『現代狂言Ⅹ』南原清隆×野村万蔵にインタビュー!「能舞台で“今”と“昔”が一緒に踊るエンターテインメントを楽しんでください!」


時代を超えた人間の喜怒哀楽を表現し、大きな感動と爆笑の渦を全国各地に巻き起こしてきた『現代狂言』。2016年2月14日(日)、福岡・大濠公園能楽堂で幕を開けた本公演は、節目となる第10回を迎えた。『現代狂言』シリーズに出演し、台本・演出も手掛ける、南原清隆・野村万蔵の二人に大人気シリーズを振り返りながら、本公演の抱負を語ってもらった。

『現代狂言Ⅹ』南原清隆×野村万蔵インタビュー

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――南原さんと万蔵さんは現代狂言の台本や演出に携わられていますね。『現代狂言Ⅸ』の「ことだま交差点」では人のつながりを強く感じました。

万蔵:面白かったでしょう?「ことだま交差点」。

南原:やっぱりテーマは自然と人とのつながりになっていきますね。

万蔵:いつもナンチャンとこうしたいああしたいと原案を考えていくんですが、現代の希薄でドライなつながりよりも、古き良き時代が好きみたい。

南原:そうですね。

万蔵:「忘れられた昔の良いところを思い出そうよ」というような感じになるんだよね。

南原:僕は落語もやらせてもらっているんですが、古典をやっているとそういう気持ちが強くなるんですよね。この舞台はそこをすごく刺激されるんです。

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(現代狂言Ⅸ「ことだま交差点」)

――南原さん、狂言との出会いについて遡っていただけますか?

南原:初めて見たのは高校生の時だったんです。古典芸能部に入っていて。そこが原風景だったんですかね。
お笑いの世界に入って、コントをしながら色々思うこともありまして・・・そうしているうちに野村万之丞さん(万蔵の兄)に出会って番組で狂言にチャレンジことになったんです。取り組んでいくうちに、「これだ!」と。僕の長年求めていた形、モヤモヤしたものを紐解いてくれました。
そこから、「現代人が出演する現代狂言をやろうよ!」と誘っていただいて始まりました。

残念ながらお兄さんは突然他界されてしまったんですが、弟の万蔵さんが「やろう!」と言ってくれたんです。

――万蔵さんは最初携わられたとき、『現代狂言』についてはどう思われていましたか?

万蔵:最初はしっかり入り込まなかったんです。監修という客観的な立場で1回目はご一緒させていただいて。不安もありましたが、その時の真面目な取組み方や新しいものを作る熱意に触れて、「よし、どんどんやっていこう」という気持ちになりました。

今でも正解はわからないのですが、最初から5回目くらいは、どこを強調するのか、どうやったら狂言とコントは合致するのか、と暗中模索でした。毎回お客様の反応で、「こういうものは受け入れられるんだ」と思う。やってみて、ですよ。本当に(笑)。

『現代狂言Ⅹ』南原清隆×野村万蔵インタビュー_7

――狂言は舞(まい)・謡(うたい)・語りが柱になっていると聞きますが、南原さんにとっては難しい部分はどこでしょうか?

南原:やっぱり語りは難しいですね。例えるなら・・・言葉のオーケストラといいますか。オーケストラは、楽譜に沿ってやっていかなければならないけれどその中にほんの少し自由がある。その自由を求めるためには楽譜をしっかり読み込ませて、楽譜どおりにやらなければいけないという。狂言の語りも同じことが言えますね。

舞も謡も本当に難しいですけどね。これまで勝手気ままに自由にやってきた人間ですから(笑)。本当によく脳を使います。

――逆に、万蔵さんはご指導されるにあたって難しい部分はどこでしょうか?

