ミュージカル『わたしは真悟』小関裕太にインタビュー!「2ヶ月間の稽古はとても贅沢な時間です」


少年・悟と少女・真鈴の一途な愛と自我を宿す産業用ロボット真悟を巡り、意識とは愛とは何かを問う、楳図かずおの長編漫画「わたしは真悟」。その形而上学的テーマと今世を予言するかのような物語に熱狂的なファンも多いSF界の傑作が、20年以上の時を越えミュージカルとして動き出す。演出を手掛けるのは、フランスの鬼才フィリップ・ドゥクフレ。W主演に高畑充希と門脇麦を迎え、再起する意識と愛の物語は、現代でどのように描き出されるのか。

個性際立つキャラクターの中で、ヒロイン・真鈴に恋をするイギリス人青年ロビン役を演じるのは、小関裕太。プレビュー公演が近づく中、進む稽古の様子や自身の役作りについて話を聞いた。

ミュージカル『わたしは真悟』小関裕太インタビュー

――まず、ご出演や配役が決まった時のことを振り返っていただけますか?

すごくやりがいのある役だなと思いました。この役をどうやっていこうか、考えながらいろいろ試してみました。「この人の目はどう表現したらいいのか」とか、断片的なことから模索を始めましたね。

――イギリス人を演じるということで、実際にイギリスにも行かれたと伺いました。

イギリスにいる雰囲気って、感じたことがないと難しいなって思ったので行ってみました。現地で、ロビンっぽい人いないかなぁって街を眺めたり・・・(笑)。でも、イギリスには(ロビンの)イメージに合った人がいなかったんですよね。最近、ようやく渋谷で見つけたんですけど・・・。

――まさかの渋谷で!確かに表情が独特ですもんね。ご出演が決まった際、小関さんが「漫画に描かれるあの独特の表情を広い劇場でどうカタチにしていくか・・・」とコメントを寄せられていたのも印象的でした。

初見で見るとただの悪役という印象が強い役なんですけど、原作を何度も読まれている方は視点が違ったりもして・・・。嫌いは嫌いでも、「可哀想」とか「わからないんだね、盲目なんだね」っていう目線が含まれていたりもするんですよね。

ミュージカル『わたしは真悟』小関裕太インタビュー_2

――私も、ロビンにはちょっと切なさを感じます。このお話って、元を辿っていくと愛にぶつかる。すべてにおいて「愛」ありきなところがありますよね。

読み込んでいらっしゃいますね(笑)!「愛」ってものすごく大きなテーマで、それぞれの役によって「愛」の見え方が違うんですよね。僕は(原作の)悟は結構無機質だなと思うんですよ。門脇さん演じる悟も、グッとくる無機質さを持っている気がしてしびれます。無垢なんだけど、大人っぽくて・・・という絶妙な微妙さ。真悟は、機械なので無機質で感情がないものと思われがちなんだけど、実際は一番感情があったりして。

――そうですね。人間と機械、大人と子ども。物語の構造として、そういった対比は根底にありますよね。

ロビンを通して「大人が子どもを大人にしようとしている」ということを描こうとしていると同時に、純粋で、自分のことが好きで、周りが見えてないロビンは、僕の中では一番子どもに思えたりして・・・。一番子どもとして描かれているしずかが、本当は一番大人のように感じたりもするんです。そういう「大人と子ども」っていう構造について、しずか役の大原櫻子ちゃんと話したりもしました。

――確かに、登場人物の中でも小関さん演じるロビンは、子どものような純粋さと大人のもつ支配欲、どちらをも併せ持っていますよね。そういった役を演じる上でやりがいや苦労している点はありますか?

僕、ロビンが恋に落ちるのは初めてじゃない気もしていて・・・。と、こういう風に深めがいがある役なんですよね(笑)。楳図さんの描き方もこれ!って決まったように描いていらっしゃらないので、皆で話していても、人によって登場人物の印象が全然違うんです。同じ「嫌い」でも、理由が全然違っていたり。そういう意味で、とにかく模索しがいがあります。それは、この登場人物を演じる難しさでもあり、やりがいでもありますね。

――何故か、真鈴はロビンの初恋だと勝手に思い込んでいた自分がいました・・・!

例えばですけど、ロビンは今までたくさんのイギリスの女の子に恋をして告白していた、そんな中、日本人の子(真鈴)と出会って「この子がかわいい!今までで一番好き!」ってなった場面を描いているのかもしれない。正解じゃないかもしれないけど、そういう可能性もあるじゃないですか?そういう風に、描かれていない部分のことも想像しながら「ロビンってどういう人間なんだろう」って模索するのはとても楽しいです。

――演出・振付のフィリップ・ドゥクフレさんはどういう風に稽古を進められるんですか?

