HEADLINE

インタビュー

加藤忍一人芝居『花いちもんめ』本番直前インタビュー「初めて読んだ日からいつか絶対演りたかった作品」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

加藤健一事務所での公演をはじめ、声優業やコンサートライブなど様々な場での活躍を見せる女優、加藤忍。2015年10月8日(木)からは、下北駅前劇場にて一人芝居『花いちもんめ』が上演される。舞台の度に七変化する佇まいや表情を以って観客を魅了する彼女がたった一人で織りなす物語とは? 加藤忍と、演出を手掛ける加藤健一の二人に、本番直前の心境を聞いた。

加藤健一、加藤忍『花いちもんめ』

関連記事:加藤健一事務所「滝沢家の内乱」稽古場インタビュー。「二人芝居はお芝居の最高峰。登りきるところを見せたい」「髙瀬さんにがんばったって言ってもらえるように」

――今回はお一人での舞台となりますね。

忍:怖いです…(笑)5年ぶりの再演の芝居なんですけど、初演の時は袖から出て行く時に「もう出られない」って思うくらいに緊張しました。当時に比べたら、落ち着いて取り組めているのかなって。制作や宣伝なども私がしているので、今日まであっという間でした。

――再演ですが、今回の見どころはどんなところでしょうか?

忍:ストーリーとしては、満州に開拓団としていった女性が第二次世界大戦で家族を失い、強くたくましく生きていくお話です。宮本さんの本なので、反戦や社会的な要素はもちろんありますが、私は生き方や愛を強く感じていて、とくに、母と娘の愛情の物語という風に捉えています。

加藤健一、加藤忍『花いちもんめ』2

――5年前とご自身が変わった点などはありましたか?

忍:自分ではもっと変わるのかなって思ってたんですけど、案外変わってないのかなって。自分ではわからないもので…(笑)。どうですか?

加藤:今回の稽古に入ってみて、テクニック的にも5年間で非常にうまくなられてるというか、さすが経験積まれているなっていう感じはしましたね。年何本も芝居やられているんで。

忍:たしかに、声は自分でも少し低くなったかなって感じます(笑)。60代と2,30代を生きるんですが、母っていう年配の女性を演じるにあたっては、自分の中で一番落ち着いた口調になりますね。

加藤:18歳でお嫁に行って子どもを産んで、家族を亡くして日本に帰ってきた女性が、60代になって、四国八十八箇所のお参りにいく道中で一人語りを始めるんですね。ふっ、と20〜30代に時が遡る。そういった場合、何歳の女性が演じるのが一番いいのかってところなんですけど、5年前より、その辺りにすごく寄り添っておられて、とてもいいなって。

加藤忍『花いちもんめ』2

――忍さんにとって、とても思い入れのある作品だとか。

忍:そうなんです。宮本さんの本が何より素晴らしくて、初めて読んだのはもう20年近く前なんですけど、一読した時に、いつか絶対やりたいと思っていた作品なんです。

――長年の想いが詰まった一作なんですね。今回の役柄を演じるにあたって、特に大切にしている部分はありますか?

忍:今回は見せ方や計算はなくて、とにかく、この素晴らしい作品に詰まった宮本さんの想いを伝えなきゃ、観る方に感じて欲しいっていう素直な気持ちが強いです。それは5年前から変わりませんね。そういった意味で私自身の心持ちに変化はさほどないのですが、演出はどうですか? 何か変わりました?

加藤:演出って言っても今回は忍さんに委ねて、ほとんど見ているだけです。ただ、このお芝居は母ものシリーズの一本として書かれたもの。井上ひさしさんの『化粧』とかもそうなんですけど。

なので、“母”を強く意識して演出はしていますね、反戦や社会性というよりも、母の存在の見え方にこだわっています。あと、この芝居の初演の演出をしたのは、わたしの師匠だった早野寿郎さんという方なんです。そういう意味ではすごく縁を感じますね。

加藤忍『花いちもんめ』1

――それはすごく巡り合わせを感じますね。世代を越えて語り継がれているというか…。

忍:わたしが加藤健一事務所の養成所に入った頃から、素晴らしい演出家の方がいたという風にお名前は聞いていました。私としても感慨深いです。

――そんな想いを背負って立たれる忍さんですが、「一人芝居」の楽しみがありましたら教えて下さい!

