舞台『龍馬がいっぱい』田中大祐×新倉ケンタ×石井康太 インタビュー<後編>「カルピスの原液みたいな人たちが集まった!」


(前編はこちらから)

田中大祐、石井康太

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再演決定!主演、新倉さんの心境は?

――今回新倉さんはじめ、新しい人たちも加わりましたね。

新倉:僕が初めて出演した舞台で、共演させていただいたのが気晴らしBOYZのKいちさんだったんです。共演と言ってもオムニバス形式の話の中でダンスをやっていただけなので、一緒にお芝居したことはないんですけど。5つの作品の中で一番おもしろいのはどれだって投票で、僕らの作品が2位でKいちさんの作品が1位だったんです。Kいちさんのがすっごい面白かったんですよ。僕ははじめコメディがやりたくて、舞台がやりたくて出させてもらったんですけど、僕らの組だけなぜかサスペンスで、ほか4つがコメディだったんですよ。いつかコメディをやりたいっていう心残りがあって。紹介してくれたのが、気晴らしBOYZのたむら(がはく)。「新倉君、こんなのがあるよ」って紹介してくれたのが田中さんの座組みってこともあって、恩人と言うかご縁があると思ったので、是非やらせてくださいってことになりました。

田中:一度、うちのワークショップに来たんだよね。

新倉:そうです。“笑い”の方も経験がなくて、心残りがあったので、ワークショップに参加して、そこで初めて田中さんとお会いしたんです。

石井:その後、映画『恋の渦』が当たってとんとん拍子で。

新倉:映画を撮り終わったくらいの頃で、その時は成功するかどうか、上映するかどうかも決まってなかったんで。

石井:ある意味、うちのワークショップでの成果が、『恋の渦』の成功につながったって言っても。

新倉:そうですね。それはもう間違いないですね。

石井:過言かな?(笑)

田中:完全に過言です(笑)

――新倉さんが気晴らしBOYZの公演で印象に残っている作品は?

新倉:初めて観て印象に残ったのが『MILLION DOLLAR ED』。第3回公演がすごい面白かったですし、好きな作品。もちろん僕の恩人でもあるたむらさんが結構活躍していて…というか、裸で踊っているというか。

石井:うちのたむらを恩人という人はなかなかいないよ。喜んでいると思うよ。この記事読んだら。

新倉:でも本当なんで。初めて舞台に出演するきっかけを下さったのがたむらさんだったので。

気晴らしBOYZ『龍馬がいっぱい』

――先ほど稽古場を拝見しましたが、新倉さん、龍馬にピッタリな感じですよね。

新倉:これも個人的は話ですが、ずっと好きだった漫画が『おーい!竜馬』。武田鉄矢さんが書いた作品がすごい好きで、昔から坂本龍馬を題材にした作品っていっぱいあるじゃないですか。実在した人物の役で、時代劇で、コメディ要素のある作品も初めて。もちろん主演と言うのも初めてですし、ぜひ!ということで、やらせていただきました。

石井:大変だと思いますよ。今回初演よりすごいですよね。

田中:濃いメンバーが集まりました。

石井:ですよね。だんだんと濃くはなっているんですけど。

田中:僕、濃い人が好きなんで。

石井:カルピスの原液見たいな人達が集まって(笑)

気晴らしBOYZ『龍馬がいっぱい』

――本日、稽古3日目とのことですが、雰囲気が良いですね。非常に明るくて。もうすっかり慣れましたか?

新倉:いやいやまだ全然。まだなじめてないというか。

――『龍馬がいっぱい』は劇団ゼロマンションでも上演されましたよね。他の劇団が上演することはどう感じていますか?

田中:嬉しいですよね。演出は違う方がやるんで、こういうやり方もあるんだと勉強にもなりましたし。

石井:ま、でもメンバーが全然違いましたよね。イケメンが多いし、殺陣も多いし、ダンスもあったよね。

田中:ゼロマンションでやった時はもう少しエンターテインメント寄りになっていて、それはそれで面白いなと思いました。

――殺陣はどうですか?

新倉:10年前くらい前にやっただけだったので、この機会にまた勉強させていただきたいですね。

田中:今回は経験者が多いんですが、殺陣師としてついてくれるJACの先生がやっている道場に稽古しにいったりしてますね。その方がいるT.P.O.Officeと合同で殺陣のワークショップとかをやらせていただいたりしていました。

――田中さんはさきほど、稽古が終わった後にも殺陣の練習をしていましたね?お上手だなって思って…。

田中:あれはたんに遊んでただけです(笑)

石井:看板女優を斬る演出家ね!(笑)今回バク転とかもあるんですよ。そこでいちばんできるのがこの人(=田中)っていう。誰よりも動ける演出家なんですよ。

気晴らしBOYZ『龍馬がいっぱい』

初の地方公演、そして今、何を思う!?

