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インタビュー

CSチャンネル衛星劇場11月特選歌舞伎は尾上松緑特集!「過去をご覧いただき、新たに劇場で今の松緑を」

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CSチャンネル衛星劇場では、11月に「特選歌舞伎」で尾上松緑の出演作品の特集放送を行う。放送される作品は、TV初放送となる『大商蛭子島』『眠駱駝物語~らくだ』をはじめ、『忍夜恋曲者~将門』『戻駕色相肩』『鴛鴦襖恋睦~おしどり』『奴道成寺』『倭仮名在原系図~蘭平物狂』の7作品。特集に向け、松緑自身に各作品を振り返ってもらった。

衛星劇場_尾上松緑

――11月の衛星劇場の特選歌舞伎は尾上松緑特集です。『大商蛭子島』は、お祖父様の二世尾上松緑ゆかりの作品ですね。どのように創り上げていかれたのでしょうか?

『大商蛭子島』は、祖父が昭和37年に180年ぶりに復活させた天明歌舞伎です。当時の台本や資料をベースに、中村時蔵のお兄さんや中村勘九郎さん、七之助さんと一緒に舞台をつくっていったわけですが、昔のおっとりとした時代の芝居で、同じように上演すると今のお客様には長く感じます。祖父の時には1時間半を超えていましたが、間延びするところを削って、1時間15分くらいに縮めました。また、最後に幸左衛門が頼朝だと名を現して平家追討の旗揚げをする場面は、祖父のときよりも派手な感じに演じています。

衛星劇場_尾上松緑『大商蛭子島』
『大商蛭子島』

――源頼朝を演じると決まったときのお気持ちは?

手習の師匠・正木幸左衛門、実は源頼朝という役柄は、歌舞伎用語でいう「つっころばし」で、柔弱でかわいげのある二枚目の男です。自分のキャラクターではない役柄だったので、正直驚きました。歌舞伎の世界では長年ずっと眠っていた作品を掘り起こして上演するといったことは多々ありますけれど、その場合も自分の柄に合った役でやることが多いのです。最初にお話をいただいた時はどうやってつくっていこうかと戸惑いましたね。

――松緑さんというと、豪快な男っぽい雰囲気の役柄が浮かびます。今までのイメージと違った色男の役柄を演じる上で、どんな工夫をされたのでしょう?

頼朝は浮気な性分の二枚目ですが、前述したように私は元来、強面な柄で、二枚目が似合う役者ではありません。ですからお客様が私に対して抱いている硬いイメージをどう壊すかをまず、はじめに考えました。初日、花道から出て一言目の台詞で、客席がワッと湧いたのでホッとしましたね。でもやはり二枚目は照れくさくて(笑)。それで祖父の頼朝よりも三枚目チックな要素を多めにしてみました。ただ、私のはにかみが頼朝の役には良い風に作用した思いがします。

衛星劇場_尾上松緑『大商蛭子島』
『大商蛭子島』

――『大商蛭子島』は天明歌舞伎らしい大らかさの中に破天荒な楽しさも秘めた、当代の松緑さんならではの見応えのある舞台となりました。

ありがとうございます。頼朝は寺子屋の手習い娘たちにはちょっかいを出し過ぎる好色な男ですが、辰姫や北条政子など心底大事に思っている女性に対しては気弱で受け身になってしまいます。女性上位的な辰姫の強さや、頼朝がお弟子さんにセクハラをするところなどは、祖父の時代よりもかえって今のお客様の方が共感してもらいやすいのではないでしょうか。

――今回48年ぶりに上演され、どんなところにやり甲斐や手応えを感じられたのでしょうか?

若い後輩たちがおもしろく観たと言ってくれたのが何よりも嬉しくて。48年ぶりに上演してみて、私自身、もう少しカットしたいところや、逆に今の時代には説明不足で分かりづらいと思ったところもあったので、そういう部分を削ったり足したりして、後につながる芝居にさらにブラッシュアップしていきたいと思っています。次回も私が出るかどうかは分からないですけれど、今度は何十年後ではなく、割と早い時期に見取狂言の1本として再演できる基礎はできた気がしています。

衛星劇場_尾上松緑『眠駱駝物語~らくだ』
『眠駱駝物語~らくだ』

――落語を歌舞伎化した『眠駱駝物語~らくだ』では、市川染五郎さんの久六、坂東亀寿(現・亀蔵)さんの馬吉で、無頼者の強気な男半次を演じられました。

『らくだ』の半次という役柄は、お客様が抱いている私のイメージに近いのではないでしょうか。私自身、すっと舞台に出ていける似合いの役ですね。染五郎さんと『らくだ』を演じるのは初めてだったのですが、今までコンビでいろんなものをやっていまして、気心が知れています。私の方が年齢は下ですが、普段から楽屋でも天真爛漫な染五郎さんがボケで、私が突っ込む感じで楽しくやりあっていますので、このお芝居は入りやすかったですね。

――気の合うお二人ならではの抱腹絶倒の舞台でした。どんなことを心がけられたのでしょうか?