万蔵:一年通してという訳ではなく、その時期だけなので、何年か重ねて公演をしていても忘れていく部分はありますよね。舞も謡も語りも全部難しいんですが、全部を教えようとしても大変。この人の得意なところを指導していったり、壁を乗り越えてくれそうな人には少し上の挑戦をしてもらったり・・・全員に同じ指導をするというよりは、個々にレベルアップしてもらってチームを作っていく。そういう感じかな。

『現代狂言Ⅹ』南原清隆×野村万蔵インタビュー_3

(現代狂言Ⅶ「橋」)

――過去の公演の中で、印象に残っている演目を教えてください。

万蔵:昨年の公演(『現代狂言Ⅸ』)も捨てがたいんだけど・・・どれか一つということであれば、自分が河童を演じた「橋」(『現代狂言Ⅶ』かな。いい作品というより、僕の中で「現代狂言ってこういうやり方かな」っていうヒントになった作品です。

南原:僕も昨年の「ことだま交差点」は好きなんですが・・・理不尽大魔王が出演する「サードライフ」(現代狂言Ⅲ)ですね。こういう風に作っていけば現代狂言が前に進めるんだなっていう方向性が見えた感じがしましたね。

万蔵:一発芸やらされたなぁ・・・「ハッとしてGood!」やった(笑)。

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(現代狂言Ⅲ「サードライフ」)

南原:今と比べるとね、コント色が強かったんですよ。コント7割ぐらいで(笑)。メッセージを受け止めてもらいやすい舞台だなって思ったんです。そこから先も色々やりましたけど、そういう意味では「サードライフ」かな。

万蔵:現代狂言新作は“今”がベース。“今”に“古いもの”だったり“過去”だったりを引っ張り込もうとしようとしている。“今”が引っ張り込んでいるんだけれども、自然と“古いもの”が支えてくれているという、そういう作り方をしていますね。

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――最後に本公演の見どころ、ご覧になる方へのメッセージをお願いします。

万蔵:古典も新作もつながっているんですよね。物事は表裏一体で同じなんだと。古典を見ても新作を見ても「なるほど」と思っていただける作品になっていると思います。

南原:今回の新作は、今までよりエンターテインメントの部分が強くなっていて、ミュージカルの要素もあったりします。ミュージカルも自分の感情が高まる部分で歌での表現がある。狂言も能もいい部分で謡になるという部分で同じなんです。能舞台で和と洋が一緒になる、昔と今が一緒になって踊る・・・そういうエンターテインメントを楽しんでいただきたいなと思っています。

万蔵:今回は狂言ミュージカルを目指してみたんです。

――そうですね!まさかのあの名曲を歌われるという・・・。

万蔵:そう、自分で歌いたかったんだもんね!

南原:高校の時にすごくハマっていたんですよ。原曲も歌えるんです!(笑)

――先ほどの公開稽古でも素晴らしい歌声でしたね!

万蔵:(観客の)アンケートでね、狙ってるんですよ。「ナンチャン、歌うまい!」っていう(笑)。

南原:いや、狙ってないんですよ。ただ、「まあ、いいか」って(笑)。何か歌うとしたらやっぱりこの歌が好きだなって。

万蔵:他の人は四苦八苦していますよ(笑)。

南原:でも僕、「運命」の譜に乗せて詞を書くのも大変だったんですよ!何百回も聞いて、何百回も詞を重ねて・・・夏休み、ほぼ使いましたからね(笑)。

『現代狂言Ⅹ』南原清隆×野村万蔵インタビュー_5

現代狂言の面白さ、奥深さ。見終わった後に訪れるさわやかな感動。これは出演者のたゆまない努力と、南原清隆・野村万蔵のあくなき探求心、チャレンジ精神がもたらすものである。南原が歌う名曲は『現代狂言Ⅹ』をご覧になる方だけのお楽しみとさせていただこう。古典狂言の魅力と現代コントの魅力、両方を余すところなく楽しめる“新しく古き良きエンターテインメント”。能楽堂でぜひ楽しんでいただきたい。

◆『現代狂言Ⅹ』 公演スケジュール◆
(宮城公演)2月20日(土) 松島町文化観光交流館
(島根公演)2月27日(土) 隠岐島文化会館
(東京公演)3月4日(金)~5日(土) 国立能楽堂
(埼玉公演)3月6日(日) 所沢市民文化センターミューズ マーキーホール
(香川公演)3月12日(土) 琴平町・金丸座
(愛媛公演)3月13日(日) 内子町・内子座
(岐阜公演)3月19日(土) 下呂交流会館

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