舞台『アドルフに告ぐ』成河×松下洸平インタビュー「この世に不必要な人間なんて一人もいないんだ」


2015年6月3日(水)より舞台『アドルフに告ぐ』が上演される。「火の鳥」「ブッダ」など手塚作品の舞台化を実現してきた日本屈指の演出家・栗山民也が、実力派キャストを迎え、よりリアルに「アドルフ」たちが生きた時代を鮮烈に描く。今回は主演のナチス党員のドイツ人と日本人のハーフであるアドルフ・カウフマン役の成河、日本の神戸に住むユダヤ人でパン屋の息子であるアドルフ・カミル役の松下洸平のお二人に本作について語って頂いた。

舞台『アドルフに告ぐ』成河、松下洸平

関連記事:手塚治虫作品の舞台化、様々ありますがその一部をご紹介しましょう。

――今回の舞台へのご出演が決まった経緯や、その際のご心境などを教えてください。

成河:『アドルフに告ぐ』という作品名と、演出が栗山民也さんという情報だけで即答でオファーを受けました。

松下:僕もそうですね。話をもらった時には3人のアドルフのうちの誰かということで、役はまだ決まってなかったですね。

成河:そうだね。とにかく台本作りに時間をかけていて、どういうキャストになるかも分からない状況でオファーを受けたんですよ。

松下:それから個人的に今回のプロデューサーでもあるCAT(クリエイティブ・アート・スィンク)の江口さんに大変お世話になっていまして。僕の初舞台のオファーを下さった方なんですよ。僕が役者になる前、ずっと音楽をやっていた頃なんですが、その時に江口さんが役者の道に引っ張ってくれた方なんです。江口さんとまた一緒に舞台をしたいと思っていたので、二つ返事で「何でもいいからやります!」と(笑)

成河:それとKAAT神奈川芸術劇場という劇場自体がすごく好きで観にきていたので、素敵な劇場で、素敵な演目を掛けますし、一度ここで芝居ができればいいなと思っていたので念願が叶ったという思いです。

――稽古が始まっていますが、栗山民也さんの演出や雰囲気はどのように感じていますか?

松下:栗山さんの演出は芝居の根本を教えてくれるんですよね。栗山さんは芝居の見せ方を、鶴見さんだろうが、僕だろうが誰に対しても分かりやすく教えてくれます。まだ僕も役者を初めて経ってないですけど、色々な現場を経験させてもらって、忘れかけているあたり前のことを教えてくれるんですよね。「芝居ってそういうことだよな」と。別に他の仕事をこなすようにやっているわけではないんですけど、根本的なことを教えてくれるので、色々と大事なものを思い出させてくれるんですよ。そこが栗山さんの魅力であり、またいつか栗山さんと仕事がしたいなと思わせてくれる理由ですね。素直に芝居と向き合える演出をしてくれますし、余計なことを一切考えなくて済みます。栗山さんと一緒に舞台をやっていると、本当に芝居が好きになります。

成河:とにかく栗山さんに思うことは、役者を信じているし、観客を信じているし、演劇というものを信じてらっしゃるんだなということです。だからこそ、すごくシンプルで力のあるものを作れるし、そういう所に皆が惹かれるんだと思います。演劇を作るための心と愛情のある職人のような気質を感じますね。

――以前にも、松下さんは栗山さんが演出された舞台に出演されていますが、再び参加されるという点で栗山さんについて、どのように感じましたか?

松下:『スリル・ミー』という作品で4年間、ご一緒させて頂きました。栗山さんは以前と変わらずに“愛”について語り出すと止まらない人だなと。

成河:止まらないよねぇ(笑)

松下:『スリル・ミー』も“愛”の物語だったんですが、人々の争い、憎しみ、人間の欲の根底には常に“愛”があるというのは『スリル・ミー』でも教わりました。『アドルフに告ぐ』でも常に根底に“愛”が流れているんです。それがあるからこそ人を憎んだり妬んだり、壊したり、大切にしたりするんですね。その話の全てに栗山さんの語る“愛”が流れているんだなと、改めてご一緒したことで感じました。それは役者を愛しているからだと思うんですけど。

成河:“愛”の塊だよね、あの人は(笑)

舞台『アドルフに告ぐ』成河、松下洸平

――“愛”についてお話がありましたが、原作は歴史物、ミステリー、サスペンスとしての要素もありますけど、手塚治虫さん自身も本作のテーマとして“愛”を語っていました。舞台化にあたって“愛”について、もっとフィーチャーしているのでしょうか?

