白井晃演出『春のめざめ』志尊淳×大野いとインタビュー!性に目覚める14歳の少年少女を描く


思春期の“性”と“生”の目覚めを描いたドイツ小説の名作『春のめざめ』が、2017年5月に白井晃演出で上演される。「ずっとこの作品を上演したかった」という白井の希望を実現するメンバーとして、性への好奇心と大人への不信感を抱えた14歳の主人公・メルヒオールに志尊淳、幼馴染ヴェントラに大野いとが抜擢された。2 0代の彼らが演じる、14歳の“春”とは・・・初共演となる二人に話を聞いた。

『春のめざめ』志尊淳×大野いとインタビュー

14歳、性への興味と大人への反発

――志尊さんと大野さんは舞台では初共演ですね。

志尊:そうなんです。前に一度、ほんの少し仕事でお会いしてはいたんですけど。第一印象としては、いとちゃんは穏やかでフワっとしているけれど、芯がすごく強そうな人、という感じを受けました。

大野:芯は強くありたいですね。私から見た志尊さんは、製作発表で演出の白井さんがおっしゃってたからか、すごく負けず嫌いなんだろうなという印象です。

『春のめざめ』志尊淳×大野いとインタビュー_4

志尊:えっ(笑)?どうかなあ・・・。確かに、負けず嫌いな部分もあると思います。演出の白井晃さんに初めてお会いしたのは、『春のめざめ』への出演が決まる前だったんですが、共通の知り合いの役者さんについて白井さんが「あの役者のことはしごいたなあ。僕、厳しいんだよ」とおっしゃっているのを聞いて「そうか、僕も白井さんとやりたいな」って思いました。そういうところは、負けず嫌いなのかも(笑)。

大野:白井さんは稽古をしっかりされるという話を聞きいていました。どんな感じの稽古なのか楽しみでもあり、ちょっとドキドキします・・・(※インタビューは稽古前に行われた)。

志尊:もう白井さんの胸に飛び込むしかないよ(笑)。僕も、出演が決まった時は嬉しい気持ちと同時に、不安もあったんです。最後に舞台に出演したのが3~4年前なので、舞台に立つってどんな感じだったっけ・・・と。お客さんを目の前にしているという“ライブ感”こそが舞台の醍醐味なのに、その感覚がすぐに思い出せなくて不安でした。しかも主演というプレッシャーもあって。でも、共演者やスタッフの皆さんとお会いしたことで「みんなで創っていくんだ」という現実感と安心が湧いてきて、やっとスタートラインに立てた気がしました。

『春のめざめ』志尊淳×大野いとインタビュー_7

大野:みんなで創っていくというのはすごく楽しみですよね。舞台って、長時間しっかりと同じメンバーで作品を創り上げていく。それが怖くもあり楽しみなところです。昨年、宮本亜門さん演出の『ライ王のテラス』に出演させていただいた時は、TBS赤坂ACTシアターという、すごく大きな劇場でしたけれど、今回、神奈川公演は200席の劇場なので、ぎゅっと詰まった感覚が得られるんじゃないかと期待しています。また違う雰囲気になるんだろうな。新しい経験をさせていただけることは、すごく嬉しいですね!

――お二人が演じるのは中学校・高校の幼馴染ですが、それぞれどんな役ですか?

大野:ヴェントラは、ちゃんと自己主張ができる女の子。すごくしっかりしているので、台詞で「14歳」だとわかった時には「え?14歳!?」と驚きました。自分の言葉をはっきり言えるところは、自分が同じ年齢だった頃よりもちょっと大人に感じます。舞台はドイツだから、日本との文化の違いもあるのかもしれないですけどね。でも、知らないことをお母さんに聞いたりするところは、私とも似てるかな。

志尊:僕の演じるメルヒオールは、好奇心が強くて、反発心も強い。14歳の彼が性に目覚めて知りたくなる気持ちには共感しました。これは、いろんな人に共通する感覚だと思います。特に思春期に“性”について知りたいという貪欲さは、誰しも強く持つものじゃないかな。僕も子どもの頃は、いとちゃんと同じように、知りたいと思うと母によく質問していました。でも、母は濁すんです。「なんで隠すんだろう?」と小さな不信感を抱いたこともありました。性についてのこと以外でも、大人に対して理不尽を感じることもあって「大人はこうなんでしょ」という閉鎖的な思考もありましたね。反発する気持ちが強かったから、14歳の僕はヤンチャ少年でしたよ。

『春のめざめ』志尊淳×大野いとインタビュー_2

大野:けっこうヤンチャだったんですか(笑)?

志尊:今振り返ってみるとそうだったなと思います(笑)。野球部の活動に集中していたし、勉強もしていたし、不良でもなかったけれど、人への接し方があまりよくなかった気がします・・・。と言っても、中学生までですよ!振り返れば「くだらないことしちゃったなあ」と。でも、その時の経験が今に活きていることもあるので、反抗期を早く終わらせて良かったなと思います。

大野:それはよかった(笑)。私とはぜんぜん違うタイプだったんですね。私はどちらかと言うと受け身で、学校でも人からの見え方を気にしていましたから。毎朝、家のドアを開ける前に「はぁ~」と一息ついてから出かけて、行けば学校はすぐに終わる・・・と言い聞かせていました。ヴェントラは真逆で、学校に行くのが好きそうな子ですけど、私はヴェントラみたいに自分の気持ちを言えなかったし、ヴェントラほど大人じゃなかったかな。先日14歳の女の子とお話したら、子どもだなと思うところもありました。でもきっと本人は自分のことを子どもだとは思っていないでしょうね。子どもだと思って14歳を演じるのではなく、ヴェントラという、一人のちゃんとした人間を演じていきたいなと思います。

『春のめざめ』志尊淳×大野いとインタビュー_5

ただ、素直に飛び込むだけ

――演出の白井晃さんは独特の美しい世界観を創られます。お会いしてみて、どんな方ですか?

