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『ペール・ギュント』浦井健治にインタビュー「出会った人、作品のすべてが僕にとって人生のランドマーク」

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2017年12月に東京と兵庫にてヘンリック・イプセンの名作『ペール・ギュント』が上演される。日韓文化交流企画となる本作は、日韓20名のキャストが出演し、平昌(ピョンチャン)冬季オリンピックの開・閉会式の総合演出を務めるヤン・ジョンウンが演出を務める作品だ。

本作で描かれるのは、真の自分をどこまでも追い求める、壮大かつ奇想天外な「自分探し」の物語。本作の主人公であり、自分探しの旅に出る青年ペールを演じるのは浦井健治。浦井はいったいどのような旅に出ようとしているか、話を聞いた。

『ペール・ギュント』浦井健治にインタビュー

――まず本作のお話が来た時、どう思われましたか?

台本を一読して、とても難しい作品だと感じました。正直な話、一度では理解しきれませんでした。それからは一日一回、必ず台本を読むようにしているんですが「この作品はこういうことを言いたいのでは?」という主題が読む度に変わっていく、不思議な現象が起きているんです。つまり、それほどいろいろなことが書かれている作品なんだろうなと思います。

――ここまでヤンさんと何度かお話される機会があったそうですが、浦井さんから見たヤンさんの魅力は?

まず、笑顔が素敵!また、何事にも真摯であり、言葉ひとつひとつにとても深い愛情を感じます。人と人との垣根を取っ払ってくださるような、オープンマインドで明るい方という印象がありますね。人見知りの方でも、すぐにヤンさんのことが好きになってしまう。そんな方だと思います。
それから、おしゃれでこだわりを感じます。男の自分から見ても、かっこいいなと思う方です。シンプルな中にちゃんと刺激を感じさせるもの、自分の主張のようなアイテムを持っていらっしゃいますし。おそらく奥さん(ユン・ダギョン)のセンスもいいんだろうなあ。

『ペール・ギュント』浦井健治にインタビュー_5

――ヤンさんが手掛けた作品をご覧になった感想は?

映像で拝見したのですが、とてもポップで、斬新な演出も多かったです。そして、エネルギーに満ちていました。役者たちがすごく遊んでいるようにも見えたし、その「遊び」からエネルギーを発散しているようにも感じました。

今回共演する趣里ちゃんたちが、ヤンさんのワークショップオーディションを受けているんですが「本当に楽しかった、素晴らしかった!」と口々に言っていたんですよ。きっと、稽古もそういった刺激ある内容になるような気がします。

――『ペール・ギュント』の難解な台本が、ヤンさんの演出で掘れば掘るほど、いろんな魅力が見えてきそうですね。

そうですね。ヤンさんは韓国で、それこそ“掘れば掘るほど”の作業をなさってこられたんだと思います。今、日本と韓国ががっちり握手をしながら、新しい『ペール・ギュント』を作ろうと突き進んでいます。だからこそ、これまでヤンさんが韓国で上演してきた『ペール・ギュント』とはまるで異なる内容になるかも・・・というところまでヤンさん自ら飛び込もうとしてくださっています。
そんなヤンさんが「ペール役を浦井でやりましょう」と言ってくださったと聞いて、本当に嬉しかったですし、今の自分にとって、この作品はかけがえのない財産になると思います。大きな作品をキャスト一丸となって大晦日までやり抜こうとしているので、それがすごく楽しみです。

――浦井さんは、この作品で20代から60代までを演じることになります。現在、浦井さんご自身は30代半ばとなりましたが、経験のない年代をどう演じるか、今の段階で何かプランを立てていますか?

一幕では、ペールがいかに自分は偉大であるかということを、母親に向かって語り続けているんです。「お母さんに楽させてあげるから。皇帝になるから」と。でも、その言葉の意味って、結局「人に認めてもらいたい」ということ。人の上に立ちたいからではなく“認めてもらいたい”という思いで「自分はすごい」ということを主張しているのだと思うんです。ペールは、浅はかで自分勝手なダメ男なんですけど、どこか憎めない優しい人。一幕ではそういったペールの人間としての素直な部分が描かれています。ところが二幕では、「死」や辛いこと・・・人生の闇の部分を知り、真実の自分と向き合う姿を描いていきます。それって、年齢と共に誰しもが経験することですよね。

「自分は普通でしかない」ということを認めたり、劣等感を受け入れたりというのは、人生の意味を自分で理解する境地にまで達することかもしれません。僕は“まだ”36歳ですが、“もう”36歳です。この歳でこの作品に出会うことで、諸先輩方がどのように生きてきたのか、先輩方が僕にかけてくれた言葉の意味や、なぜ僕はこの世に生まれたのかを理解することにも繋がっていくと思うんです。もちろん、僕の父や母がこれまでに僕に示してきた言動の意味をも考えるきっかけにもなるでしょう。
さらに言えば、自分がこれから先、どんな振る舞いを見せていくのがいいのか、という疑似体験になるかもしれない。そのくらい『ペール・ギュント』という作品には深さがあるのでは、と考えています。