成河:色々な捉え方ができるからこそ、そうおっしゃったんだと思うんですけど。稽古場でも色々な話になっていまして、栗山さんとも話し合っているんですが、今回のプロジェクトではその言葉を僕たちはどう解釈するかというのを話し合っているんですよ。もちろん一つではなく大きな軸の中の一つとしてなんですが、栗山さんの目線の中ではカミルとカウフマンの“愛”というものがあるんじゃないかと考えています。恋愛ものであると手塚さんは後書きに書いてますけど、男女間のラブロマンスだけで捉えるともったいないと考えています。例えば、ナチス党員たちがヒトラーに向ける愛情であったり、色々な人間の愛のベクトルが色々な方向にあって、それが愛と憎しみの連鎖を生んでいくと。そういうところで二人の少年の“友情”から始まる物語が“友愛”になって、それが憎しみに転じていく二人の恋愛の物語と解釈したらどうだろうかという話になっていますね。

――原作は手塚さんの有名な作品ですね。原作が連載されていたのは30年以上も前で、扱っている時代背景も第二次世界大戦の前後からなので70年以上前になります。非常に難しい歴史的な面も扱いつつ、ミステリーやサスペンスのようなエンターテイメント性もある長編作品ですが、原作を読まれたご感想はいかがでしたか?

松下:実は僕は出演のお話を頂いてから原作を読んだんですよ。原作の漫画自体は知っていたのですが。実際に読んでみると難しい作品だなと。平和ボケしていたのかもしれないですけど、薄っすらとしか知らなかったことが原作を読むことによって、ちゃんと調べ直さないといけないなと感じましたね。

――あの時代の話は学校などでも、あまり扱われませんからね。

松下:それは本当に毎日のように皆と話し合いますし、自分としても考えるんですけど。今の学校教育の中で、戦争のことなどは僕たちはあまり教えてもらっていないんだなと。教科書に書かれていることしか知らなくて、それこそ、根底に流れている“愛”の物語や人間関係などを僕たちは教えてもらわなかったんだなと。当時の人がこの作品を読んだとしたら、単なる漫画だと済まされない気がします。歴史を知っていく上での大切な資料として残していかないといけない作品なんだと思いました。

成河:初めて読んだのは中学生の時に学校の図書館で。漫画なんか置かない図書館に、手塚さんの作品だからと特別に漫画が置いてあるから思わず手に取ってしまうという罠にはまって(笑)その時は内容なんて全く理解してなかったですけどね。ただ、頭の中にはアレは何だったんだろうか・・・という思いだけは、ずっと残っていました。今回、お話を受けて改めて読み直したんですけど、戦争当時のことを、ここまで他人事ではないと受け取って考えさせられる作品というのは 僕にとってはこれが初めてでした。すごく上手いなと感じたのは、あくまでナチス・ドイツの周辺の作品なんですが、舞台を神戸にしているということですね。それと、峠 草平という日本男児を軸に置いて狂言回しさせていることと、カウフマンという、ユダヤ人を虐殺するナチス党員に半分日本人の血を入れて、日本人の生真面目さや、盲目的であり狂信的な部分の半分をカウフマンに背負わせているところですね。そういう所に気付くと、ものすごく他人事ではないようにあの戦争というか、正義や善悪という点について考えながら、のめり込んで読んでしまいましたね。ただ、最後の最後には飲み込めきれないものがあって、だからこそ自分の中でも終われない、この物語が終われたら、おかしいんだよと言われているような気がして。終わってないことだし、自分の中でさえ終わらせてはいけないんだと。一つの問いかけであって、問いかけ続ける原動力を貰える作品だと思っています。そのエッセンスはそのまま舞台に出していかなきゃいけないと考えていますね。

舞台『アドルフに告ぐ』成河、松下洸平

――原作は非常に長編の作品なので全てを舞台に落とし込むというのは難しいと思いますが、台本を読まれて原作との違いなど感じたことを教えてください。

成河:原作付きの作品を舞台化する際に色々な言葉があると思うんですが、しいて言うならば“凝縮バージョン”ですね。原作そのままなら10時間とか上演しちゃう作品になってしまいますからね(笑)それでもいいでんすけど、今回は濃縮して凝縮することです。もちろん、カットしたエピソードはたくさんありますけど、その分、演劇でしかできない時間の感覚というものに主軸を置いていますね。

