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朗読劇『少年口伝隊一九四五』保坂延彦×石山蓮華×久田莉子インタビュー「たった一つの言葉で世の中はガラリと変わる」

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原爆投下後のヒロシマで、新聞に代わってニュースを伝え歩く「口伝隊」。家族を失いながらも、「戦争」「災害」「放射能」の中で、懸命に生きようとした少年たちの姿を、井上ひさしが描いた朗読劇『少年口伝隊一九四五』が、2017年8月9日(水)に東京・練馬文化センター 小ホールにて上演される。「原爆を語らずして私たち日本人は何を語れるのか?そして感情を持たない事実を、どう朗読で表現するのか?師がぶち当たった巨大なエネルギーに思いを馳せるだけなのです」井上ひさしを師と仰ぐ、演出の保坂延彦はこう語った。出演者の石山蓮華と久田莉子も交え、作品に対する想いを聞いた。

朗読劇『少年口伝隊一九四五』インタビュー

戦争を知らない、若い世代にこそ伝えたい

――この公演を上演するにあたって、何かきっかけはあったんでしょうか?

保坂:極端なことを言うと「他のものを読んでしまうと自分の背骨がまっすぐいかない」と思うほどに、そもそも僕自身が、井上ひさしさんの小説・戯曲に傾倒してきたんですよね。僕は映画畑の人間なので、ほとんど演劇をやったことがありません。だからこそ、演劇と関わることがあるなら、その時は井上ひさしさんの作品をやりたいと前々から思っていたんです。「戦争」を題材にした井上さんの作品をね。

――『少年口伝隊一九四五』は、原爆投下後の広島。新聞にかわってニュースを伝え歩く「口伝隊」の少年たちを通して、戦争の惨さを描いています。

朗読劇『少年口伝隊一九四五』インタビュー_3

保坂:そうですね。『父と暮らせば』、『紙屋町さくらホテル』そして『少年口伝隊一九四五』。この3作品は、広島の原爆投下を受けて、井上さんが後世に伝えるべく記した戦争3部作と言われています。

――公演は8月9日。広島の3日後、長崎に原爆が投下された日本にとって忘れられない日ですね。

保坂:作品の舞台が広島なので、広島原爆投下の8月6日を第一候補に、長崎原爆投下の9日、そして、終戦記念日である15日を候補に挙げていました。だから、無事に9日にできることが決まった時は、よかったと思いました。

――石山さんと久田さんは、ご出演のお話が来た時はどういう気持ちでしたか?

石山:私たちはその時代を想像するしかできませんが、同時に今のこの時代から感じ取れることもあると思っています。日々、いろんなメディアを通じて、世界の情勢が動いているのを強く感じています。そういう感覚は、この作品の少年たちが感じていることに通じている気がして。この世界で起きる大きなことに関して、素直に驚いたり、憤りを覚えたり、うろたえる気持ちになったり・・・。そういった感覚を自分の中に溜めながら、井上ひさしさんの物語に真摯に向き合っているところです。

保坂:この朗読劇をやるのは2回目で、去年が初めてだったんですが、両国のホールがほぼ満席になったんですよ。そのことにまずびっくりしましたし、井上さんの力を改めて痛感しました。ただ、あんまり若い人たちの姿は見られなかったから、それは心残りになっていましたね。本当は若い人に来てもらえるのが、一番だと思うんです。

石山:そうですよね。

久田:私も平成生まれなので、自分はもちろん、周りに戦争を知っている人も少ない世代です。だから、まず本を読んで感じたのは大きな衝撃でした。「こんな日本があったのか」と、心がすごく揺さぶられました。

――当たり前ですが、戦争を知っている人は年々少なくなっていきます。感じることしかできない人たちが、感じていくしかない時代において、とても大切な作品ですよね。

保坂:そうなんです。今回の公演にあたって、前回とキャストを一新したのにも理由があって・・・。作品の幅がより広がるんじゃないかという気持ちももちろんありますが、同じメンバーでない方が、より多くの人に伝わるんじゃないかと思った、というのがありました。

朗読劇『少年口伝隊一九四五』インタビュー_4

石山:そういった保坂さんの想いや言葉の芯のようなもの、「若い人にこそ」っていうメッセージを受けて、出演するにあたり自分の世代を担うような気持ちも生まれています。そこに生きていた人、一生懸命生きてきたけれど亡くなってしまい、このことを伝えられない人たちの思いを伝えたいです。

久田:本を読んだ時の驚きとか、怒りとか、悲しみとか・・・そういった感情が「戦争をもっと知りたい、知っておかなくてはいけない」と、自分を突き動かしたように思います。私も「こういう人たちがいたんだよ」っていうことを少しでも多くの人に知ってほしいという思いです。

言葉によって感情が動き、体が動く

――実際にこういう風に演出をしていこうというイメージはあるのでしょうか?