今の自分が、この年齢、この時期にこの作品に出会えたことに心から感謝をしています。体当たりで挑む一方で、俯瞰する目を持ちながら、今の自分がなぜこの作品をやるのか、その意味を常に考えつつ、ヤンさんとまずは楽しみながらやっていけたらなと思います。

『ペール・ギュント』浦井健治にインタビュー_2

――『ペール・ギュント』という作品に触れた人は、役者、観客問わず、様々な印象を受けることになりそうですね。

『ペール・ギュント』って、本当に人それぞれ、捉え方が変わる作品になると思うんですよ。自分探しの旅、母性、原点回帰、夫婦愛、無償の愛・・・。観るお客様は、その「すべて」を感じるかもしれないし、その中の一つだけ感じるのかもしれない。衝撃だけを受ける人もいるかもしれない。でも、そのすべてが正解だと僕は思うんです。

先ほども言ったように、僕が台本を何度読んでも、本が語りかけてくることがどんどん変わっていくような作品です。場面ごとに自分の人格が変わってしまうような感覚もあるし、台詞で言っていることとまったく違うことを思っているような時もありますね。台本を読んでいる時の自分の環境・・・例えば、家、カフェ、劇場、電車、車・・・それらによってどんどん変わってしまうんです。だから、お客様が観劇した感想もその日によって変わるかもしれない。

『ペール・ギュント』浦井健治にインタビュー_4

――この作品を通して、浦井さん自身が「自分探しの旅」を経験し、その結果、役者としての階段を一段ずつ上がっていくような作品になるんでしょうか。

階段を「上がろう」とは思ってないですけど(笑)。ただ、これからもこの道を歩めるような作品になると思います。「歩く」って結構大変なことなんですよね。きっと、36歳の自分がもう一足靴をもらって、まだこれからも歩いていいんだなと思えるんじゃないかな。

これだけのメンバーで、アジアに大きく視野を広げてやろうとしていること、いまこの日本で、この時期にこのような形で上演される意味がヒリヒリした感触で迫ってくるので、ちゃんとそこに意味を持たせたいと、個人的には思っています。

――ちなみに“これまで”を振り返って、ご自身の「自分探しの旅」の中で、印象に残っている人や出来事ってありますか?

出会ったすべての人、すべての作品です。出会った方・・・スタッフさん、キャスト、オーケストラさん、そしてお客様。そのすべてが自分にとってのランドマーク(目印)になっています。作品によっては、再演されたり、続編、シリーズ化されたりすることもあります。何年も同じ役を演じた作品もあるし、様々なことを経て再演が決まったものもあります。そのすべてが、人生の中でのランドマークだと思いますね。経験によっては、時に傷ついたこともあるし、苦しかったこともある。今ならすべてプラスだったと言えますけど、その時は本当にもがいて、もがいて、その連続で・・・これもある意味ランドマークの一つだったと思います。

――どちらかというとデビューから今日まで順調に進んでいらっしゃったように見えていたので意外でした。

本当?まあ、見た目がこんなだからですかね(笑)。いや、楽しいですよ!すごく楽しいし、恵まれています。こんな僕が、どうしてこんなにいろいろな人に支えられているのか分からないぐらい。それほど多くの方に支えられていると感じています。
もしかしたら「何が辛かったの?」という目線で言っていただけることって、僕にとっては逆にご褒美なのかも、とも思います。「辛い」の種類は毎回違っていて、年末や正月、初詣などのタイミングで「この一年、これが楽しかったな、これが辛かったな」って振り返るんですが、「でも、何もない人生より最高じゃん!?」って思っているんですよ。

『ペール・ギュント』浦井健治にインタビュー_3

【公演情報】
日韓文化交流企画 世田谷パブリックシアター+兵庫県立芸術文化センター 世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演
『ペール・ギュント』
【東京公演】12月6日(水)~12月24日(日) 世田谷パブリックシアター
【兵庫公演】12月30日(土)・31日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

【原作】ヘンリック・イプセン
【上演台本・演出】ヤン・ジョンウン

【出演】
浦井健治
趣里 万里紗 莉奈 梅村綾子
辻田暁 岡崎さつき
浅野雅博 石橋徹郎 碓井将大 古河耕史
いわいのふ健 今津雅晴 チョウヨンホ
キム・デジン イ・ファジョン キム・ボムジン ソ・ドンオ
ユン・ダギョン マルシア

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

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(文/エンタステージ編集部)

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