――気晴らしBOYZ初の地方公演ですが、プロモーションの感触はいかがでしたか?

石井:もともとぼくは沼津にご縁があるんですが(編集部注:石井さんは、沼津港深海水族館~シーラカンス・ミュージアム~の応援隊長)、沼津の人たちはそんなに演劇の公演を観に行く習慣がないのですが、それでもあたたかく迎えてもらって、飛び入りで地元のラジオ番組に参加させていただいたりと。ぜひ観に来ていただきたいですね。気晴らしBOYZは結構下ネタが多いんですが、この『龍馬がいっぱい』に関しては奇跡的にゼロでして!ならばぜひファミリーで来てほしいということで小学生未満の料金を500円に設定したり。

ただ問題があるとしたら、あまり手頃な劇場が予約できなくて。会場が沼津市民文化センターの大ホールになりまして。なんと1500人入るんですよ!(編集部注:東京国際フォーラム ホールCクラス)

新倉:え!?そんな入るんですか?てっきり900から1000人くらいかと。

石井:なかなかないでしょ!立ち回りとかもちょっと変わってくるよね。初めての地方公演ならではのハプニング。ま、これもご縁ですから。ここでやれっていう。

田中:もう、ちゃんと演出を考えてる…「席をつぶす」っていう(笑)

石井:まずね!まずそこだよね!(笑)

田中:席ばっか見てたもん。「どーしよっかなー」って。でも、それなりの演出を考えてますよ。

石井:沼津って意外と近いですからね。東京から沼津に行こうかなって方もいらっしゃるので。

――沼津の干物などと一緒にチケットを売るっていうのもいいんじゃないですか。

石井:それね、しようと思ったの。というか、沼津に港があるんで、そこで公演をやろうとも思ったの。屋根もあっていいじゃないですか。それか時代劇だから寺でやろうとか。いろいろ考えて、最終的に沼津市民文化センターになったんです。

――では最後に公演に対する意気込みをお聞かせください!

石井:じゃ僕から。2011年の旗揚げの顔合わせの時に、うちの第一子が誕生したり、すごいご縁があるんですよ。『龍馬がいっぱい』をやっていたこともあって、うちの息子の名前も同じ響きの「ソウマ」にしました。龍馬の“馬”をもらってね。初めて長い舞台をやらせてもらって、主演ももちろん時代劇も初めてでしたし、とにかく初めてづくしでしたね。あとその当時、めっちゃ疲れたんですよね。そこから4年経ってるので、もっと疲れるのか、それとも上手くなって疲れなくなっているのか。その辺も楽しみですよね。4年後の自分がどう進化してるのかとかも見れますし。

新倉:坂本龍馬のことが好きな人も多いですし、大河などでやっているのを観た方も多いですし。初演で作った作品をベースに作った作品なので、初演の時の龍馬はできないとしても、僕なりの龍馬をやれたらいいなとは思います。あとは2月の頭に事務所が決まり、来月30歳になることもありまして、いろいろな意味で20代の集大成をしたいです。役者生命を賭けて…ではないですけど。

石井:そこ、賭けないの?

新倉:…そうですね。賭けるっていうか…はい(笑)

田中:まあ、重くならない程度に賭けてくれれば(笑)

新倉:本当に節目なので、お客さんを動員できるように頑張ります!

田中:僕は、ちゃんとしたエンターテインメントにしたいなと思ってます。初演よりも見どころを増やして。映像だったり、殺陣だったり。あとはうちはコメディ劇団なので、笑いにはこだわらなきゃなと思っています。もともとはテレビのバラエティ出身なので、舞台はかくあらねばとか、そういうのはナシで自由に作りたいなって思っています。

田中大祐

なんか日本ってコメディが一段格下に見られちゃっているじゃないですか。笑いの文化はTVが基準になっていて。特に物語の世界は。海外だとコメディ映画でもちゃんとお客さんが入るけど、日本だと最後に泣けないと、とか、文学的なとこがないと満足しない、みたいな風潮があるじゃないですか。それか極端にエキセントリックだったり。だからちゃんとした喜劇を作りたいなと思ってこの劇団を始めたんです。そういう思いをまとめて今回の公演で出せたらいいなと思ってます。

