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劇団四季ミュージカル『ウェストサイド物語』ベルナルド役の萩原隆匡にインタビュー!「稽古場はギリギリの状態でした」

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1974年の初演以来、劇団四季のレパートリー作品として多くの観客に愛され続ける『ウェストサイド物語』。今回はオリジナル演出・振付を担当したジェローム・ロビンスの魂を受け継ぐジョーイ・マクニーリー氏による新演出での上演となる。

熱狂の東京公演を終え、いよいよ6月25日(土)から全国公演をスタートさせる本作で、シャーク団のリーダー・ベルナルド役を演じるひとり、萩原隆匡に話を聞いた。

劇団四季ミュージカル『ウェストサイド物語』萩原隆匡インタビュー

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ベルナルドは“怒りが広がっていく”人物

――80年代から四季の『ウェストサイド物語』を観ているのですが、今回の新演出で登場人物たちの感情のうねりがかなりビビッドになったと感じました。特にベルナルドは常に怒りをたたえているなあ、と。

本当にその通りで、これまでの演出と比べて、今回はそれぞれの感情の表出がより鮮やかになっていると思います。演出のジョーイ・マクニーリーさんからは「なぜベルナルドが怒っているのか」という点に関してしっかり説明していただきましたので、そのことに迷いはなかったですね。ベルナルドの怒りについてはその裏付けをしっかり考えて演じられるよう常に意識しています。

ジョーイさんからは「ベルナルドは怒りが広がっていく人物」とイメージを伝えられました。元はプエルトリコからアメリカに来て、部外者扱いや差別を受けたという怒りなのですが、そこからそれがどんどん波紋のように家族や仲間にも広がっていき、自分でも抑えが利かなくなってしまうんです。

――今回は俳優さんご自身の中から出る“エモーショナル”なうねりが重要視されたとも伺っています。

その点に関してはジョーイさんからかなり細やかな指摘がありました。稽古でも自分の中にある感情を引きずり出すという作業が多くて、稽古中に感情を高ぶらせて泣いてしまう俳優もいました。そこまで自らを追い込んで行かないと、少年たちがどんどん転がり落ちていってしまうというこの作品の核の部分に辿り着かなかったのかもしれません。

劇団四季ミュージカル『ウェストサイド物語』萩原隆匡インタビュー_2

――ヒロインであるマリアもとても強かったです・・・目に見える部分と芯の部分の両方で。

ジョーイさんは「今回は女性にもフィーチャーした『ウェストサイド物語』を作りたい」とおっしゃっていましたので、その点も演出意図の一つだと思います。『ウェストサイド物語』は、男たちが表に出る時間も多いのですが、単なる“男同士の対決物語”にするのではなく、それに翻弄されながら強く生きようとする女性の姿も見せていきたいんだ、というお話がありました。

――萩原さんご自身が一番好きなシーンはどこでしょう。

ベルナルドとアニタたち女性の価値観の違いが露呈し、そこから華やかなナンバー「アメリカ」に繋がっていく場面は好きですね。ベルナルドもアニタやシャーク団の女性たちのように柔軟に考えられれば普通に生きていけるのでしょうが、彼はそれが出来ない訳です。

これは役を作り上げる過程で聞いた話なんですが、向こうの人たちは強く愛し合っていればいるほど、道端でもどこでも本気のケンカをするんだそうです。それで周囲の人たちもそれを一つのイベントとして楽しみながら見ているらしくて。もしかしたら彼らにとってケンカは愛情を伴った究極のコミュニケーションなのかもしれませんね(笑)。まあ、ベルナルドは大抵アニタに負けちゃうんですけど(笑)。

劇団四季ミュージカル『ウェストサイド物語』萩原隆匡インタビュー_3

――萩原さんは以前の演出でもベルナルドを演じられています。同じ作品、同じ役で演出の方向性が変わるということに対して戸惑いはありませんでしたか?

正直、戸惑いはありました。僕は同じ作品の同じ役を違う演出で演じるということ自体が初めてでしたので。

――そこをどう埋めていったのか伺いたいです。

それはジョーイさんはじめ、スタッフさんとのディスカッション等で、ベルナルドが「なぜそうなるのか」ということをきっちり納得して自分の中に入れ込んでいったことで、かなりの部分が解消できました。ただ、頭で分かっていることと、実際に演じてそれを成立させることはまた違っていて、その部分ではかなり葛藤しましたね。「お客さまに自分の表現がどう見えているのか」ということも今回は特にたくさん考えました。

――以前は、ウォーミングアップが終わって本番の準備に入ったところから、ジェット団とシャーク団のメンバーは互いに喋らないようにしていると聞いたのですが。

実は今回は逆だったんです。と言うのも、この作品は舞台上で敵対するグループ同士が罵り合ったり汚い言葉を使ったりするのですが、その状態をオフステージにも持ち込んでしまうと精神的に良くないだろうということで。

