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Dステ『夕陽伝』脚本/末満健一インタビュー!「もう後戻りができない現代を描く」

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ワタナベエンターテインメントに所属する俳優集団D-BOYSによって演じられる演劇ユニット公演「Dステ」。10月22日(木)に初日を迎える第17回公演『夕陽伝』は、NHK大河ドラマ『花燃ゆ』、舞台『マーキュリー・ファー』などで注目を集める瀬戸康史を主演に、日本神話・古事記の世界を舞台にした青春奇譚だ。
神話の世界観を脚本に描いたのは、関西を中心に根強い人気を博す、末満健一。過去の話題作『TRUMP』(作・演出)では不死を失ったヴァンパイアの若者たちを描いて連日満員御礼となり、2015年秋には再演も決定している注目の旗手である。今回脚本を手掛けた『夕陽伝』の見どころについて伺った。

末満健一

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―― Dステでの公演は2013年の『TRUMP』に続き二度目ですね。末満さんにとってDステというのはどういう場なんでしょう?

初めてDステでの公演が決まった時は、「アイドル俳優の子たちと芝居をするんだ」と思っていたんですが、実際D-BOYSのメンバーとつきあってみるとそのイメージが覆りました。みんな若くて一見華やかでアイドルのようなんですが、とても芯が強い。環境がそうさせているのか、とても芝居に飢えている人たちです。他の若い役者さんたちとは肌触りが違っていて面白いですね。
芝居に関しては彼らをとても信頼していますので、演出の岡村俊一さんと一緒に『夕陽伝』という脚本をどう料理してくれるのか、とても楽しみです。

―― 今回は日本神話『古事記』が元になっていますが、そのなかでも、イザナギノミコトとイザナミノミコトの神話をモチーフにしたのはなぜですか?

古事記にはいろいろな日本の神話が描かれていますが、たとえばスサノオノミコトやヤマトタケルの神話などは冒険譚として描きやすいだろうとは思ったんです。過去には歌舞伎や様々な劇団さんも題材にしています。だから今回はあえてスサノオは避けました。
『夕陽伝』のメインモチーフとして選んだイザナギノミコト(伊耶那岐命)とイザナミノミコト(伊耶那美命)の夫婦の神話は、似たような話が世界中にあるのが面白いなと思ったんですよ。死んだ妻を甦らせるために死者の国に行くというエピソードなんですが、ギリシャ神話に登場するオルフェウスや中東の神話にも類型が見られる。古事記が編纂された当時は、それほど情報網が発達していないのに、なぜこんなに同じような話が世界中にあるんだろうと不思議でした。きっと、愛する妻が亡くなった時、それを生き返らせたいという気持ちは人類にとって普遍的なものなんでしょうね。イザナギの場合は妻のイザナミを連れ戻すのに失敗するんですけれども、この『夕陽伝』は、もしその甦りが成功していたら…というifの物語です。

―― 主人公の海里(役:瀬戸康史)のモデルが夫のイザナミ、ヒロインの陽向(役:小芝風花)のモデルが妻のイザナミですね。今回は書き下ろしですが、当て書きなんですか?

すべてではありませんが、海里は瀬戸君のイメージありきで、でもちょっとズラして本人とは違う部分を引き出そうと意識して書きました。
池岡亮介君の演じる毘流古(ひるこ)という役は、当て書きですね。池岡君とは一度一緒に公演したことがあり、彼が演じたらすごく色気がある悪役ができるだろうなと狙っています。

末満健一

―― 『古事記』で芝居をつくると決まった時、現代日本で日本神話を上演する動機について悩まれたそうですね。

『古事記』を題材に脚本を書いてみないかというお話いただき、初めてじっくり『古事記』を読んでみたんです。でもやっぱり古い物語なので、それを現代でやる意味が自分の中でなかなか見い出せませんでした。そこでまず「神話ってなんだろう?」というところから考えることにしました。
『古事記』のおおまかな話は知っていましたが、改めて読んでみるとやはり荒唐無稽な話ばかりなんですよね。初めにこの日本という島国はイザナミノミコトという女神が生んだと書いてあって、島を生んだとかスケールでかいな、と思いましたよ。まずその状況が想像できない。ほかにも、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)という生き物が実際にいたのかというと疑わしいですし。かといって完全に作り話というわけでもなく、なにかの比喩だったりするんです。ヤマタノオロチの場合は、当時異国から攻めて来た侵略者をオロチに見立てて神話として伝えたといわれています。だから必ずしもでたらめな話ではないんでしょうね。
じゃあそれをどう現代に結びつけようかなと思った時に、大きく頭に浮かんだのは、震災のことだったんですよ。

末満健一

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―― 2011年の東日本大震災ですね。

ええ、近年において大きな出来事です。もし東日本大震災が神話の生まれた時代に起こったら、「海から巨大な怪物が現れて……」という神話になりえたんじゃないでしょうか。ですから、過去の神話と現代を結びつけようとした時に、直接的ではなくとも自分なりに3.11を絡めて書きたかった。
実際3.11の時に感じた「もう後戻りができないんだな」という感覚を物語を落とし込もうと思って、中盤でとんでもなく非現実的な出来事を起こし、物語構成をビフォーとアフターで完全に分けました。

―― 物語の前半と後半でびっくりするほど世界が変わりますよね!

それまで歴史劇のようだった舞台が、主人公の海里が黄泉の国へ行くというタブーを犯したことで、死人が甦ってしまう。今の日本に対して感じている「後戻りができなくなってきた」という感覚を、イザナギとイザナミの神話に重ねました。

―― ヒロインの名前の由来にもなっている「夕陽」のイメージはどこからきたものですか?

