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ミュージカル『CHESS』 アービター役の田代万里生にインタビュー!「アービターは“チェスそのもの”という存在」

『エビータ』『ライオンキング』『アイーダ』のティム・ライスが原案と作詞を担当し、ABBAのベニー・アンダーソン、ビョルン・ウルヴァースが楽曲を提供した伝説のミュージカル『CHESS』。日本では2012年に『CHESS in Concert』と銘打たれたバージョンが2回に渡って上演され大きな話題を呼んだ。そして2015年秋、満を持してミュージカル『CHESS』 が日本初演の幕を開ける。1970年代の東西冷戦、国家に翻弄される男女の愛、ドラマティックなゲーム展開などさまざまな要素をはらむ本作で、ゲームの全てを司る審判員・アービター役を演じる田代万里生に話を聞いた。

田代万里生

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――今日はアービターの扮装でご登場いただいていますが、これまで田代さんが演じてきたキャラクターとは一味違うモードになりそうですね。

本番の舞台ではまたアレンジが加わるかもしれませんが、ポスターなどのビジュアルはこの扮装で撮影しました。ストーリーテラーの役割を担うという点では『サンセット大通り』のジョー役でも経験していますが、演出の荻田(浩一)さんからは「アービターに関しては国籍や生い立ちなどのバックボーンを追求しないで演じて欲しい」と言われていて、これからまた試行錯誤が始まりそうです。荻田さんがお持ちのイメージは“アービター”=“チェスそのもの”ということですので。

――これまで上演された各国の舞台映像を見ても、アービターは一番いろいろなアレンジが出来る役だと思いました。

本当に上演されるバージョンによってびっくりするくらい違いますよね。余白が大きい分、やりがいのある役だと思います。チェスというゲームの精神論であったり、美学であったり…アービターという役を通じて人間の奥深さや哀しさも表現していきたいですね。

――ご自身のブログではアービターについて「(エリザベートの)トートとルキーニを足して2で割ったような役」と表現されていましたね。

ストーリーテラーという部分ではルキーニ、ミステリアスな面を持つというところではトートをイメージしていただければと思い、二つの役を挙げてみました。もちろんアービターとこの二役がガッチリ重なるということではないのですが、フランツ役で『エリザベート』に出演していることもあり、作品をご覧いただいた方たちが少しでもアービターに親しみを持って下さったら嬉しいな、と思ったんです。

田代万里生

チームワークはすでにバッチリ!実力派のキャスト陣

――共演者の皆さんについて伺わせて下さい。フレディ役の中川晃教さんとはミュージカルでのご共演は今回が初めてですね。

ミュージカルとしては初めてですが、コンサートでは何度かご一緒させていただいています。前回のコンサートでご一緒した際は、二人部屋の楽屋を一緒に使わせていただいて、トータルで約2ヶ月くらいでしょうか・・・二人っきりでいろいろな話をしたんですよ。ミュージシャンとしても僕とは全く違うルーツでやって来ている方なので、同じことについて話をしても捉え方が真逆だったりして・・・それがまた面白いんです。

――フローレンス役の安蘭けいさんとは『アリス・イン・ワンダーランド』『サンセット大通り』『MITSUKO』で、アナトリー役の石井一孝さんとは『トゥモロー・モーニング』でご共演されています。

安蘭さんとは事務所も一緒ですし、現場でお目にかかったり共演させて頂く機会も多く、とても安心感があります。すごく明るい方ですので、『サンセット大通り』のノーマや『アリス・イン・ワンダーランド』のアリスのようなヘビーな役をおやりになっても、常に稽古場を明るく照らして下さいます。僕にとっては頼れる存在の方ですね。
(石井)カズさんはどなたにも愛されるキャラクターです(笑)。大先輩なのですが、年齢を問わず仲良くして下さってありがたいです。どの現場でお目にかかっても全く変わらず、いつも人気者でいらっしゃるのがすごいなあ、と。

――すでにチームワークはバッチリな雰囲気!