一つ前の演目が『吉野川』という2時間ほどある重厚なお芝居でしたので、それを観たお客様がホッと気を抜いて、くだらないことで心底笑えるような舞台にしたいと思いました。基本となる台本はありますが、染五郎さんが『吉野川』のお芝居で疲れ切っていたのをからかって「おめえ、疲れてんじゃねえよ」と言葉を放り込んだり(笑)。このお芝居、酔っ払うと染五郎さんの久六がだんだんイニシアティブを取っていくのですが、初めに半次が強気でどんどん押しておかないと、後でやり込められる時のおもしろさが出てきません。ですから前半に私がアクティブに動いて、後半の染五郎さんの爆発力に頼れるようにしました。

衛星劇場_尾上松緑『倭仮名在原系図~蘭平物狂』
『倭仮名在原系図~蘭平物狂』

――『倭仮名在原系図~蘭平物狂』もお得意の演目ですね。今回放映されるのは、18年前、尾上辰之助時代に初役で奴の蘭平に挑まれた懐かしの舞台です。

当時は若くて、今のように自分の子どももいませんでしたから、いざ戦場に出て子どもと敵対して戦う父親というのはどういう心情なのか、想像するしかありませんでした。初役の時は亡き三津五郎の兄さんに、芝居が終わってからも毎日手取り足取り、いろいろと教えていただきました。19年前の未熟な自分をご覧いただくのは恥ずかしい気もしますが、今の私の蘭平の原点がそこにあります。

――『蘭平物狂』はお祖父様やお父様も得意とされたお家の芸。思い入れもひとしおだと思います。

私にとって祖父や父はヒーローでした。子どもの頃って、大きくなったら仮面ライダーになりたいなんて思うでしょう?そんな感じの存在でしたね。大きくなったら歌舞伎役者になって蘭平をやるんだと。ですから自分の中では祖父や父のイメージが頭の中にこびりついていて、それを未だに追いかけています。もし息子が将来、蘭平をやることになったら、私を目標にしろとは言いませんね。君のお祖父さんや曾お祖父さんをイメージしてやりなさいと言うと思います。

――当時、三津五郎さんに教わった中で印象に残ることはありますか?

『蘭平物狂』は大立ち回りが見せ場になりますが、そこにいくまでの前半の芝居を大事に演じて、お客様にしっかり納得してもらわないといけないと言われました。前半は古風な場面で、しかも長いですから、正直言ってお客様にとってはもたれるところがあると思います。でも、そこをしっかりとお見せしておかないと、なぜ奴の蘭平が大立ち回りをするのかが理解していただけませんから、まったくの正論ですね。また、三津五郎のお兄さんも私も、日本舞踊の流派の家元ですから、踊りをきっちりとお見せなければダメだよということも厳しく言われました。

――松緑さんの蘭平は、全身から溢れ出るような力強さが観客に強烈な印象を与えます。どんな思いで演じられているのでしょうか?

蘭平の役は歳を取ってからではできません。どちらかと言うと熟成味が必要な芝居ではなく疾走感が必要なので、30代半ばを過ぎてからは、蘭平をやるときはいつもこれが最後という気持ちで演じています。ありがたいことに初演から好評をいただいて再演を重ねていますが、いつ怪我をしてもおかしくないような大きな立ち回りがありますので、いつも今日が最後という気持ちで毎日出ています。

衛星劇場_尾上松緑『忍夜恋曲者~将門』
『忍夜恋曲者~将門』

――歌舞伎座新開場の時に坂東玉三郎さんと共演された『忍夜恋曲者~将門』は豪華な舞台でした。玉三郎さんからはどんな助言があったのでしょう?