石井:うん(笑)僕らの場合、「初めて舞台観に来ました!」って方が多いんですよ。「気晴らしBOYZを観て舞台にハマりました」っていう。この4年間で気晴らしBOYZをきっかけに舞台にハマってくれて、いろいろな舞台を見始めて、また気晴らしBOYZの舞台を観に来てくれる。それで「気晴らしBOYZが一番面白い」って言ってくれるのがすごくうれしい。田中が作家ってこともあって、すごくわかりやすいと思います。分かりづらい舞台って多いじゃないですか。でも気晴らしBOYZは分からないことがまずない、って感じかな。

田中:僕の場合、高校の時に友達と初めて舞台を観に行ったんですよ。それが非常に文学的なエキセントリックすぎる舞台で、チケット代5000円で。高校生の5000円ってデカいじゃないですか。それで「これは…いいや」って思って。そこから15年間演劇を観なかった。

石井:そもそも僕は日大付属の高校で、日大芸術学部の演劇学科を受験するとき、そういや舞台を観たことがないやって思って。それで当時、いちばん有名な作品を観に行ったんだけど…(苦笑)

――初心者には難しい演目だったのかもしれませんね。

石井:ですよね(笑)

最後の最後に…

石井:19歳で初めて舞台を踏んで、“やるせなす”としてやらせてもらって。その時、お客さんの前に立った時の感じがデカかったんですよね。「舞台しかないな」って。「お客さんの前でやりたいな」って。そのタイミングで田中に声かけてもらったので、「是非」と。個人的にもそうですし、劇団的にも4年目、そろそろ5周年にもなるんで、集大成となる作品ができるように頑張りたいです。

田中:なんだかんだ生の舞台を観たことがないという人は多いと思うんですが、そういう人たちに体験してもらいたい。TVでタダで番組を観れるし、TSUTAYAで100円で映画も観れる。じゃあ4000円でどれだけ満足させることができるか!?…ってことをいちばんに考えてます。そこを大事にしたいんです。


<プロフィール>
田中大祐/主宰・作・演出

1976年11月9日生まれ。放送作家としてバラエティ番組を中心にテレビ・ラジオなどの構成を手がける。近年、舞台、脚本業に精を出し、気晴らしBOYZを旗揚げ。全作品の脚本演出を担当。外部への脚本提供も積極的に手がける。主な作品に、映画『体脂肪計タニタの社員食堂』(脚本・原作)TV『笑う犬の情熱』『感じるジャッカル』他、舞台『OUT OF ORDER 笑うな』(2004年 脚本参加)『中丸君の楽しい時間』(2008年 構成協力)『If or…』Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ(2009~2011年)構成協力、『ふらちな侍』劇団ゼロマンション(2013年)脚本・演出『見切り発車シスターズ』劇団ハーベスト(2013年)脚本 ほか。

石井康太
1975年3月16日生まれ。お笑いコンビ“やるせなす”として多くのバラエティ番組で活躍。近年は俳優としても活動の場を広げ、ドラマや舞台にも数多く出演。沼津港深海水族館の応援隊長として魚の解説も行っている。気晴らしBOYZ立ち上げメンバー。主な出演作品に、TV『ごくせん』『人にやさしく』他、舞台『OUT OF ORDER』(2002~2005年)『NOW LOADING』(2005)『現代狂言』Ⅳ/Ⅴ(2010年~)『ぶっ壊したい世界』(2014年)他

新倉ケンタ
1985年生まれ。主な出演作にカメレオ「ダメ男」(PV) 舞台 劇団、本谷有希子 番外編「ぬるい毒」演出/吉田大八 (2014年) 映画「恋の渦」(2013)「闇金 ウシジマくんpart2」(2014)ほか。

『龍馬がいっぱい』

<『龍馬がいっぱい』あらすじ>
時は幕末、慶応三(1867)年、勤王討幕の志士たちが集う京都…から少し離れた田舎の宿場。日の本の夜明けを目前に、志士も庶民も気分は幕末HIGH。騙す阿呆に騙される阿呆。天下の英雄“坂本龍馬”を巡り、志士に刺客に香具師に遊女、虚実入り乱れた大騒動が巻き起こる!

『龍馬がいっぱい』
作・演出:田中大祐
2015年3月24日(火)~3月29日(日)東京・中野ザ・ポケット 
2015年4月3日(木)~4月5日(日) 静岡・沼津市民文化センター大ホール
出演:新倉ケンタ、石井康太、右近良之、与座よしあき、中村優、松原夏海、Kいち、古賀司照、冠仁、小野由香、たむらがはく、高林昌伸、武田一成ほか
気晴らしBOYZ公式ホームページはこちら

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