そのようですね(笑)。4人ともバックボーンやテイストは違うメンバーですが、衝突することも絶対にないと思いますし、本当に尊敬できる方たちです。僕以外のお三方はコンサートバージョンですでに『CHESS』の世界に親しんでいて、そこに新たに参加することが叶ってとても嬉しいです。
本当は僕、カンパニーのメンバーの中に自分からグイグイ入っていくタイプではないのですが、今回は共演のお三方の方からグイグイ来て下さるので(笑)、とても気持ちが楽なんですよ。

――実力派のキャストの皆さんが歌うナンバーも楽しみです。

ABBAの二人が楽曲を担当しているのですが、ロックありクラシックありで「本当に作曲家は二人?実は十人くらいいるんじゃない?」とつい感じてしまうくらい、バリエーションに富んだナンバー揃いです。アービターはクラシックとロックがメインですが、フレディ役の中川さんにはラップ調の曲があったりしますし、音楽も楽しんでいただけるのではないでしょうか。僕はエレキギターがガンガン鳴る中で登場します。

田代万里生

田代万里生のターニングポイントとは?ミュージカル『エリザベート』についてなど、インタビューは後半に続きます。
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田代万里生

「俳優」と呼ばれていいのか・・・悩んだ時期を乗り越えて

――これまでの田代さんの活躍を拝見していると、常に新しいことに挑戦していらっしゃる気がします。転機になった作品や役がありましたら教えていただけますか?

そう言っていただけると嬉しいです。自分の中でターニングポイントとしてすぐに浮かぶのは『スリル・ミー』でしょうか。またそれと近い時期に『アリス・イン・ワンダーランド』と『サンセット大通り』の日本初演にもそれぞれ参加させていただいて、栗山民也さん、鈴木裕美さんという演出家お二人のもとで仕事ができたのは本当に大きな経験でした。
そして今回の演出家でもある荻田さん演出の『トゥモロー・モーニング』では2014年に菊田一夫演劇賞をいただきました。
実は僕、お芝居をする、演技をするということにずっと劣等感がありまして…やはり音楽の世界からスタートしていますので、どちらかというと俳優や役者というより歌手としての意識の方が大きかったんです。クラシックの現場からミュージカルの世界に足を踏み入れた時に“俳優”や“役者”と言われることにちょっとした違和感もあったりして…自分はそう呼ばれてよい存在なのだろうかと。
そういう葛藤のようなものが胸にある中で演技を続けて賞をいただきました。自分の仕事を認めて下さる方たちがいるのだと実感でき「ああ、俳優と名乗ってもいいんだな」と今では思えるようになりました。

――荻田さんとの出会いも田代さんにとって大切なご縁になりましたね。

荻田さんとは『トゥモロー・モーニング』でご一緒させていただき、僕の良い所もそうでない所も全てご存知だと思います(笑)。現場ではその内の長所を全部拾って下さって、更にそれを伸ばして下さいました。これは僕の側の印象なのですが、荻田さんは僕の俳優としてのいろいろな面を受け入れ、認めて下さったのだと思います。
ですから稽古の段階から本当に伸び伸びとやらせていただけましたし、結果その作品で賞をいただくこともでき、とても幸せに感じましたね。

田代万里生

――ミュージカル『エリザベート』では、ルドルフ役を経てフランツ役を演じていらっしゃいます。

ルドルフを演じていた頃は、まだミュージカルへの出演が4作目くらいの時で、先ほどお話した「俳優と呼ばれることの葛藤や違和感」が胸に渦巻いている時期でした。ルドルフはダンスの割合も多かったですし、大抜擢していただいたというプレッシャーもありましたね。更に自死してしまった実在の人物という役の辛さや重さも感じながら演じていました。
あれから5年が経って、フランツ役として『エリザベート』に再び出演させていただき、ルドルフとは全く違う難しさを再認識しています。フランツは23歳から60代までを生きなければいけませんし、皇帝として帝国を背負っているという重責もあり、舞台上に居る時間がとても長い役でもあります。出番はさほど多くなくてもインパクトが強いルドルフと、淡々と舞台上に存在し続けるフランツ…フランツは台詞や歌がない時も、役としてきっちりいろいろなことを“埋めて”存在していないとお客様に彼の心情が届かない。演じながら気付くことも多いですし、毎回勉強させていただいています。

