伝説の詐欺師集団、再集結!矢崎広主演『黒いハンカチーフ』ゲネプロレポート


2015年10月1日(木)から、東京・新国立劇場中劇場にて『黒いハンカチーフ』が幕を開けた。本作は、2001年に劇団M.O.P(マキノ・オフィス・プロジェクト)にて初上演されたマキノノゾミ脚本の人気作。元々は劇団のカラーを色濃く打ち出した作品だったが、今回の公演では演出を河原雅彦が手がけ、2015年版としてリメイクしている。マキノが“和製スティング”を目指して書いたというこの作品から、初回公演に先駆けて行われた公開舞台稽古の模様をお届けしよう。

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『黒いハンカチーフ』公開舞台稽古

舞台の上には、ひとつの街を思わせるレトロなセットが展開。高度成長期の日本の姿を彷彿させる。話の舞台は、昭和32年。翌年から実施される売春防止法の施行延長を巡り、いわゆる赤線業者たちから政治家への賄賂が飛び交っていた。佐登子(いしのようこ)が営む喫茶「ノアール」に現れたのは、近くで診療所を営む医師・日根(矢崎広)。店を訪れては昼寝ばかりしているため、“ヒルネ先生”と呼ばれている。

『黒いハンカチーフ』公開舞台稽古

日根がいつものように昼寝をしていると、関東菊壱組のチンピラ・ポン引きの宮下(浅利陽介)が浮かれた様子で店を訪れる。菊壱組から政界へ渡った賄賂の証拠を偶然手に入れたというのだ。それをネタに大物政治家を強請り、自分の代理として娼婦の夢子(武藤晃子)を取引現場に向かわせるが、その道中で夢子は交通事故により死んでしまう。

『黒いハンカチーフ』公開舞台稽古

しかし、その死は事故ではなかった。宮下と娼婦仲間の女たちは、夢子の仇を討ちたいと日根に相談を持ちかける。実は日根の父は、戦前の天才詐欺師“フジケン”だった。詐欺稼業を嫌って医師となった日根だったが、宮下らの必死の頼みを断り切れず、「新聞に三行広告を載せろ」と言う。

「黒いハンカチーフ拾った。落とし主の連絡を乞う」

『黒いハンカチーフ』公開舞台稽古

それはかつて、伝説の詐欺師“フジケン”が大きなヤマを仕掛ける時だけに使っていた暗号広告だった。暗躍する関東菊壱組組長・牛島(伊藤正之)や大物政治家・海老沢修二(鳥肌実)、20年前に追いかけていた詐欺グループの暗号を見つけ色めき立つ定年間際の刑事・銭田(三上市朗)…。登場人物たちの思惑入り乱れ、二転三転する世紀の詐欺事件が遂行される―。

『黒いハンカチーフ』公開舞台稽古

矢崎演じる日根は、昼寝ばかりしている怠惰な姿を見せながらも、医師として命を尊ぶ優しさを垣間見せる。それは、詐欺師ながら一本筋の通った男だったという父“フジケン”の姿を思わせる。また、初演で日根を演じていた三上が、同じ作品で別役を演じているという、以前観たことがある人も違った視点で楽しめるようになっている。鳥肌の怪演ぶりや、1幕と2幕で全く違う役として登場する吉田メタル、桑野晃輔の豹変ぶりも見どころだ。

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詐欺という犯罪を描いているが、根底に流れる人情劇が心地よい。果たして、この結末を予想できた人はいるだろうか。格好良くて滑稽な男たちと物悲しくて逞しい女たちの織りなす物語から、最後まで目が離せない。『黒いハンカチーフ』は、2015年10月1日(木)から10月4日(日)まで、東京・新国立劇場 中劇場にて上演中。

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