保坂:口伝隊の少年は3人いるんですけど、それぞれ家庭も違うし、個があるんです。それが、原爆投下をきっかけに3人がつながる。そういう部分は大切にしたいですね。個性を大事にするというか。

石山:まだ配役が決まっていない(インタビュー時)というのもあるんですけど、役柄に関してはまだあまりガチガチに読み込んではいなくて。イメージを持ちすぎないようにしようというか・・・。考えていないわけでは、もちろんないんですけど、ちょっと不安だったので、今のお言葉を聞いて少し安心しました(笑)。

保坂:うん、それでいい。そういうのって、稽古の中で分かってくるものだと思うから。そのことにも通じるんだけど、やっぱり言葉そのものを大事にしたいね。

――確かに「口伝隊」という言葉どおり、言葉で伝えるということとその波力を改めて考えさせられる話ですよね。

保坂:そうですね。少年たちは本当のことを伝えたいのに、伝わってくるものが真実でなくて、それが怒りに変わるんですね。その怒りも、言葉でしか表現ができない。たった一つの言葉で世の中はガラリと変わってしまう。そんな言葉の持つ力は、井上さんの作品からも伝わるし、僕自身も感じています。言葉で伝えるってすごく難しいことだけど、言葉をきちんと伝えようとすると、自然と動きが出てくるんです。

朗読劇『少年口伝隊一九四五』インタビュー_5

――なるほど・・・。

保坂:例えばですけど、吉永小百合さんはじめ、いろんな俳優さんが原爆詩集を読むっていうのがありますよね。多くの人にとっての朗読のイメージってああいったものだと思うんです。でも、この作品ではもう少し動きをつけます。というか、動きはつくものなんです。詩であっても短い文であっても、言葉である限り、そのイメージによって感情が動く。自然に動きが出てくるものって、人を圧倒的に引き込むと思うんです。

久田:お芝居でもそうなんですけど、私は結構作り込もうとしてしまうから、正直不安な部分はあります・・・。

保坂:確かに前に舞台で見た久田さんは、作ろうとしている感じがしたね。でも「作れないでいるモヤモヤ」も伝わってきた。僕は、それを見た時に「いいな」って思ったんだよ。言葉を受けて自ずと動きが出てきたら、すごく良くなるんじゃないかなって。

久田:嬉しいです・・・。感覚的な部分を大事に、この作品に臨みたいです。

――最後に、8月9日の公演に向けて意気込みをお願いいたします。

石山:保坂さんや久田さんとお話をしていて、改めて、この作品に関われる喜びを感じました。大きなものに対して、言葉と文化で戦っていくっていうこと。井上ひさしさんの本を通して、そのことに関われること。それが私にとって、とても大きなことだと感じています。劇場に足を運んでくださった方に、その大きなものに立ち向かっていく勇気の種みたいなものを渡していけたら、という気持ちでいます。何かを手渡せたという手応えを感じられる朗読劇にするために、真摯に取り組んでいきたいです。

久田:最初にこの本を読んで感じた、一番ストレートな感情を、そのままお客さんを伝えられたらいいなと思っています。何よりもこの作品を通して感じることに敏感になって、しっかり伝えたい。作らずに挑みたい。多くのことはできないかもしれませんが、それだけは大事にしたいです。

保坂:僕自身が今まであまりやってこなかった生の芝居、朗読。そういうことに挑むからこそ、出演者・スタッフと一緒になって、この作品を作っていける部分があると思うんです。それが一番楽しみ。何よりも言葉を大切に、心の中から何かが溢れ出して、自ずと体が動く。そんな瞬間に重きを置いて、この『少年口伝隊一九四五』に向き合っていけたらと思います。

朗読劇『少年口伝隊一九四五』インタビュー_2

◆公演情報
朗読劇『少年口伝隊一九四五』
8月9日(水) 東京・練馬文化センター 小ホール(つつじホール)
【作】井上ひさし
【演出】保坂延彦
【出演】
林田麻里、石山蓮華、村松えり、國武綾、久田莉子、夏原諒
演奏:穂高政明、保坂真弓

【公演情報詳細】練馬文化センターHP

朗読劇『少年口伝隊一九四五』インタビュー_チラシ

(撮影/エンタステージ編集部)

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(文/杉田美粋)

少年口伝隊一九四五

作品情報少年口伝隊一九四五

原爆投下後。新聞のかわりにニュースを伝えて歩く「口伝隊」の少年たちがいた

  • 公演:
  • キャスト:林田麻里、石山蓮華、村松えり、國武綾、久田莉子、夏原諒

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