Japanese Musical『戯伝写楽 2018』“与七”対談!東山義久&栗山航インタビュー


2018年1月12日(金)から東京・東京芸術劇場 プレイハウスほかにてJapanese Musical『戯伝写楽 2018』が上演される。約10ヶ月という短い活動期間に140点以上の作品を残し、忽然と消えた浮世絵師・東洲斎写楽にスポットを当てた本作は、写楽の謎に迫りつつ喜多川歌麿、葛飾北斎、十返舎一九、大田南畝(別号・蜀山人)など、寛政の時代に己の才能のまま、熱く自由に生きる芸術家たちの姿を等身大の人間として描くミュージカルだ。

2010年に初演され、この度8年ぶりに再上演される本作で「与七」役は初演でも同役を演じた東山義久と、今作から参加の栗山航によるWキャスト。キャリアも性格も異なる二人が同じ役を演じること、また作品に賭ける意気込みなどを聞いた。

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――お二人は初共演なんですね。お互いの最初の印象は?

東山:航くんは、TVドラマ『牙狼-GARO-』の主人公(道外流牙役)のイメージだったね。そういえば(小西)遼生も『牙狼-GARO-』の初期シーズンの主人公(冴島鋼牙役)だったんだよね!

栗山:僕が義さん(東山)と初めて会ったのは、『戯伝写楽 2018』歌稽古の時でした。義さんはその日、遅れて稽古に合流されたんですが、誰よりも大きな声で歌い出して「すごい、この人!」って圧倒されました。そのインパクトは忘れられません(笑)。

東山:あの日、ほかの現場からの移動が遅くなり、稽古場に一時間遅れで到着したんです。途中参加となったんですが、そこから倍くらい気合いを入れて歌いまくって結局15分で稽古を終わらせました(笑)!

――栗山さんは本作に初参加となりますが、本作のお話をいただいた時、どのように思われましたか?

栗山:「ミュージカルですよね!?」って聞き返しました。というのも、僕は芝居で歌ったことがなかったので・・・。普段の生活でも人前で歌うのが苦手で、カラオケにもほとんど行かないんです。だからこそ「与七の役は、歌う場面がどのくらいあるの?」ってスタッフさんに確認するくらい心配で(笑)。実際に稽古が始まると、台詞にメロディが付いて歌になっただけなんだ!と分かり、恥ずかしさが減りました。とはいえ、僕は歌初心者なので、歌に感情を乗せすぎると上手く歌えなくなり、逆に上手く歌おうとすると、今度は気持ちが伝わらなくなってしまい・・・何度稽古しても、すごく難しいです。もちろん難しいのは歌だけでなく芝居もなんですけど、「ミュージカル」と名が付くからには、まずしっかり歌えるようにならないと、と思って奮闘中です。

――東山先輩から何かアドバイスをいただくことは?

栗山:義さんは本当に優しい言葉をかけてくださるんです。毎日のように「大丈夫か?」って声をかけていただき、心配してくださっているのがすごく伝わるんです。それが僕の心の支えになっていて、その言葉だけでもがんばれる気がしています。

東山:・・・俺は彼氏か(笑)!?

栗山:(笑)。稽古中は「今日も上手くできなかったなあ」とかしょげて帰ることも多かったんですが、義さんから「大丈夫だったか?」ってLINEをいただくと、家に帰ってからも「もう一回練習してみるか」って力が湧いてくるんです。

――東山さん・・・優しいですね!!

東山:お前、いい彼女を持っているなあ(笑)。

――東山さん、彼氏から彼女に設定が変わっていますよ(笑)。栗山さんが悩んでいることは、初演を経験した東山さんも共感できることですか?

東山:そうですね。「与七」って江戸時代の華やかさや勢い、エネルギーの塊が込められた役なので、誰よりも爽快に突き抜けていなければならない存在であり、さらに未来の与七の姿(十返舎一九)を垣間見せる必要もあるんです。そうなると、歌も当たり前に歌えないといけないし、芝居を盛り上げるためにも観客の皆さんを自分の味方につけるようなエネルギーも必要。おまけに台詞は大阪弁。例えるならすべての武器を自分の中に取り込んで、それを場面ごとに上手く使うような役なんです。

栗山:与七役をWキャストで演じることもプレッシャーでした。最初は義さんの真似をしようとしてしまって・・・。そんなの無理ですよね。義さんと年齢も違えば(橋本)さとしさんとの距離感も違います。そうなると、僕がこの与七役を演じるために必要なものは、義さんとは真逆の方向にあるかもしれない、と感じたんです。例えば、義さん演じる与七はさとしさん演じる十さん(=斎藤十郎兵衛)に対してガンガン突っ込んでいくタイプだけど、僕が演じる与七はどちらかというとボケ役で、十さんに突っ込まれているような雰囲気になるんです。それをうまく活かせていければと思っています。