大枠ができるまでがすごく早かったんですよ。稽古期間は2ヶ月あるんですが、かなり早い段階で通し稽古ができるようになったんです。そこから崩して、また作って、崩して・・・それを繰り返して模索しつつ、作っていっています。これから映像作業や技術的な作業が加わって最終段階を迎えるんですけど、2ヶ月間、とても贅沢な時間を過ごさせていただいています。この時間の中でしか見つけられないものがあるんじゃないかなと思って、楽しんでいます。

ミュージカル『わたしは真悟』小関裕太インタビュー_3

――2ヶ月の稽古期間もそうですが、作品としてかなり骨組みがしっかりとした構造なんですね。

そうですね。ガンダムみたいなイメージです!骨組みがあって、中に人が乗り込んで、ガンダムとして動かすみたいな・・・(笑)。

――ここまでの稽古を経て、共演者の方々の印象はどうですか?

個性的な方ばかりで、取り組み方が一人一人違っていらっしゃっておもしろいです。お互いに「あの人はこうやってやるんだなあ」って思いながら、それが積み重なって、盛り上がって、進んでいく・・・そういった厚みのある、とても興味深い現場です。

――稽古期間や方法含め、そういった流れで稽古を固めていくのは、海外の方が手掛けられているという点も大きいのでしょうか?

もちろんフランスの演出家の方の持つ特色もあると思いますし、フィリップが作りこんでいく作業をとても重視しているからだと思います。フィリップは「とりあえず自分の持ってるもの全部出してください」っていう方法で構えている方なんです。だから、自分をさらけ出していかなければいけないんですけど、その感覚にはすぐに慣れることができました。

――小関さんは幼少期からタップなどダンス経験が豊富でいらっしゃいますよね。フィリップさんもパントマイムをはじめ、身体表現をとても豊かに多用される演出家さんですが、身体表現面でも感じることはありますか?

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ものすごくありますね!例えば、フィリップは「叫ぶ」とか「見る」という行為や、「どうして行ってしまうの」といった文脈まで身体で表現してみたりするんです。そういうのは今までに経験がなかったので、とてもおもしろいですね。

――想像を超えた世界が観られそうです。

音楽も素晴らしいので、楽しんでいただけると思います!フィリップも「最高の音楽だ」って言っていて、すごく気に入っているみたいです。ミュージカルですし、音楽はとても重要な要素ですよね。
それから、脚本を書かれた谷賢一さんご自身が楳図さんの作品がとても大切にしていらっしゃって、原作の世界観をかなり残していらっしゃいます。なので、きっと原作ファンの方にも楽しんでいただけると思っています。

――原作は20年以上前ですが、科学や技術の進歩でロボットや人工知能がより身近になった分、この物語が今の時代に立体として立ち上がることにすごく意味を感じます。

20年以上も前に、こういった内容の作品が生まれていたということが、ものすごいことだなって思います。そんな原作に、演出家や作曲家の世界観、脚本のこだわり、そして役者の存在が加わっていき、舞台の作品として新たに完成させられたらと思っています。そして、舞台を観終わったあとにも、「アイ」が残ればいいなと思いますね。

――最後に、作品を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

誰が観ても“傑作だと思える作品”ってあると思うので、この作品もそうなればいいなって思っています。漫画では「妄想」というアバウトな描写の部分も、舞台では「生モノ」になります。音楽や照明が重なって、目の前にある。役者がそこにいるということ。人の妄想がライブとして生きている感覚は、演劇を初めて観る方にとっては衝撃だと思います。そういうものを目の当たりにできる作品ですし、観客の皆さんの主観の中で繰り広げられつつ、目の前に実際に広がっているものとして、お芝居のおもしろさを感じに来ていただければと思います。

ミュージカル『わたしは真悟』小関裕太インタビュー_5

◆公演情報
ミュージカル『わたしは真悟』
【原作】楳図かずお『わたしは真悟』(小学館刊) 
【脚本】谷賢一
【音楽】トクマルシューゴ、阿部海太郎
【歌詞】青葉市子
【演出・振付】フィリップ・ドゥクフレ
【演出協力】白井晃
【出演】高畑充希、門脇 麦、小関裕太、大原櫻子、成河ほか

◆公演日程
<プレビュー公演>
【神奈川公演】
2016年12月2日(金)~12月3日(土) KAAT神奈川芸術劇場<ホール>
<ツアー日程>
【静岡公演】
2016年12月9日(金) 浜松市浜北文化センター 大ホール
【富山公演】
2016年12月15日(木) 富山市芸術文化ホール
【京都公演】
2016年12月23日(金)~12月25日(日) ロームシアター京都 メインホール

【東京公演】
2017年1月8日(日)~1月26日(木) 新国立劇場 中劇場

◆プロフィール
小関裕太(こせきゆうた)
1995年6月8日生まれ、東京都出身。『天才テレビくんMAX』(NHK)などで子役としてキャリアをスタート。ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンをはじめ、映画やドラマ、CMなど多方面で活躍。近年の出演作は、TVドラマ『ごめんね青春』『ホテルコンシェルジュ』、ナオト・インティライミとW主演を務めた舞台『DNA-SHARAKU』、映画『ドロメ』など。2018年には映画『曇天に笑う』の公開が控えている。

■スタッフクレジット:
ヘアメイク/☆MIZUHO☆(vitamins)
スタイリスト/澤﨑智彦

(撮影/関口佳代)

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