残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』観劇レポート、再演され続ける魅力に迫る!


2015年12月18日(金)より、東京・AiiA 2.5 Theater Tokyoにて上演が始まった残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』。漫画家・古屋兎丸の最高傑作のひとつと呼ばれている原作は、コミック発売から今年で10周年を迎えた。今冬には、古川雄輝主演で映画化も決定している。舞台は、2012年、2013年と立て続けに上演され、全公演即完売となった。あれから2年・・・今度はまったく新しい歌ありダンスパフォーマンスありの“残酷歌劇”として、装い新たに蘇った。

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舞台は、工場からの排気と油で黒く覆われた街・螢光町の片隅にある廃墟。そこは、学生帽・詰襟の学生服に身を包んだ少年たち・・・「光クラブ」の秘密基地だ。

9人の少年たちの帝王として君臨するのは、ゼラ(中村倫也)。光クラブには途中から入ったにも関わらず、チェスの才能と高いカリスマ性で絶対的なリーダーとなっていく。その崇高な目的は、“甘美なる機械(マシン)”を作り、「自分の命運を握る美しい少女」を見つけること。

残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』_2

そのゼラを崇拝するのが、ジャイボ(吉川純広)とニコ(尾上寛之)。ジャイボは、ゼラに対して異常なほど執着し、ニコは強烈な忠誠心を燃やす。そして少年たちはついに甘美なるマシン「ライチ」を完成させる。感情を持たないライチ(皇希)は、ゼラに言われるがままに「美しいもの」=少女をさらってくるようになる。

しかし、もともとリーダーとして「光クラブ」を立ち上げたタミヤ(玉置玲央)は、残酷なゼラのやり方に疑問を感じるようになっていた。誰もがゼラを崇めるなか、友人カネダ(赤澤燈)、ダフ(味方良介)と変わらぬ友情を誓い合う。自分に反抗するようなタミヤの様子を知り、ゼラは暴力でタミヤをねじ伏せようとする・・・。こうして『ライチ☆光クラブ』の見どころでもある、ゼラとタミヤの二人の対立が浮き彫りになっていく。

残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』ゲネプロ_3

絶対王者ゼラに対し、玉置の演じるタミヤは、とにかくまっすぐだ。おかしいことは「おかしい」、嫌なことは「嫌だ」と、迷いながらもハッキリと口にする。客席の奥までよく通る声が、その実直さを感じさせる。相反するように、中村演じるゼラはとても屈折している。物語前半は凛とした美しい「少年たちの帝王」だが、後半になるにつれ、怒りや焦りで激しく狂っていく。前半とは別人のようなゼラ。この落差を見せるのが、中村の真骨頂だ。

他の少年たちも皆キャラクターが立っていて、物語の脇を固めている。コミカルなヤコブ(加藤諒)、オネエな雷蔵(池岡亮介)、女性が演じたデンタク(BOW・東京ゲゲゲイ)など実に個性豊かである。

残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』ゲネプロ_5

そして物語のもうひとつの見どころが、攫われてきた少女カノン(七木奏音)とマシン「ライチ」の恋だ。七木奏音は、誰もが恋する孤高のヒロインを演じた。18歳ながら堂々とした存在感で、少年たちを虜にしていく。カノンと心の交流を図るロボット・ライチを、ダンススキルの高い皇希が演じたことにより、過去にライチを演じた島田久作、オレノグラフィティ(劇団鹿殺し)とはまったく違った切ないライチが誕生した。

全編を通して、河原雅彦演出が冴え渡る。扇情的な照明・音響効果、東京ゲゲゲイ振付によるキレのいいダンスと、息もつかせぬ怒濤の展開。そんな派手な舞台と反するような物悲しい歌。残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』はただ耽美なだけではなく、14歳の少年たちの”醜い大人になりたくない”という葛藤が、よく表れているエンターテインメント作品だ。

残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』ゲネプロ_4

残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』は、12月27日(日)まで東京・AiiA 2.5 Theater Tokyoにて上演。大千秋楽公演は、全国の映画館でライブ・ビューイング上映される。

(C)古屋兎丸/ライチ☆光クラブ プロジェクト 2015

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