東山:そうそう。河原(雅彦)さんからは「この場面がどのような場面か、役者同士が共有して、何を伝えたい場面なのかがずれてなければ、使う言葉の違いや(Wキャストそれぞれの)性格の違いがあってもいい。逆を言うと、何をしてもいいから大事なことはずらさないで」と言われています。河原さんは、僕らだけでなく、他の役者さんに対しても同じことをおっしゃっていました。
おもしろいなあ、と思ったことがあるんです。航くんはどちらかというと「〇〇が上手くできない」って責任感を抱え込んでしまうタイプなのかなと思うんだけど、僕は逆で、追い込まれるほど他者とコミュニケーションを取りたがるタイプなんです。「どうしよう!俺、今すごくヤバイ!」っていう心理状態を全員と共有したいタイプ(笑)。

――キャリアや年齢だけでなく、壁にぶち当たった時の対応も、同じ与七役を演じる役者でありながら、随分と違うんですね。

東山:そう、だからお互いの違う部分、とんがっている部分を大事にしながら、それぞれの与七を作っていけばいいんじゃないかな、と考えています。

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――今回、演出が河原さんに変わっています。演出家が変わったことで、演じる側として初演とどのような違いを感じていますか?

東山:2010年版は「ファンタジー」要素が多めだったように思います。演出は宝塚歌劇団の演出もなさっていた荻田(浩一)さん。劇中の楽曲の歌詞もご自身で手掛けていらっしゃいました。そんな荻田さんの世界感が作品にも表れて、美しく素敵な世界となっていました。
2018年版では河原さんに演出が代わり、キャラクターを重視されたことで、物語の人間関係がより密になった印象です。楽曲の歌詞を森雪之丞さんが手掛けられたことで、歌詞の内容が「台詞として」直球なものになりました。歌うことで、そのキャラクターが今何を考えているのかがより分かる内容になったと感じています。僕とさとしさんと遼生くんが初演を経験している3人なんですが、初演を知っているからこそ「この違い、おもしろいね~」と話していますよ。

――お二人の演じる与七は、将来的には物書きとして身を立てていきたい、と野心を抱く男です。十郎兵衛とおせいとの関係からも人物像が見えてくるようにも思いますが、それぞれどのような与七像を描こうとしていますか?

栗山:基本的には与七は十さんが大好きで、彼が見せるいろいろな顔をおもしろいと思いながら一緒にいる男なんですが、心のどこかで十さんと同じような野心を抱いていて、それが実現せずくすぶっている状態です。言葉にはしなくても二人はどこかで気持ちが通じているような気がします。
でも、僕と十さん、いやさとしさんが実際にそういう関係性になるにはどうすれば・・・現実的には難しいですよね。大先輩にタメ口はたいて「あのおっさん!」と言える関係ってどうすれば成立するんだろう、とも思っています。

東山:さとしさんとは過去何作か一緒にやる機会があって、『レ・ミゼラブル』でジャン・バルジャン役をやられた時、僕がアンジョルラス役をやっていました。(普段の)さとしさんが大阪弁なこともあって、同郷出身者みたいな感覚で普段からコミュニケーションを取ってくださっていたように思います。それもあって、僕はこの作品の中でも十さんの弟分のような役どころでいようかなと考えながらやっていますね。十さんというキャラクターに、さとしさん本人が持っている人懐っこさ、人たらしの部分を感じるんです(笑)。さとしさんを嫌いになる人っていないんじゃないかなと思うんですよ・・・あ、女性はどう思っているのか分かりませんけど(笑)。

栗山:(笑)。

東山:さとしさんの人としての器の大きさが、そのまま十さんのキャラクターに出ている気がするんです。与七としては、十さんは一人じゃ何もできない人ですが、十さんと一緒にいると何かおもしろそうなことが起きそう、って感じている。与七は将来的に筆一本で身を立てたいという野心があるのですが、能役者を辞め、絵で身を立てようとしている十さんと何か共有できる感覚があったんだろうと思うんです。今回は与七が十さんに同情する場面ができていて、より人間関係が濃く描かれるようになったなと実感しました。説明的な台詞も多くなり、僕らだけでなく蔦屋重三郎(村井國夫)もより深く描かれている。
今回の脚本や稽古を観ていて、普通におもしろい、って思いましたよ。あっという間の2時間強になると思います。

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――与七から見た、おせいという女性はどのような人物なんでしょうか?

東山:初演のおせいちゃんとはまったく違うおせいちゃんですね。航くんから見たおせいちゃんってどんな感じ?

