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猪塚健太インタビュー!初の外部主演『BLOODY POETRY』で「劇団では手に入らないものがここにはある」

劇団プレステージに所属する猪塚健太が、2018年2月8日(木)に開幕する舞台『BLOODY POETRY』に主演する。2月には映画『娼年』の公開を控えますます活躍が期待される猪塚にとって、今作が初主演、初翻訳劇、しかも日本初演という看板も背負っての挑戦となる。

物語は1816年の実在の出来事を起点としている。スイスのレマン湖近くで20代の詩人たちが出会い、怪奇譚を語り合い過ごしたという史実。この交流から、今も名作として残る『フランケンシュタイン』や『吸血鬼』などの作品が生まれたと言われている。

1984年にロンドンで初演されてから、オフ・ブロードウェイなど各地で上演されてきた本作。その幕開け直前の猪塚に話を聞いた。

『BLOODY POETRY』猪塚健太インタビュー

焦りと不安からのスタート

――初主演、初翻訳劇ですね。初めての挑戦が詰まった舞台だと思いますが、出演オファーをもらった時はどんな気持ちでしたか?

僕にとって、劇団以外の舞台で主演をやらせていただくということにものすごく意味があったんです。劇団という枠を出て主演として責任を負うことは、役者としての責任感が一つ増すこと。一緒にやってきた仲間のいる場所にはない緊張感や、自分が成し遂げなければいけないことがすごく多い。さらに海外の翻訳劇もずっとやってみたかったので、主演という喜びと重なって、出演を即決しました。

――物語は1816年のイギリスに実在した人物たちです。はじめに台本を読んでの感想はいかがでした?

まず今となっては、この台本がとても優れていることが分かってきて、どうやってこのおもしろさを伝えようとワクワクしています。けれども最初は、日本初演の翻訳劇ということでまだ上演用の台本が出来上がっていなくて、原文を直訳した台本をもらったんです。台詞が固いということもあって、ざっと読んで「難しい。分からん」と思いました・・・。文学に触れてこなかった僕は、かろうじて『フランケンシュタイン』という作品のことは分かるけれど、登場人物についてはその存在を聞いたこともありません。彼らがイギリスから出て旅をして詩を書いて生きていたなんてまったく知らないので、これは勉強しないと理解できないぞと感じたんです。でも、どこから手をつけたらいいのか分からない。自分で「やりたい」と思ったくせに、焦りと不安が湧いてきて、とりあえず図書館に行きました(笑)。

僕が演じるビッシュが書いた詩だけでも膨大な量があるので、目を通したり、当時の歴史背景や彼らの人生を調べたり、まずは知ることからのスタートでした。稽古場の机も壁も、彼らの関連資料でいっぱいなんですよ。

――「難しい」「分からない」が変化したきっかけはありましたか?

台詞量がとても多いし、比喩的な表現や哲学についての会話もたくさんあるので、台詞を覚えるまではまったく理解が追いつきませんでした。けれどビッシュの言葉が自分のものになった時、初めて相手役と会話が成立して「ああ、彼らの想いや人間関係ってすごく単純なことなんだな」と分かりました。詩人たちは文学者ならではの言葉を使って議論したり、哲学について語ったりしているんだけれど、言いたいことは「人生を通して自由であるべきだ」ということだけ。20代の若者たちが寂しさや悔しさを抱えながら、自分のシンプルな信念を胸に、未来を見据えて生きている。稽古中盤くらいからは「この台本の良さをそのままお客さんに伝えることができたら絶対におもしろい舞台になる」と自信を持つようになりました。

『BLOODY POETRY』猪塚健太インタビュー_5

自由を追い求めた詩人の青春

――演じるビッシュは波乱の人生を生きた詩人です。彼の魅力は?

なによりもビッシュが実際に書いた詩が魅力的です。彼の詩には「世界を変えるんだ」という強い思いが詰まっています。自分を信じているけれど、時には心が揺れるし、悲しみもある。たとえば恋愛においては、自由にたくさんの人と愛し合うフリーラブを言いながらも、感情がついていかなかったりと葛藤することもある。けれどそういった矛盾や苦悩をも詩に変えて世の中に訴えかけ、死ぬ直前まで書き続けていた人。きっと、詩人として自分を全部さらけ出してでも伝えていかなきゃいけないんだという思いがあったはずです。絶対に動かせない芯の通った心が、パーシー・ビッシュ・シェリーの魅力の一つかな。

――ビッシュに共感する部分はありますか?

