白井晃演出『ペール・ギュント』開幕。70年の生涯を内博貴が熱演!


2015年7月11日(土)、内博貴主演『ペール・ギュント』がKAAT神奈川芸術劇場にて幕を開けた。「近代演劇の父」ヘンリック・イプセンの傑作で、世界を放浪し己を探し続けた主人公ペールを喜劇的に描いた一大叙情作品だ。普遍的かつ新鮮な作品を世に送り出し続ける演出家・白井晃が、生演奏やダンスをもちいて壮大な舞台を創り上げる。

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本作で、内はペールの若い頃から亡くなるまでの50年を演じる。初日前の記者会見では「今までの作品の中で一番難しいと言っていい。僕にとってチャレンジの作品です」と力を込めた。

母親役の前田美波里は「舞台を通して、内くんの最高の魅力がでています。若い頃の可愛さや、青年期のいい雰囲気、年老いてからなどを演じ分けています」と絶賛。演出の白井も「一人の長い人生を演じるのは、俳優として難しいことだと思う。けれど内くんは、いい感じに嘘くさくなく老けてくれています」と内のペールに太鼓判を押した。

また、白井は役者陣に「演技は毎回違っていいんです。むしろ、同じことは許しません。日々新鮮に、その場を生きてください」と言い放つ。前田が「それが一番難しい。だから白井さんの演出は怖いんです」と、白井演出の大変さを語った。

この日の公開リハーサルでは、プロローグの内と前田の鬼気迫る親子模様から始まった。

『ペール・ギュント』

奥行きのある舞台と激しいダンスが劇場を重苦しく覆い、落ちぶれた豪農の息子であるペールの状況を表現している。

ペールと恋に落ちるソールヴェイとの出会いのシーン。ソールヴェイを演じる藤井美菜のみずみずしい魅力が、暗い舞台に爽やかさを生み出した。

舞台上での生演奏は、日本を代表する若手フリー・ジャズピアニスト、スガダイローが率いる。ほか、独自の世界観を創るパントマイマーの小野寺修二が振付を担い、作品に重厚感を持たせている。内が何度も「今まで皆さんが観た事のない芝居です」と繰り返すのも納得の舞台に仕上がっている。

白井は作品について、「この作品では主人公ペールの人生の遍歴が描かれている。“生と死”を据えた人間ドラマです。単にコミカルというより、暗喩に満ちた寓話として描かれている。僕にとってペール・ギュントとは、スマートフォンを操作しながら普通に都内の繁華街を歩いている若者です」と評する。過去に上演した楽しい作品もあたたかい作品も、どれも死が織り込まれている白井演出だからこそ、ペールの人生を通して普遍的な人間像が見られるのだろう。

『ペール・ギュント』は、2015年7月11日(土)~20日(月・祝)までKAAT神奈川芸術劇場にて。25日(土)、26日(日)には兵庫県立芸術文化センターで上演される。

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