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インタビュー

OOPARTS vol.4『天国への階段』鈴井貴之インタビュー!「“絆”と対極にある“孤独死”を通して、人と人とのつながりを描く」

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2010年より鈴井貴之のソロプロジェクトとしてスタートした「OOPARTS」。2017年7月19日(水)より東京・サンシャイン劇場にて上演される、第4弾『天国への階段』のテーマは、孤独死した人が住んでいた場所を片付け、修復する特殊清掃員だ。

重い主題こそコミカルに。「深刻な問題をエンターテイメントとして伝えたい」と話す鈴井貴之に、執筆に至るきっかけや、演出の構想、作品に込めたメッセージを聞いた。

OOPARTS vol.4『天国への階段』鈴井貴之インタビュー

実情が広く知られていないからこそ選んだ、孤独死という主題

――孤独死の現場を清掃する「特殊清掃員」を作品のテーマに選んだ理由や、きっかけはあったのでしょうか?

僕の舞台は、どこかに人の死が背景にあるというか、死の匂いのする作品が多いんですよね。でもそれは裏を返せば生きることを描いているということなんです。生を描くのは死を描くことで、死を描くこともまた生を描くことだと思っています。ただ、生きるための理由や、どう生きていこうっていう方向性は自分で決められても、死ぬことは決められないですよね。そういうことを描きたいと思いました。

――ある日突然、一人で死んでしまう孤独死。世の中で実際に起きているその数は想像を絶する数なんですよね。

そうなんです。実際に交通事故死・自殺よりも多い年間3万2千人が孤独死しているっていう事実があって、でも、その孤独死の実情は広く知られていない。自分や自分の親の最期がそうだとしたら、いたたまれないですよね。2年くらい前に、特殊清掃員の方のドキュメンタリーを見て、現実は想像以上に厳しいと感じましたね。この現状を知った時から、自分の中で引っかかっていたんです。

OOPARTS vol.4『天国への階段』鈴井貴之インタビュー_2

――あらすじから、孤独死をした人の最期を想像してしまうのですが。

その時はやっぱり、どうにかして家の外に救いを求めたんじゃないかなって思うんです。安らかに死ぬんじゃなく、本気で誰かを求めてる。だけど、誰もいないっていう本当に悲しいエンディングなんです。若い頃はそんなことは考えていなかったですけど、こういう年齢になってよりリアルに考えるようになりましたね。僕自身、北海道の森の方で一人で暮らしていますので「もし、今ここで死んだら、何日かは絶対発見されないだろうな」とか、生活の中で思うんです。だからやっぱり、毎日TwitterやFacebookとかもあげなきゃいけないのかな、とか考えちゃいますよね(笑)。

――たしかに(笑)。SNSはそういうツールにもなりますよね。投稿を見て「元気そうだな」とか。こんな情報化社会の中でも、しばらくの間誰にも死んだことに気づかれないという人が多くいるんですよね。

東北で震災があってから、「絆」って言葉がいろんなところで言われるようになりましたよね。でも、孤独死ってその「絆」というものの対極にあることだと思うんです。「人と人とがつながって生まれる絆を大切にしていこう」っていう世の中の流れ、その一方で、何の絆も持たない人が3万2千人いて、無縁仏になっている。矛盾というわけではないですけど、その裏側ではこういうことも現実として存在しているんだよ、っていうことですね。

重いテーマを「エンターテインメント」として伝える難しさ

OOPARTS vol.4『天国への階段』鈴井貴之インタビュー_3

――「絆」と対極にある「孤独死」。この題材を演劇にするにあたって「こういう形でありたい」という展望はありますか?

死を扱っているものなので、もちろんドキュメンタリーや文献もかなり重いものでした。でも、それをどれだけエンターテインメントにできるかっていうのが僕たちのやろうとしていること。今回の挑戦であり、課題です。重いテーマのものを社会派的に、重たく皆さんに伝えるのは簡単だと思うんです、事実をなぞっていけばいいわけですから。反対に、重たいものを見て笑うというのは難しい。でも、最終的には観た人に「楽しかった」って言って欲しい。もちろん根底に流れるテーマで心を動かすこともあると思うんですが、基本的にはこの演劇を楽しんで欲しいと思っています。そういう風に観た人の心に残す形で、伝えたいですね。

――エンターテインメント性を追求する上で、こういう演出にしたい、こんなところにこだわりたいという構想はありますか?

特殊清掃員の人たちは、それが仕事だから淡々とやられているんですよね。もちろん思うところはあるでしょうけど、“こなさなければならない”わけだから。遺族との温度差というか、ギャップというか、そういうものってあると思うんです。例えばですけど、お葬式の後の火葬が終わったら、「お骨を砕いてください」って言われるじゃないですか?