松下:カミルとカウフマンの青年期をだいぶギュッとしているよね。

成河:その分、一つ一つのエピソードが重たく意味を持ってきています。

松下:原作は確かに長い作品ですけど、凝縮したことで描き切れないというのはダメだと思いますね。描き切れなかったでは済まされないので。それは『アドルフに告ぐ』という作品でなくても、どんな作品であれそうなんですけど。昨日も栗山さんが「人間とのやり取りの中で起こりうる現象を全部ト書きで書いていたら台本がとんでもない厚さになってしまう。だから、台本に書かれていない心情だとかは、自分の心の中の台本に書いていかないと伝わらない」とおっしゃってたんですよ。原作が長いからカットしたシーンや登場人物はたくさんあるんですけど、どんな作品にせよ、そこも一手に引き受けて僕たちがやるしかないんですよね。

成河:栗山さんが稽古の初日に台本を持って全員で向き合った時に、今回のテーマは「この世に不必要な人間なんて一人もいないんだ」ということをおっしゃったんですよね。その一つのテーマを軸として、何が省かれて何が凝縮されようが、それだけを守ってこの物語と繋がれれば、きちんと原作に肉薄していけるんだと思っていますね。

――お二人が演じられるアドルフ・カウフマンとアドルフ・カミル、この対比される二人のアドルフについて役として難しい点と、入りやすい点はありますでしょうか?

成河:そりゃありますよ。それ赤裸々に話しちゃっていいのかな(笑)

松下:そうなんだよね(笑)難しい点というと、エリザという女性をカウフマンに寝取られて怒り狂ったカミルがカウフマンを訪ねるシーンあるんですが、昨日、そこで演出を受けたんですよ。カミルが決して怒らずにカウフマンと面と向かって話し合いたいから、最初から声を荒げるんじゃなくて、本当に怒りを表現するときは抑えたほうが、その中にある怒りが見えるよと。そこは自分には無い点かなと、僕は思ったら全部言っちゃうので。

成河:だから役者やってるんだもんね(笑)

松下:それはねぇ…すごく難しいんですけど。なるほどなとは思いました。カミルは優しいんですよ。

成河:でも、洸平君と相対していると温もりを感じるんですよ。キャラクターが持っている温もりの部分があって、そこはきっと洸平君が持っている物なんだろうなと感じます。それは意識的であれ、無意識的であれね。よく栗山さんがパンの匂いを感じさせて欲しい(※松下さん演じるカミルはパン屋の息子という設定)って言ってたもんね(笑)でも、もうパンの匂いはしてるよ(笑)甘くて、優しくて、なんか切なくなるような。

松下:それはカウフマンも一緒なんですよ。最終的にはナチス党員にまでなってユダヤ人を虐殺する人間ですけど、生まれた時からそんな人間は一人もいなくて、それこそ現代にも置き換えられると思うんですよね。少年が犯罪を犯す背景には、少年が生まれた時は誰もそんな人間だなんて思ってないだろうし、そんな風に育てたはずも無いんだけど、色々な生活環境の中で人間形成は決まってしまうので、その過程の中で人間は変わっていくと。だから、最初のナチス党員になる前のカウフマンとのシーンを演じていて、それこそカウフマンの優しさとか、純粋無垢な部分がすごく伝わってきてましたね。それだから、神戸でも二人は親友だったわけだし。あそこが純粋無垢な姿であればあるほど、ラストの舞台となるパレスチナでの悲しみは、お客さんに伝わるんじゃないかと思います。そういったことがあって、最初の二人のシーンでの成河の真っ直ぐな瞳をいつも思いだすんですよ。そのシーンで二人はすごく仲が良くて。

成河:そこだけに全部のエッセンスを凝縮したシーンがあって、本当に大事に演じています。

松下:だけど、ギュッと凝縮しているから、そのシーンだけを演じているわけにはいかなくて・・・次はもうドイツのシーンに移っているし、展開が早いんですよね。

成河:そう、展開が早いから、ガリッガリッと一つずつ演技を刻みつけていかないといけないという。演劇の醍醐味ではあるんですけどね。

松下:演劇の面白い部分ではあるんですけどね。最初のシーンでカウフマンの澄んだ瞳がいつもあって、二人で喧嘩するシーンなんですけど、最後にはたまらなくなりますね。

成河:キャラクターの話でカウフマンに共感できる部分でいうと、カウフマンはドイツ人と日本人のハーフであるという立場、つまり“地盤”が確かじゃないということですね。要するにアイデンティティをどこに持っていいか分からないという。日本人のグループにも馴染めず、でも父親はナチス党員なので色々な物を与えてくれるけど、自分では何も判断してこなかったために、そういう能力が育っていないので、結局は自分がどこに帰属しているか分からなくなってしまっている。ここまで考えると、自分とか自分の周りの同世代以下まんまじゃないのかという風に思えたんですよ。これは僕たちの話なんだと思えて、判断能力の無さと“地盤”のゆるさと、特に現代の都会で暮らしている人は自分がどこにいるのか曖昧で、だからこそインパクトのあるものが来た時に、考えもなく手を出してしまって、どんどん行ってしまう。そこに何かあるんじゃないかと思って、帰る場所が無いからどんどん猛進してしまう。という人間の思考回路というのは、カウフマンが特別なのではなくて、僕らにも起こりえるなと感じたので、その点は共感できるかな。だから、その点は僕が信じられる人物像なので、お客さんにも信じて欲しいですね。

