊細、そして等身大に演じる。ナジェットとの草原の場面で見せる鍛えられた肉体の美しさや、体のキレは圧巻だ。

また“正常な生活”の象徴でもあるジル役の松山育恵は生命力溢れる演技でアランとの対比をくっきり打ち出し、作品に鮮やかなアクセントを与えていた。

筆者が初めて本作を観劇したのはアランの年齢より年下だった頃。そのため、当時は強権的な父親や、ある種の権威主義者である母親に抑圧されて救いを求める少年の姿に共感を覚えたのだが、時を経て再び『エクウス(馬)』の世界に触れた今回は、ダイサートを始め、アランを取り巻く大人たちの葛藤がより強く胸に響いた。

自らの欲望を厳しく育てた息子に見られてしまう父、夫を尊敬できず、宗教に傾倒する母、そしてアランと向き合えば向き合うほど、自らが抱える問題が浮き彫りになり、一体何が正常で何が狂気なのか混乱し悩む精神分析医・・・大人たちもまた、心に闇を抱えたひとりの人間なのだ。

劇団四季『エクウス(馬)』観劇レポート_4

【撮影:上原タカシ】

すべてを絞り出し、赤子のように眠るアランの姿を見て、ダイサートは自分が彼にしたこと、そしてこれからしようとしていることが本当に正しいのかと激しく逡巡する。その姿に私たちは自らの姿を重ね、空(くう)を見つめる。

劇団四季と言えば、華やかなミュージカルをロングラン公演するカンパニーという印象が強いかもしれないが、実は1953年の劇団創立以来、数多くのストレートプレイを実直に上演し続けている劇団でもある。自由劇場という濃密な空間で繰り広げられる骨太な人間ドラマをぜひ目撃して欲しい。

劇団四季『エクウス(馬)』は自由劇場(浜松町)にて7月10日(日)まで上演中。

(取材・文/上村由紀子)

(文/エンタステージ編集部)

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