OOPARTS vol.4『天国への階段』鈴井貴之インタビュー_4

――身内としてはなかなか心苦しい場面です。

そうそう。僕自身、父親が亡くなっているんですが、係の方に言われてお骨を砕いたんですけど、それでも骨壷に入りきらなかったんですね。そしたら、その係の人がグリグリって、思い切り骨を砕くんですよね。「人の親に何してんだよー!」っていう気持ちになりつつ、不謹慎で笑っちゃだめなんだけど、ちょっと笑ってしまったんです。これを毎日仕事としてやっている人はこうならざるを得ないけど、それを目の当たりにすると、思わず笑っちゃう。そういうことって現実としてあると思うんです。

――そういうシーンこそ、ギャップのある現象が起きますね。

別に死のシーンだけじゃなくって、松任谷由実さんの歌の中でも「今日に限って安いサンダルを履いていた」って歌詞があるんですよ。せっかく昔付き合っていた彼と再会したのに、なんで今日に限って私こんなんなの!っていう。こういうズレちゃうことって日常の中であることですよね。

――たしかに、そういったズレにこそ、生きていることのリアルを感じる気がします。

意図しないことがズレちゃうこと・・・それって、人間らしい部分であり、可笑しみなんですよね。そういう“ズレ”をあらゆるシーンで、事細かに表現したいと思ってます。

全貌がわからないキャスト陣とやることで得られる、未知数の可能性

OOPARTS vol.4『天国への階段』鈴井貴之インタビュー_5

――キャスティングについてもお聞きしたいのですが。

変な意味じゃなく、舞台はあまり色づけされていない方々と作りたいという気持ちがあるんです、この作品に限らず。これまでの出演作品やどんな俳優なのか、というのが世間的なイメージが強くない人というか。舞台は、一ヶ月の期間があるので、じっくり作り込んでいくことができる。その人のキャラクターをしっかり知って、その人がやったことないだろうなって思う役をやってもらいたいです。そういう思いが強いので、演劇においては僕自身も白紙のところから作り上げる感じですね。資料は見ますが、僕自身も予想がつかないキャラクターを演じてくれることを想像してキャスティングさせていただいています。

――公演ごとにガラリと変わる、個性的なキャスト陣も楽しみの一つです!

うまく言えないんですけど、OOPARTSに出てくださる方は、メジャーに活躍されている人や知る人ぞ知る役者さんだったり、いろんな方々に出演いただいて、それが良さでもあります。舞台経験の少ない方に出会って、一緒に作りたいっていう気持ちもありますし、「この人はどうなるか想像つかないからやってみたい」っていうひらめき。キャストの方に自分も刺激されるんです。

――鈴井さんの稽古場ならではの特色というか、“チーム鈴井”の持ち味みたいなものはありますか?

稽古が終わって「お疲れさまでした!」っていう声が聞こえた10秒後にはプシュって音がしますね。ビール缶が開くんです(笑)そこで小一時間「ああでもない、こうでもない」って芝居の話をするんです。キャリアや年上とか年下とか関係なく、スポーツみたいに一つの試合をやっていく感じで、チームとしてどれだけまとまっていけるか。野球やサッカーもそうじゃないですか、18歳の子もいれば30代の人もいる。それで年齢とか上下関係とかではなく、ポジションがある。フォワードなのか、ディフェンスなのかっていう役割ですね。

OOPARTS vol.4『天国への階段』鈴井貴之インタビュー_6

――なるほど!

逆に言うと、たまたま僕が書いて演出家っていうポジションに収まっているだけなんですよ。だから演出家が言ったから絶対こう!っていうことはしません。キャストはもちろん、スタッフさんにも色々出してもらいます。「ここはこういう照明どうですか?」っていう提案をもらって、それが面白そうだったらどんどん取り入れたい。そういう自由度の高いスタイルにしていると、みんながとても能動的になるんです。チャレンジする気風が高まってきて、僕が思っていた以上のものができる。所詮、個人で考えてることなんか、小さいし、限られたことだから。意見を言いやすいようにするためにも、まずビールを!(笑)

――新作の舞台、楽しみにしています!最後に、この作品を通して、一番伝えたいことは何でしょうか?

孤独死してしまった人、絆がなかった人でも、実はなんらかの形で人は人と関わっている、そういうことは伝えたいと思っています。「一人じゃないんだ」ってこと。孤独に死んだとしても、何か、誰かに影響を与えている。孤独感に苛まれている人や、「なんで生まれてきたんだろう?」って思ったり、人それぞれそういう時期ってあると思うんです。でも、生まれてきた以上、その人の人生が無駄とか、無意味なわけがない。誰かに影響を与えていたり、受けていたりするんです。矛盾しているかもしれないんですが、無縁仏・孤独死っていう設定の作品ではありますけど、結果的には人と人とのつながり、「絆」を感じる作品になればと思っています。

OOPARTS vol.4『天国への階段』鈴井貴之インタビュー_7

◆TAKAYUKI SUZUI PROJECT OOPARTS vol.4『天国への階段』
2017年7月19日(水)~7月25日(火)
東京・サンシャイン劇場ほか、全国5ヶ所で上演
【作・演出】鈴井貴之
【出演】永野宗典(ヨーロッパ企画)、畑中智行(キャラメルボックス)、菊地美香、根岸拓哉、平田 薫、戸澤 亮(NEXTAGE)、東 李苑、吉田悟郎、藤村忠寿(北海道テレビ)、鈴井貴之
【企画・製作】クリエイティブオフィスキュー
【公式サイト】http://ooparts-hokkaido.net/

ヘアメイク:白石義人(ima.)
スタイリスト:村留利弘(Yolken)

(撮影/エンタステージ編集部)

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(文/杉田美粋)

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