ただ、僕がこればっかりは不可能なのはカウフマンがパレスチナの兵士になるところですね。これは他の何と比べても難易度は尋常じゃないですね。それこそ役者の醍醐味でもあるんですけど。カウフマンが50歳近くにになってパレスチナのアラブ人と一緒に戦う姿は、簡単に想像できないんですよ。声色や立ち姿で簡単に作れるものでもないですし、そこにどう入り込めばいいのかと。色々と見たり聞いたり、調べたりしていますが、とてもじゃないけど、この点だけは辿りつけない。お手上げです(笑)と言いつつも、残りの稽古で、どこまでそこに迫っていけるのかですかね。一番気を付けているのは、どこかで完成だと決めつけてしまわないということです。これは栗山さんの演出にも通じると思っています。自分で決めつけてしまうことは、役者としても貧しいことですしね。自分がそのキャラクターを信じられているかどうかという疑いを常に持って、本番に入って千秋楽まで行こうと。これは栗山さんもそう思っているんじゃないかと思います。そういう意味では、簡単に答えは出さないぞと(笑)

――そうですね。特にラストでは二人の立場が大きく逆転してしまうことになりますね。

松下:本当に難しいですね。それこそ、カミルはずっと正義を信じて生きてきた人間なのに、なぜイスラエル戦線に参加してしまうのか。今、僕が答えを出そうとしているのは、カミルにとっての心の中の故郷はユダヤ人としての誇りなのか、神戸に住んだことで生まれた日本人としての誇りなのか、どちらなのかという点なんです。やっぱり、そこは時によって変わるんですよね。そこが揺れることでカミルは悩むんですが、根本的にカミルのそれを支えてくれていたのはカウフマンの存在なのかもしれないと。成河も言ってたけど、それを探す旅が僕たち役者の仕事なんですよね。稽古でも、本番でも、大千秋楽でも探し続けているでしょうね。ただ、よくあるのは大千秋楽ぐらいでちょっと分かったりするんですよ。「あれ? こういうことだったのかなぁ…」と。でも、次の日には違う何かに手を付けているから、何かこの仕事は辞められないんでしょうね。ずっとそれを探す旅なのかもしれません。

舞台『アドルフに告ぐ』成河、松下洸平

――開演まであと僅かですが、稽古場の雰囲気などはいかがでしょうか?

成河:もう時間があまりないですけど、栗山さんの中には熱が入ってきたなと感じがします。栗山さんはダメ出しが長くて有名な方なんですが(笑)栗山さんのダメ出しをしている時のスタイルが実はすごく好きなんですよ。ダメ出しが始まると、阿吽の呼吸なんですけど、自分の出番に関わりがあろうがなかろうが全員が車座のように栗山さんの所に集まってきて、2時間とか3時間とかダメ出しを聞くんです。何度も無用に繰り返さないというか、一度バシッと言って、その時間よりも長いダメ出しをゆっくりと頭から整理していくというスタイルなんですよ。そのやり方が全員に行き渡るようにお話してくれるんですね。ヒトラー役の高橋洋さんが良くおっしゃられているんですけど、栗山さんのダメ出しは自分のことであってもそうでなくても、ためになるし、どの人に言っている一つの言葉をとっても全部自分のものとして価値のある言葉なんですよ。だから“ダメ出し”という言葉を使うのは良くないかもしれませんね、役者というものに対しての“アドバイス”をくれるんです。やっぱり核があるんですよね、役者として舞台に存在するためには。一言で言えないものを色々な方法や手段でアドバイスをくれて、その時間が本当に幸せだなぁと思いますし、栗山さんも演劇愛に満ちた佇まいで、すごく幸せな時間ですよ。本番に入ったら、恐怖がどっと押し寄せてくるでしょうけど(笑)

松下:そうなんだよ、栗山さんは本番が始まったらいないからね(笑)ただ、こういう重い作品の時って、稽古の休憩時間とかは皆で和気あいあいとするんですよね。

成河:人間って無意識にバランスとるんだよね。

松下:全員がものすごく集中して稽古しているから、休憩になると「なんか面白い話しようよ!」となるんですよね(笑)だから、出演者全員たくさん話しますし、稽古OFFの前の日には必ず皆でご飯を食べに行くんですよ。

