エルサレムの荒野が自由劇場に甦る!劇団四季『ジーザス・クライスト=スーパースター』観劇レポート


2015年5月30日(土)に東京浜松町・自由劇場にて開幕した劇団四季のミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター』。1973年の初演以来、四季のレパートリー作品として多くの支持を得る人気ミュージカルだ。
今回上演されるのは急な傾斜の装置を用いて、イスラエルの荒野を表現した「エルサレムバージョン」。作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーの初期の作品にあたる本作では、ロックの旋律に乗せて「キリスト最後の七日間」が綴られていく。
巨匠アンドリュー・ロイド=ウェバーと劇団四季が最初にタッグを組んだミュージカルでもあり、熱狂的な作品ファンを擁する本作の東京公演の様子をお伝えしよう。

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物語はエルサレムの荒野からはじまる。圧政に苦しむ群衆(=ユダヤの民)は、彗星のように現れた一人の男(=ジーザス・クライスト)を救世主と崇め、自分たちの“神”として祭り上げようとしていた。そのことに異を唱えるジーザスの使徒・ユダ。ユダはジーザスを愛してはいるが、彼を“神の子”だとは信じていない。自分が一体何者なのか、どうしてここにいるのかと一人で苦悩するジーザス。そこには彼によって人生を変えられたマグダラのマリアが常に寄り添っている。

『ジーザス・クライスト=スーパースター』

ジーザスの群衆への影響力を脅威と捉えた大司教カヤパとその義父アンナスは、ユダを使ってジーザスを捕えようと画策する。更にローマ人の知事・ピラトやユダヤの王・ヘロデもジーザスと関わることによって、事態は大きく動き、とうとうジーザスは群衆の前で十字架にかけられることに…。

神永東吾は“神”ではなく一人の男として苦悩するジーザス・クライスト役を熱演。群衆の期待に応えようともがきながら、彼らの過大な要求に疲れ、心を閉ざして悩む姿は非常に人間的だ。イスカリオテのユダ役・芝清道は2013年に“青白い炎”と自ら語っていたユダ像をさらに進化させ、ジーザスへの強い思いが反転してある種の屈折を生む姿とその苦しみを的確に表現。この作品に長く携わっているキャストとしての心意気と高い熱量を見せつけた。

本作『ジーザス・クライスト=スーパースター』で大きな役割を担うのが24名のアンサンブルが演じる“群衆”である。一人の青年を救世主と祭り上げ、彼がその責を果たせないと知るや否や唾を吐きかけ罵(ののし)りあざける。一人一人は善良な人間なのだろうが、「負」のエネルギーを持って彼らが顔のない“群衆”として集った時の憎悪の感情は凄まじい。

『ジーザス・クライスト=スーパースター』

今回、群衆役にはダンスの実力者、脇坂真人や劇団四季の他作品でも活躍する渡久山慶、北村優、阿部よしつぐ、柴田厚子らもキャスティングされており、見応えは充分だ。またこの作品が上演されるたびに言われることではあるが、今回も“群衆”の姿に今を生きる私たちの姿が重なって見えた。

劇団四季での初上演から40年以上の時を経てもそのインパクトは色褪せず、観客に鮮烈なメッセージを送り続けるミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター』。ぜひ劇場でその“熱狂”を体感して欲しい。

劇団四季ミュージカル『ジーザス・クライスト=スーパースター』は東京浜松町・自由劇場にて6月21日(日)まで上演される。

(文中のキャストは編集部観劇時のもの)

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