――フランツとシシィが幸せだった時に流れるナンバーと、二人が進む道の違いを歌う「夜のボート」が同じ旋律というのも切ないです。『エリザベート』は観る年代によって、刺さる場面が違ってくるのだな、と。

僕もルドルフを演じていた時は自分のことに精いっぱいで、父(=フランツ)の気持ちを考える余裕もなく、ただ彼に反抗していました(笑)。フランツを演じているとあの時とは全く違った世界が目の前に広がりますね。母(=ゾフィ)との関係やシシィとの幸福だった時間、ルドルフに対しての父親としての思い…あれから5年が経って、人間としての成長が舞台で少しでも表現出来ていると良いのですが。

田代万里生

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――では最後に田代さんから、ミュージカル『CHESS』 を楽しみにしている方たちに向けてメッセージをお願いします。

今回は“チェスそのもの”として舞台上に存在して欲しいという言葉を荻田さんから頂き、これまでとは少し違う役作りが必要なのだと感じています。稽古が本格的にスタートする前に自分自身でイメージをし、現場に持っていく部分と、稽古場で荻田さんや共演者の皆さんと創造していく部分…いろいろな意味で新しい挑戦になりそうです。稽古場では本当に仲の良いカンパニーですが、舞台上のアービターは誰とも寄り添わず、完全に公平と中立を貫く審判員。僕にとってこれまでにない役柄になると思いますので、その辺りにも注目して頂ければ幸いです。
2012年のコンサートバージョンが“伝説”になったように、今回のミュージカル『CHESS』 =ミュージカル版日本初演もきっと新たな“伝説”を生む舞台になるはずです!ぜひ劇場に足をお運びください。


田代万里生

東京藝術大学音楽学部声楽科を経て、2009年に『マルグリッド』のアルマン役で颯爽とミュージカル界にデビューした田代万里生。端正な顔立ちと美しく響くテノールを武器に、多くのミュージカルに出演し、評価を得てきた彼だが、ある時期までは自分が「俳優」と呼ばれてよいものか、葛藤した時期もあったという。

『スリル・ミー』では長きにわたって屈折を抱えた“私”、『アリス・イン・ワンダーランド』ではお茶目なうさぎ、『サンセット大通り』ではハングリーに生きようとする脚本家のジョーなど、さまざまな作品で全く違う顔を見せる田代が『エリザベート』の皇帝・フランツに続いて挑戦するのはチェスというゲームを司る完全な審判員・アービターだ。

柔和で優しい笑顔の下に時折見える“剛”の部分がミュージカル『CHESS』 ではどう現れるのか…日本初演の舞台で田代アービターが華麗にゲーム開始を宣言する姿を楽しみに待ちたい。


【ミュージカル『CHESS』 】
2015年9月27日(日)~10月12日(月) 東京芸術劇場プレイハウス
2015年10月19日(月)~10月25日(日) 梅田芸術劇場 シアタードラマシティ

(文/上村由紀子)

CHESS THE MUSICAL

作品情報CHESS THE MUSICAL

天才チェスプレイヤー、ソビエト連邦の覇者、ハンガリー動乱で失われた記憶 全てを賭したゲームが始まる

  • 公演:
  • キャスト:安蘭けい、石井一孝、田代万里生、中川晃教、AKANE LIV、戸井勝海、大野幸人

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