二幕でアニタがドラッグストアに行って酷い目に遭う場面がありますよね。あのシーンも本気でやらないと伝わりませんので、舞台上の俳優たちは徹底的に演じているんです。かなり侮辱的な言葉も吐いていますし、本当にハードな場面だと思います。でもそれくらいやらないとリアルな状況がお客さまには伝わらないんです。だからこそ、オフではよりコミュニケーションを密に取ろうとカンパニーの皆で意識しています。

劇団四季ミュージカル『ウェストサイド物語』萩原隆匡インタビュー_4

ジーニーが一瞬で観客と“友だち”になる方法

――萩原さんが出演なさった他の作品についても伺わせて下さい。『アラジン』ではカシーム役とジーニー役を演じられています。新作で短期間のうちに二役やられるのはかなり珍しいことだと思うのですが。

ジーニー役を勉強するよう言われた時は正直「大変だ・・・」とも思ったのですが、実際に稽古をしてみると、音楽や台本に書かれた台詞に助けられて、どんどん楽しめるようになったんです。だから稽古も“苦しい”というよりは“楽しい”の比率の方が高かったかもしれません。

――ちょっとおネェモードも足されていたり(笑)。

キャラクターを深めていく内に、もう少しインパクトが必要というアドバイスもあり、いろいろな方向性を探りました。そんな中、客席のお客さまと舞台上のジーニーが一瞬で“友だち”になる方法の一つ・・・親しみやすさの表現の一つとしておネェっぽい喋り方を入れてみるのもいいんじゃないかとトライしてみたんです。とは言え、全編そうした訳ではなく、場面としてはそんなに多くはないのですが・・・かなりインパクトが大きかったようで、たくさんの方からご指摘いただきました(笑)。

――2015年はジーニー、カシームとともに『クレイジー・フォー・ユー』のボビーも演じられました。

劇団四季ミュージカル『ウェストサイド物語』萩原隆匡インタビュー_5

2015年は自分にとってもビックリするような年でした。ボビーは本当に難しかったし、すべてが厳しかったです。歌も踊りも芝居も全部完璧に成立させなければいけませんし。実は先に『アラジン』のジーニーを演じたこともあって、自分なりに頑張れば、ボビーも何とか形に出来るのでは・・・なんて稽古前までは思っていたんですが、それは大きな間違いでした・・・本当にどん底まで叩き落されましたよ。そこから這い上がるのはすごく大変でしたが、劇場でお客さまの笑い声や拍手を聞いて、少しずつ浮上していきました。お客さまに助けられたんです。

――最後に萩原さんのオフタイム・・・お休みの日の過ごし方について伺えると嬉しいです。

休みの日の過ごし方・・・僕、これといってないかもしれません(笑)。強いていえば遅くまで寝て、その後の時間を自由に使えるという、ある種の開放感に浸ることでしょうか。例えばアイスを食べたいって思っても、その後に舞台があると喉を冷やせないな・・・って普段は我慢するんです。でも休みの日はそういったことをあまり考えずに、ふらっと目に入ったお店で好きなものを食べてみたり、散歩の途中で周辺にある美味しいお店を検索してちょっと行ってみようかな、なんて思ったり。オフの日は何気ない自由な時間を楽しんでいます。

劇団四季ミュージカル『ウェストサイド物語』萩原隆匡インタビュー_6

新演出の『ウェストサイド物語』を客席で観て、萩原隆匡演じるベルナルドの印象が非常に強く心に残った。赤い火と青い炎とを混在させたベルナルドの“怒り”。その根源がどこにあるのか知りたくて、マチネの終演後、彼に話を聞いた。

作品や役について語る萩原のトークは、熱を持ちながらも基本理性的。慎重に言葉を選びながら、ストレートに話を展開していく。だが、自身のことやプライベートの過ごし方に話が及ぶと天然モードも見え隠れし、その落差が面白い。

短い期間内でジーニー、ベルナルド、そしてボビーという難役三役をすべてやり遂げた俳優は、おそらく世界でも萩原隆匡ひとりだろう。そんな彼が全国公演でどんなベルナルドを魅せて来るのか・・・注目したい。

◆劇団四季『ウェストサイド物語』
2016年6月25日(土)13時開演 府中の森芸術劇場どりーむほーるより全国公演スタート
https://www.shiki.jp/applause/wss/

(撮影/高橋将志)

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(文/上村由紀子)

Sorry, no image.

作品情報ウエストサイド物語

時代を超えた衝撃。このミュージカルには神が宿っている。

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