成河:すごくチーム感があってイイよね。皆が栗山さんに対して一人一つずつ思いがありますしね。意識の高い人たちが集まった良い現場だと思います。

――それでは最後に、ファンの皆様とお客様へメッセージをお願いします。

松下:難しくは考えずに、まずは観に来て頂きたいですね。漫画を読んでからでなくてもいいです。僕たちが精一杯に魂をぶつけて伝えますので、少しでもいいから受け止めて頂ければと思います。そうして、帰り道にでも、寝る前にでもちょっとだけ過去の事を振り返ってみようという気持ちに一瞬でもなってくれれば、大げさに言うと世界が変わる一つのきっかけになると思います。今回は戦争が一つのテーマになっていますが、戦争だけじゃなくてもいいと思います。自分の過去の事とか、仲良くしている友達や愛している恋人との出会いだったりとか、昔を知ることで今を知るという、より良い未来ばかりのことを想像するだけじゃなくて過去も一緒に連れて行ってあげると、より良い未来が来るような気がするんですよね。だから、そういうきっかけになるような作品を僕らが一生懸命に作りますので、片意地を張らずに観に来て下さればと思います。それと、今回はさらに栗山ワールドが炸裂していて本当に素晴らしい演出となっていますので、そこも一つの見所です。エンターテイメントの要素もたくさん詰まっていますし、手塚治虫さんの漫画原作ということで笑いのエッセンスもありますので、たくさん泣いて、たくさん笑って一瞬立ち止まるような時間を皆さんに作れたらいいなと思います。

成河:この『アドルフに告ぐ』に、手塚治虫さんが込めた思いというのは演劇表現にとってピッタリの題材だと思うんですよ。劇場という他人事ではない場所で、体験・体感できる題材としては恰好のものですね。この物語を通じて人間が口にする善悪とか正義というものの曖昧さだったり、そういうものを深く考えたり、自分たちは一体何を知るべきで、その中から何を信じて行くべきなのかというのを一人一人が考えるきっかけになったらいいなと願う舞台です。

舞台『アドルフに告ぐ』成河、松下洸平


【成河 プロフィール】
1981年3月26日生まれ。大学時代より演劇を始める。北区つかこうへい劇団などを経て、2008年、平成20年度文化庁芸術祭演劇部門新人賞、2011年には第18回読売演劇大賞優秀男優賞受賞を受賞。最近の舞台作品に『ビッグ・フェラー』、東宝『十二夜』など。8月にはミュージカル『100万回生きたねこ』の主演も決定。NHK連続テレビ小説『マッサン』、映画『脳内ポイズンベリー』等、映像作品でも活躍中。

【松下洸平 プロフィール】

1987年3月6日生まれ。2008年11月5日、「STAND UP!」でCDデビュー。2009年ブロードウェイミュージカル『GLORY DAYS』に出演、以降ブロードウェイミュージカル『ALTAR BOYZ ~Orange』、ミュージカル『スリル・ミー』、CX『カラマーゾフの兄弟』、YTV『トクボウ 警察庁特殊防犯課』等、舞台や映像でも活躍。今年7月には『cube presentsPRINCE LIVE ~2015 SUMMER~』への出演も決定。

【舞台『アドルフに告ぐ』】
出演 成河、松下洸平、髙橋洋、朝海ひかる、前田亜季、大貫勇輔、谷田歩、彩吹真央、石井愃一、鶴見辰吾ほか。
原作 手塚治虫
演出 栗山民也
公演日程
2015年6月3日(水)~6月14日(日) KAAT神奈川芸術劇場<ホール>
2015年6月24日(水) メディキット県民文化センター 演劇ホール
2015年6月27日(土) ~6月28日(日)京都芸術劇場春秋座
2015年7月3日(金)~7月4日(土) 刈谷市総合文化センター大ホール

★お知らせ★舞台『アドルフに告ぐ』アフタートーク開催決定!
公演終了直後のキャストによる稽古場秘話や本公演にかける想いをお届けします!
6月4日(木)は、手塚治虫氏の長女、手塚るみ子氏をゲストにお迎えし、原作の『アドルフに告ぐ』についてのお話もうかがいます!

■6月4日(木)14:00公演終了後
【ゲスト】手塚るみ子(手塚プロダクション取締役/プランニングプロデューサー)
【出演】成河、鶴見辰吾

■6月11日(木)14:00公演終了後
【出演】成河、松下洸平、髙橋洋、朝海ひかる、彩吹真央

撮影(稽古場):引地信彦

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