大野:初めてお会いした時に思ったのは、「あぁ、普通の人じゃない」(笑)ということでした。芸術家、という感じの方だなと。モノを創っていて、KAAT(神奈川芸術劇場)の芸術監督で・・・独特の雰囲気がある方ですよね。

志尊:僕も“演劇を創る方”という印象だったな。たわいもないお話をしている時でも、すべての事に対して理論的で、いろんな考察が見えてくるんです。

大野:白井さんの演出された舞台を観たときも「こんな舞台の使い方があるんだ・・・」ってびっくりしましたね!『マハゴニー市の興亡』でも、舞台の奥から本物の車が現れたり、観客にプラカードを持たせて出演させたりと、驚くことばかりでした。

志尊:僕も3作品ほど拝見していますが、どれも作風が違っておもしろいなと思いました。『レディエント・バーミン』はブラックコメディで笑いに包まれていくし、『マーキュリー・ファー』はすごく重い題材で、僕は重いものは得意じゃないんですが引き込まれました。ミュージカル『わたしは真悟』は、楳図かずおさんのワールドだと一目で分かる世界感に仕上げられていましたし、どの作品も違うので、『春のめざめ』はどんな仕上がりになるのか、今からとても楽しみです。

『春のめざめ』志尊淳×大野いとインタビュー_6

――『春のめざめ』では、白井さんはあえて「舞台経験の少ない若い俳優たちと、この作品の創作に挑むことにした」そうですが、舞台に立つにあたって課題や目標はありますか?

志尊:僕は、とにかく自分ができる精一杯のことをしたいです。その延長線上に、何かを見つけられたり、成長できたらいいな。出演が決まってから顔合わせをするまでは「舞台に出演していない3年の間に自分が得たものを舞台上で見せなければ」という考えもありましたけれど、実際に皆さんと顔合わせをして、ビジュアル撮影をして、一緒に取材をうけて、記者発表をして・・・そういうことの積み重ねで、舞台に対するモードが作られていくのを感じているので、すべてはこれからですね。今は難しいことは考えず、ただ目の前のことに取り組んで、皆で創っていこうという気持ちです。

大野:そうですね。もちろん自分のお芝居の力も伸ばしていけたらいいなというのは思っていますけれど、何よりもこの舞台を成功させるために毎日必死でやっていくことですね。そして、自己満足にならないようにだけは気をつけたいです。自分が「あぁ今日上手くやれた~」と思っても、そう感じた時の演技の方が、かえって良くなかったりしますから。自分の感覚と作品の良し悪しは違うということを意識して、良い作品を皆さんにお届けすることを一番の目標として挑んでいきたいです。

『春のめざめ』志尊淳×大野いとインタビュー_3

◆公演情報
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『春のめざめ』
【神奈川公演】5月5日(金・祝)~5月23日(火) 神奈川芸術劇場 大スタジオ
※5月5日(金)・6日(土)はプレビュー公演
【京都公演】5月27日(土)・5月28日(日) ロームシアター京都 サウスホール
【福岡公演】6月4日(日) 北九州芸術劇場 中劇場
【兵庫公演】6月10日(土)・6月11日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

【原作】フランク・ヴェデキント
【構成・演出】白井晃
【音楽】降谷建志

【出演】
志尊淳 大野いと 栗原類
小川ゲン 中別府葵 北浦愛 安藤輪子 古木将也 吉田健悟 長友郁真 山根大弥
あめくみちこ 河内大和 那須佐代子 大鷹明良

『春のめざめ』志尊淳×大野いとインタビュー_8

◆プロフィール
志尊淳(しそんじゅん)
1995年生まれ、東京都出身。2011年俳優デビュー。主な舞台出演作はDステ『TRUMP』など。また、テレビ『烈車戦隊トッキュウジャー』(主演)、『表参道高校合唱部!』『あの日みた花の名前を僕たちはまだ知らない』、『5時から9時まで~私に恋したお坊さん~』、『きみはペット』や、映画『先輩と彼女』(主演)、『疾風ロンド』、『サバイバルファミリー』など。2017年4月29日には『帝一の國』の映画公開が控えている。本作にて本格ストレートプレイに初挑戦。

大野いと(おおのいと)
1995年生まれ、福岡県出身。映画『高校デビュー』のヒロインで女優デビュー。その後、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』、映画『天の茶助』(ヒロイン)に出演し、ベルリン国際映画祭にも参加。今後、映画『兄に愛されすぎて困ってます』『クジラの島の忘れもの』(主演)の公開を予定している。舞台出演作は、宮本亜門演出『ライ王のテラス』、音楽朗読劇『冷蔵庫のうえの人生』など。

(撮影/原地達浩)

チケットぴあ
最新情報をチェックしよう!
テキストのコピーはできません。