加藤忍『花いちもんめ』3

忍:初演の時に初めて経験したのですが、一人芝居って自分も緊張しているんですけど、観ている方の緊張もすごく感じるんです。ただ、そこに立っているのは私ひとりなので、入り込んでもらえると、感情に深く入ってきて下さっているのが分かって…。そういった一体感がありますね。同じ波に乗っているような。

――心の距離感が近いという感覚でしょうか?

忍:そう。不思議なんですがその瞬間、一気に恐怖がなくなるんです。お客さんと一緒にお芝居を作っている感覚はどの作品でも一緒ですが、より密接な感じを味わえます。恐怖と裏腹に他にはない一体の喜びです。加藤さんどうですか?

加藤:ワンマンショーもそうですけど、ひとり会っていうのはその人自身の技量を観るっていうところもあって…。落語なんかもそうですが、「さすがにうまいな!」っていうのが、もろに見えてくるんです。そこをお客さんがどれだけ評価してくれるかっていう部分。これはやる側も見る側も楽しみの一つですね。

忍:たしかに。演じる側としては怖いですけれど、同時に、一人芝居にしかない魅力でもありますね。

加藤:他の芝居は、演出が助けたり、掛け合いの面白さで魅せたりってできるけど、そういう意味では、全てをそぎ落とされた状態の芝居だからね。演出の力もさほど通用しない。

――聞けば聞くほど、そんな中で演じられる役者さんはすごいなと思います。

加藤:やっぱり、1時間以上飽きさせないって大変なことですよ。もちろん、やりやすい部分もありますよ。山の単独登頂と同じで、下手に2人で組んで失敗しちゃうこともあるしね。2人で組んで遭難しちゃう人が多いみたいに(笑)。

――では、最後に忍さん、公演に向けて意気込みを一言お願いいたします!

忍:20年ほど前に出会った私にとって特別な作品です。「ひとり芝居」ではありますが、ひとりの女性を生きることで、物語に詰まった想いを精一杯伝えたいと思います。

加藤健一、加藤忍『花いちもんめ』3

◇加藤忍 プロフィール◇
1973年10月22日生まれ。神奈川県出身。加藤健一事務所俳優教室出身。2004『コミック・ポテンシャル』『バッファローの月』で第39回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。2007に舞台『コミック・ポテンシャル』の再演で第62回文化庁芸術祭新人賞(演劇部門)を受賞。2007年度岡山市民劇場賞受賞。現在は舞台、映画、テレビ、ライブ等で活動中。映画『シンデレラ』では、アナスタシア役ホリデイ・グレインジャーの声を務める。

◇加藤健一 プロフィール◇
1949年10月31日生まれ。静岡県出身。高校卒業後、半年間のサラリーマン生活を経て、劇団俳優小劇場の養成所に入所。その後、劇団新芸を結成し、劇団つかこうへい事務所の作品にも出演。1980年に一人芝居『審判』を上演するため、加藤健一事務所を設立。1986年には加藤健一事務所俳優教室を開設し、若手俳優の育成にも力を入れている。これまで文化庁芸術選奨新人賞、第11回読売演劇大賞優秀男優賞、文化庁芸術選奨文部科学大臣賞など、さまざまな賞を受賞。2007年には紫綬褒章を受章。12月12日公開の映画『母と暮せば』に出演。

◇加藤忍一人芝居『花いちもんめ』◇
2015年10月8日(木)~10月11日(日) 下北沢・駅前劇場

<出演>
加藤忍

<演出>
加藤健一

<作>
宮本研

撮影協力:Le CoCO
東京都杉並区荻窪5-17-6 トーワビル1F
ホームページ:http://tabelog.com/tokyo/A1319/A131906/13012913/

  • 1

(文/杉田美粋)

RELATED TOPICS

関連記事

注目のキーワード

今エンタステージで話題のキーワード一覧

RANKING

アクセスランキング

HOT ENTRY

注目のインタビュー

INTERVIEW

独占インタビュー

TOP