将門の光圀は何度か演じていましたが、非常に幽玄的な踊りですし、光圀は豪傑でありながら色気も必要や役柄で、やりがいがあります。玉三郎のお兄さんからは「現代的にならないよう、古風を大事に」と言われました。おどろおどろしい雰囲気のなかで盛り上がっていくお芝居ですから、私自身も現代的になってはつまらないと思っています。幸い私は古風な芸風ですから、古典味を出すことにそれほど苦労を感じたことはありません。ただ、我々の今の暮らしはシャツにズボンで椅子に座るスタイルで、歌舞伎の時代とはかけ離れています。ですから歌舞伎の空気感を大事にするために、家でも畳で過ごすなど、意識して古風な暮らしをするようにしています。

衛星劇場_尾上松緑『戻駕色相肩』
『戻駕色相肩』

衛星劇場_尾上松緑『鴛鴦襖恋睦~おしどり』
『鴛鴦襖恋睦~おしどり』

――歌舞伎座さよなら公演の『戻駕色相肩』と『鴛鴦襖恋睦~おしどり』も今回放映されます。『戻駕』はお家の藤間流の振り付けでしたね。『おしどり』では海老蔵さん、菊之助さんと、平成の三之助さんの顔ぶれが揃いました。

『戻駕色相肩』は京の紫野に二人の駕篭かき、東の与四郎と浪花の次郎作とが、島原から禿を乗せた駕籠を担いでやってきて、禿を相手にそれぞれ江戸と大坂の自慢と廓話をするという話を舞踊にしたもので、私が次郎作、尾上菊之助さんが与四郎を踊りました。何もない舞台で廓の様子を表現しなければなりませんし、踊りで与四郎との対比を出さなければなりません。また、禿の尾上右近さんと一緒に踊るところは、愛嬌があり、豪傑っぽく、かつ色気が必要です。全て網羅して表現しなければなりませんから、とても難しい踊りですね。『おしどり』では私一人だけ人間で、しかも我を出せる役柄でしたから、お二人よりは割に楽だったと思います。

衛星劇場_尾上松緑『奴道成寺』
『奴道成寺』

――平成20年の『奴道成寺』も松緑さんの踊りを堪能できる作品で、見応えたっぷり。3つのお面の使い分けも見事でした。

これは『娘道成寺』の白拍子を、狂言師の男に変えた趣向の舞踊です。「恋の手習い」のクドキの場面は、廓の客・遊女・幇間にみたてたお面を交互にかぶり、遊里の恋もようを踊り分けます。女形のような姿で踊り始めて、男になってからもお面3つをうまく使い分けしなければならないので、何度踊っても手強いですね。お客様には素直に踊りのおもしろさや華やかさを楽しんでいただければと思います。

――衛星劇場11月の特集は、辰之助時代から今に至る松緑さんの多彩な魅力が楽しめる編成になっています。ファンのみなさんにどんな風にご覧いただきたいと思われますか?

昔の辰之助時代の舞台もあって、本人としては面はゆいところもあります(笑)。ただ、私は若い頃からがっちりとした大人の役をやっていまして、放送される中には近々また演じるだろうと思う演目もあります。まずは衛星劇場で過去の舞台をご覧いただき、新たに劇場に来て今の松緑を観ていただけると嬉しいですね。十数年前とどう違うのか、同じ役柄で比較していただくのもおもしろいと思います。

尾上松緑

◆プロフィール
尾上松緑
1975年生まれ。初代尾上辰之助の長男。1981年2月に尾上左近として初舞台。1989年6月に舞踊の藤間流家元・藤間勘右衞門を襲名。1991年5月に二代目尾上辰之助、2002年5月に四代目尾上松緑を襲名。

◆CS衛星劇場 11月特選歌舞伎「尾上松緑特集」
『大商蛭子島』
11月1日(水)午後4:00~/11月6日(月)午後4:00~/11月28日(火)午後4:00~

『眠駱駝物語~らくだ』
11月2日(木)午後4:00~/11月8日(水)午後4:00~/11月13日(月)午後4:00~

『忍夜恋曲者~将門』
11月10日(金)午後5:15~/11月27日(月)午後4:00~

『戻駕色相肩』
11月13日(月)午後5:00~/11月22日(水)午後5:00~

『鴛鴦襖恋睦~おしどり』
11月16日(木)午後5:30~/11月21日(火)午後5:15~

『奴道成寺』
11月7日(火)午後5:30~/11月22日(水)午後4:00~

『倭仮名在原系図~蘭平物狂』
11月3日(金)午後4:00~/11月23日(木)午後4:00~

(ヘアメイク/松本由美子【Accroche-Coeur】)
(取材・文/オフィシャル提供)

(C)松竹株式会社

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(文/エンタステージ編集部)

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