時代も違うし、ものすごく自由な主張をしているので、考え方自体に共感できるかというと難しいですけれど・・・彼の生き方はいいなと思いますね。今の僕たちの世の中だって自由だとは言えないし、誰もが何かに縛られて生きていると思うんです。社会もどんどん変わって、昔は良かったのに今はやってはいけないこともある。そういう鬱屈が爆発して変な事件が起きたりもしますよね。でもビッシュは、それじゃダメなんだということを国に世界に訴えかけていた人だから、今の時代に置き換えてもすごいことをしている人ですよ。なかなかできないことです。だからこの物語は、自由を求めて世界を変えようと人生を賭けた人たちの青春の物語なんです。

――演じるにあたり大変だったところはどこでしょう?

いっぱいありますよ!まず作品全体では、どうにかしてこのおもしろさをお客さんに届けたいので、翻訳家さんも毎日稽古に来て「この言葉に変えた方が伝わるんじゃないか」と相談したり試行錯誤しました。今回の上演のために初めて日本語に翻訳するものですから、英語を日本語にするという1を100にするような作業の積み重ねでした。

また個人的には、劇中にビッシュの詩がたくさん出てくるところが挑戦だなと。あくまで詩を朗読するんだけれど、僕はビッシュがその詩をどんな気持ちで書いたのかを表現したい。でもやりすぎるとただの一人芝居になってしまうので、詩そのものの持つイメージを伝えることと、それを書いたビッシュの感情を表現することの、ギリギリのバランスを今も突き詰めています。たぶんこれは最後の幕が降りるまで足掻いていると思います。

『BLOODY POETRY』猪塚健太インタビュー_3

バックグラウンドの異なる共演者たち

――古典、テレビ、宝塚、小劇場、アイドルなど、共演者の経歴が多彩ですね。

皆さん初めてお会いしたメンバーばかり。だからこそプライベートを出さずに、作品のことだけを突き詰められた稽古になったかもしれません。とくに今回は翻訳劇なので、始めから“役”として接していました。稽古場でもそれ以外の場所でも、僕はビッシュだし、(内田)健司はバイロン。どこにいても、急に「あの時のビッシュってこう思ってたんじゃないか」という話が始まったりと、作品か役についての話しかしていないんです。そのうち「僕たちが舞台の話ばかりしているように、ビッシュとバイロンもこうやって詩についてばかり会話している友人関係だったのかもね」なんて話していました。

――けれどもあまりにバックグラウンドが違うので、演技が噛み合わなかったりということはなかったんですか?

初回の台本読み合わせでは、それぞれやってきた芝居が違うんだなということは感じました。6人とも台詞の読み方が様々だし、芝居中も感情が噛み合わないところがありました。けれども稽古を重ねて行くと、自然に皆が近寄ってくる。まず自由にやってみてから「俺はこういう感じで演じてるんだけど」「このシーンってこういうことじゃないの?」と細かく擦り合わせていくうちに、皆がシーンを共有して、グルーヴ感が上がっていく感覚でした。1ヶ月も同じ空気の中で芝居をすることで混ざり合っていく感覚はおもしろいです。そもそも戯曲が素晴らしいので、僕たち俳優は戯曲に導かれるように一つの方向に向かっていっている気がします。それを演出の(大河内)直子さんが、優しく丁寧に生地を練ってくれている感じですね。

『BLOODY POETRY』猪塚健太インタビュー_4

――大河内さんも「あえて出自の違うメンバーを集めた」とおっしゃっていますね。

それぞれの違いが自然と作品にマッチして、いい味になってきたなと感じます。それにみんな持っている技術が違うので刺激になる。毎日芝居をしているうちに、たとえば健司がやってきたことを僕が自分の演技に取り入れたりもしています。同じ環境で一緒にやってきた劇団の仲間たちとでは手に入れられないものが、ここにはたくさんありますね。僕にとっても皆にとっても、俳優としてとても幅の広がる現場です。

そうやって僕らが試行錯誤して舞台を作っているように、ビッシュたちも懸命に詩を書いている。当時の20代の若者たちが未来に向かって生きている力強さが伝わればいいなと思って演じています。

『BLOODY POETRY』猪塚健太インタビュー_2

◆公演情報
『BLOODY POETRY』
2月8日(木)~2月18日(日) 赤坂RED/THEATER
【脚本】ハワード・ブレントン
【演出】大河内直子
【翻訳】広田敦郎

【出演】
パーシー・ビッシュ・シェリー 猪塚健太(劇団プレステージ)
メアリー・シェリー 百花亜希(DULL-COLORED POP)        
クレア・クレアモント 蓮城まこと
ジョージ・バイロン卿 内田健司(さいたまネクスト・シアター)  
ウィリアム・ポリドーリ博士 青柳尊哉
ハリエット・ウエストブルック 前島亜美
(登場順)

『BLOODY POETRY』

(文/河野桃子)

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