「戦い」と「愛」が渦巻く物語『トロイラスとクレシダ』キャスト初日コメント、到着


2015年7月15日(水)、世田谷パブリックシアター・文学座・兵庫県立芸術文化センターによる共同制作作品、『トロイラスとクレシダ』が東京・世田谷パブリックシアターにて初日を迎えた。本作は、歴史上名高いトロイ戦争という男たちの「戦い」と、駆け引きや裏切りが渦巻く男女の「愛」の二本柱からなる物語だ。

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せり出した舞台が客席と地続きなる劇場内では、登場人物たちは客席の間を縦横に動きまわり、我々観客に対しても語りかける。さらに打楽器の音色があらゆる場面にぴたりと寄り添い、ときに恋人たちの胸の高鳴りを増幅させ、ときに戦場で激突する将軍たちの格闘を鼓舞しながら、舞台と客席を包み込み臨場感を何倍にも高めていく。本作の登場人物たちは、トロイ軍はカーキ色、ギリシャ軍は迷彩柄という現代の戦闘服にも通じる衣裳に身を包んでいる。紀元前のトロイ戦争の物語でありながら、舞台がヨーロッパとアジアの境目であるという点も相まって、2000年が経過した現代の世界情勢をも連想させるビジュアルとなっている。

初日公演を終えた、現在の心境について、浦井健治ほか出演者からメッセージが届いたので紹介しよう。

◆浦井健治(トロイラス/トロイ王の末息子)キャスト全員で鵜山さんの演出を信頼し、稽古してきた毎日でした。一致団結してやってきたチームワークがお客様にメッセージとして届き、想像以上の反応をキャッチボールのように返していただけたことに、役者もスタッフも高揚しています。お客様に必ず何かしらの満足していただけるプレゼントができるように、メンバー誰一人欠けることなく千秋楽までやり切りたいです。

◆ソニン(クレシダ/トロイの神官の娘)私たちは鵜山さんの演出のもと、カンパニーとしてこの作品のメッセージを発信していますが、最終的にはその日のお客様がどう捉えるかによって、この作品の「色」が決まるのだと感じました。この作品ほどそのように感じたことはありません。毎日初日を迎える気持ちでゼロから始めて、その日のお客様と対峙し、この作品を作り上げていきたいと思います。

『トロイラスとクレシダ』

◆岡本健一(ダイアミディーズ/ギリシャの将軍)全身全霊で稽古をやってきたので、お客様に良い反応をいただけて嬉しいです。登場人物の1人1人が主役になりうる、つかみどころがたくさんある作品で、作品の核となるものはお客様それぞれが決めるものだと思います。この作品の終わりがないというところが人生とも似ているなとも感じました。観るたび琴線に触れる部分が違う作品に仕上がっていると思うので、千秋楽まで非常に楽しみです。

◆渡辺徹(パンダラス/クレシダの叔父)以前から、文学座の先輩方にも最終的な演出家はお客様だと言われてきましたが、初日を迎えて最後のエネルギーが注入されたという気がします。改めて作品の面白さを実感しています。お客様に心から楽しんでいただき、最後に何かが残るという演劇の理想的な形だと思います。良い作品、そして良いお客様にめぐりあえて感謝しています。

『トロイラスとクレシダ』

◆今井朋彦(ユリシーズ/ギリシャの将軍)今回ほど、お客様が僕たちの予想を裏切る反応をしてくださる芝居はそれほどありません。字面で読んでいては見過ごすような部分までしっかりと理解してくださったことに感動しました。鵜山さんは台詞ひとつひとつに含まれているものを追求する大切さを役者に思い出させてくださる演出家です。今回のような複雑な作品では特に、そこまでしないといけないということを、演出の中で伝えてくださいました。

◆横田栄司(アキリーズ/ギリシャの将軍)「稽古は裏切らない」と感じました。鵜山さんの演出のもと粘り強く稽古を積み上げてこられたのは誇りですし、初日ではその積み重ねがまだ小さいながらも実ったと思います。アキリーズという破天荒な人物を演じるにあたり「舞台に出たからには爪痕を残して来い」という文学座の伝統的な教えの意味が今ようやく分かってきました。これから他の役との掛け算でもっともっと良くしていきたいです。

『トロイラスとクレシダ』

◆吉田栄作(ヘクター/トロイの王の長男)ある種、難解なシェイクスピア作品の中から鵜山さんが今に通じるメッセージを拾い上げてくださったと思います。舞台美術や照明、音楽の力も絶大で、様々なシチュエーションを成り立たせてくださいましたので、役者は自分の役割をしっかりと果たせばよいという信頼がありました。この初日の成功は、総合演出の勝利に他ならないと思います。

『トロイラスとクレシダ』

世田谷パブリックシアター + 文学座 + 兵庫県立芸術文化センター『トロイラスとクレシダ』は、2015年8月2日(日)まで、世田谷パブリックシアターにて上演、その後、石川・兵庫・岐阜・滋賀にて上演される。

Photo:世田谷パブリックシアター+文学座+兵庫県立芸術文化センター『トロイラスとクレシダ』
撮影:細野晋司

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