夕陽のイメージも今の日本です。3.11で原発事故が起こって、日本が大きく斜陽したという印象がありました。原発のなんとかリウムの半減期が何万年先で…って言われても、もう途方に暮れるしかない。そういう精神的な夕暮れに入った感覚が強くありました。
『夕陽伝』には、死んでいるにも関わらずまたこの世に出てくる死人たちが登場しますが、彼らは夕陽の中をさまよい歩きます。「昼」が健全な人間の国で、「夜」が破綻した死人の国とすると、生きても死んでもいない人たちはその狭間の「夕暮れ」に存在しているんです。
あとは単純にゾンビものが好きなんですよ。和風のゾンビものってあまりないし、あったとしても夜なんですよね。そうではなく、夕暮れの中に死人がさまよっている姿を、とても恐ろしいけれど美しいものとして見せられるんじゃないかなと思っています。

末満健一

―― 物語では、死人の国が攻めてきたり、愛する人が敵になったりと、主人公にとっては辛いことも多々起こります。 現代日本に重ねた物語ということですが、希望のある話ですか?

希望があるというよりも、苦境でも前を向かなければならない状況を描いています。
3.11を舞台化するわけではないんですけれど、象徴している部分はあります。僕は、今の日本の若い人たちにたくさんの負の財産を残してしまったなと感じています。自分が死ぬまでには負のものをなるべく減らして、良いものを若い人たちに残していきたいなとは思うんですけれど、現状は少なからずとても大きな負の財産を残してしまっている。でも、そうであっても生きていくしかない。だから前を向いているというよりは、前を向かざるをえないんですね。

―― もう逃げられない、みたいな。

そうですね、逃げられない。だからどんなに前を向いていたとしても、ある意味ではバッドシチュエーションなんですよね。選択肢がない中でも、人は生きていかなくてはいけないから。
そもそも主人公の海里は大王の世子ですが、何者にもなりたくないと思っている。けれども周囲からは次期大王として見られていて、国を背負わなければならなくなっていく。自分の意志ではないのに、周囲の状況によってそうせざるをえなくなっていくんです。
それは負の財産を持たされてしまった現代の若い人たちにも似ていて、彼らの意志とは別に無責任なことを強いてしまうけれども、頑張ってほしいという願いも込めたつもりです。

―― 12月には、キャストを変えて大阪でも上演されますね。『夕陽伝』と同じ脚本で末満さんご自身が演出をされるそうですが、タイトルが『幽悲伝』となっているんですね。

同じ『ユウヒデン』でも漢字が違うのは、単にインターネットで検索された時に区別がつくようにです(笑)
脚本も少しは変えるつもりです。でも岡村さんの演出と僕の演出は全然違うので、同じ脚本でも物語の描き方が全然変わると思います。出演者もタイプがまったく違いますしね。
Dステの『夕陽伝』は青春ものでもあり、若者の通過儀礼といった側面もあるんですけれども、『幽悲伝』は完全に悲劇ですね。全然違うんじゃないかな。残念ながら『幽悲伝』は大阪公演だけなんですが、両方見比べていただけるととても面白いと思います。先に『夕陽伝』を観た人が『幽悲伝』を観ると、かなり驚いていただけるはずです。

末満健一

◇末満健一プロフィール◇
1976年生、大阪府出身。佐々木蔵之介や腹筋善之介ら、実力派俳優が多数所属していた劇団「惑星ピスタチオ」に俳優として参加。
2002年、自身が脚本と演出を務める演劇ユニット「ピースピット」を旗揚げ。エンターテイメント性の高い作風で注目され、関西小劇場を中心に活動する。
以後、大阪と東京を行き来しながら、Dステ『TRUMP』、アイドルミュージカル、2.5次元演劇など東京の商業舞台も手掛ける。2014年、「ピースピット」の活動を一時休止。活動の比重を東京にシフトさせながら、作家・演出家活動を展開している。

◇『夕陽伝』あらすじ◇
物語は、大和朝廷の時代。政治を取り仕切る凪大王(なぎのおおきみ/山本亨)の息子、海里(かいり/瀬戸康史)と都月(つづき/宮﨑秋人)。そして幼馴染の陽向(ひなた/小芝風花)。自由のない宮中生活を嫌い外の世界を見て回りたいと願う海里と、生真面目で温厚な性格ながら兄に嫉妬心を抱く弟・都月は、陽向と3人喧嘩しながらも仲良く暮らす平和な日々を送っていた。しかしいつしか彼らは、次期国王への就任、政略結婚と、その渦中へ巻き込まれていく事になる。運命に翻弄される3人の恋心は複雑に交差し、やがて悲劇を生み出してしまう。そして兄弟は、それぞれの想いを胸にやがて対峙の時を迎え―

◇Dステ『夕陽伝』◇
10月22日(木)~11月1日(日) 東京・サンシャイン劇場
11月21日(土)~22日(日) 大阪・森ノ宮ピロティホール
※劇団Patch『幽悲伝』
12月19日(土)~20日(日) 大阪・森ノ宮ピロティホール

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(文/河野桃子)

夕陽伝

作品情報夕陽伝

「あの夕陽の沈む向こうには明日がある―」 終わらぬ夕暮れの先に未來を望む伝奇青春綺譚。

  • 公演:
  • キャスト:瀬戸康史、宮崎秋人、小芝風花、鈴木裕樹、荒井敦史、池岡亮介、前山剛久、高橋龍輝、遠藤雄弥、山本亨、ほか

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