栗山:掴もうとしても掴みどころがない人。人としておもしろい「材料」だけど、与七の筆ではまだまだ書き切れない摩訶不思議な人、という感じでしょうか。

東山:与七にとっては、十さんとおせいちゃんの関係がおもしろくて、それを目の前で見ることに喜びを感じているんだと思います。あの二人のおかげで与七の中にある物書きとしての芽が育っていくんです。おせいちゃんと与七が初めて会う場面では、「おもしろさのすべてがおせいちゃんに詰まっていて、ここから新しい何かが始まる!と予感させる場面にしてほしい、そういう風に話を持っていきましょう」と河原さんと話しましたね。

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――ストーリー性がより強くなる『戯伝写楽 2018』の一端が見えるようですね。お二人の目から見た本作の見どころは?

栗山:人が成長していく様がおもしろいと思います。最初はこんな名前で登場してきたけど、後々あの有名人になっていくという展開が。

東山:キャスト全員に悪者がいない世界というのもこの作品のいいところですね。筆で身を立てたいとか、版元として絵を売り出したいなど、皆、野心に溢れています。そのエネルギーに触れることで観終わった後は爽快な気分になり、キャラクターの誰かになったような感覚になれると思いますよ。

――まもなく本番ですが、Wキャストとしてお互いのどのような点を参考にしながら与七を演じていきたいですか?

栗山:義さんから特に盗みたい(笑)と思っているのは、他人との距離の詰め方。義さんがお芝居をしていると、ほかの役者さんとの距離感・・・登場人物の関係性のようなものが自然と見えてくるんです。十さんとはこんな関係、おせいちゃんとはこんな関係って。言葉を交わしていなくてもそこに立っているだけで見えてくるのがすごいと思います。義さんからいろいろなものを盗んで、最終的には義さんの与七を超えたいと思っています!

東山:おっ!僕も航くんのすべてを盗んでやる(笑)。航くんが演じる与七は何といっても笑顔が素敵!何、その爽やかな笑顔!欲しいわ!って思いながらいつも見ています。

――東山さんは笑顔が苦手なんですか(笑)?

東山:いや、笑顔だけなら出来る!出来るんだけど、航くんみたいに爽やかな笑顔はもう無理・・・こういう爽やかさって徐々に消えていくものなのよ(笑)。

栗山:(笑)。そうなると、最後の「あの」台詞で、お互いの与七の表現が変わりそうですね。

東山:そうだね。お互い今の自分にしかできないそれぞれの与七をやっていこうかね。

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――物書きで身を立てたい、という野心を抱く与七の設定に絡め、もしお二人が何か一冊書くとしたらどんなことを書きたいですか?

東山:僕は15年くらい「DIAMOND☆DOGS」というグループのリーダーをやっています。グループ立ち上げの頃はメンバーの入れ替わりも激しく、その過程では様々なドラマもあり、メンバーとも何度もぶつかり合って今に至っています。その歴史を忘れないように一冊の本にしたいですね。・・・書けないこともたくさんありそうなので、暴露本にしようか!?「文春砲」的な感じでもいいか(笑)。

栗山:僕はミステリーが大好きなので、自分で書けるものなら王道のミステリーを・・・。密室、無人島ネタが特に好きなので、そこに「DIAMOND☆DOGS」の人たちを登場させて・・・(ちらっと東山さんを見る栗山さん)。

東山:僕らがサバイバルゲームをやるの(笑)?一人しか生き残れないバトルロイヤルとか?

栗山:「そして誰もいなくなった」的な話もおもしろそうですね(笑)。

東山:・・・執筆される時はどうぞよろしくお願いいたします(笑)。

――どちらも読んでみたいですね(笑)。それでは最後に本番に向けて意気込みをお願いします。

栗山:前回の『戯伝写楽』を超えます!

東山:その航くんの一つ先まで超えていきます(笑)!

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◆作品情報
cube 20th presents Japanese Musical『戯伝写楽 2018』
【東京公演】2018年1月12日(金)~1月28日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
【福岡公演】2018年2月3日(土)・2月4日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
【愛知公演】2018年2月7日(水) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
【兵庫公演】2018年2月10日(土)~2月12日(月・祝) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

【作】中島かずき
【作詞】森雪之丞
【音楽】立川智也
【演出】河原雅彦
【出演】
橋本さとし(斎藤十郎兵衛役)
中川翔子(おせい役)
小西遼生(喜多川歌麿役)
壮一帆(浮雲役)
東山義久(与七役/Wキャスト)
栗山航(与七役/Wキャスト)
池下重大(鶴屋喜右衛門役)
中村美貴
華耀きらり
大月さゆ
染谷洸太
馬場亮成
岩橋大
山崎樹範(鉄蔵役)
吉野圭吾(大田南畝役)
村井國夫(蔦屋重三郎役)

(撮影/エンタステージ編集部)

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