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インタビュー

つながる音楽劇『麦ふみクーツェ』渡部豪太インタビュー!「毎公演、何が起こるかわからないですよ!」

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この春に10周年を迎える大阪・シアターBRAVA!の記念ラインナップの一つとして劇場プロデュースで上演される、『つながる音楽劇「麦ふみクーツェ」~everything is symphony!!~』。原作は、小説家いしいしんじの「麦ふみクーツェ」。とある港町で、少年“ねこ”が町の人たちによる吹奏楽団と出会い、さまざまなできごとを通して指揮者として成長していく物語を、関西を中心に活躍する作・演出家のウォーリー木下、音楽監督にギターと玩具を主軸に無数の楽器を演奏する音楽家トクマルシューゴを迎え、魅力あるキャストとともに音楽劇に作り上げる。
主人公のねこ役の渡部豪太に、この作品の魅力と公演に向けての意気込みを伺った。

『麦ふみクーツェ』渡部豪太


――もともと原作はご存知だったんですか?

いえ。この舞台に出演が決まってからいしいしんじさんの原作を読みました。すっかり世界観に圧倒されて、一気にいしいさんのファンになりました。文体も好きですし、いま、いしいさんの本を読みあさっています。

――原作の『麦ふみクーツェ』を読んだ時の感想はいかがでしたか?

本を読んでいる時は、旅をしているような。旅が始まって、閉じた瞬間に現実に戻るというような感じでした。心地いい文章の旅がずっと続くんです。もう何回も読んでいるんですけど、色あせることなく、むしろ読み返すたびに「あ、こんなこと言ってたんだ」って、新しい発見もあり。物語の奥行きが果てしなくあるんです。本当に多くを感じることのできる作品に出会ったなと思います。

『麦ふみクーツェ』渡部豪太

――そんな魅力的な作品が、「音楽劇」として舞台化されるわけですね。

そうなんです。ウォーリー木下さんの脚本で、また新たに生まれ変わっています。いしいしんじさんの作品の世界観を礎にしていますが、原作を演劇に寄せてはいない。いしいさんの世界観を音楽の線で繋いだリングの中を我々が演じる感覚。原作の中にでてくるセリフも使われていますし。音と照明と演出でさらに立体的になっています。今回のテーマが「つながる音楽劇」ということで、お客さんとのつながりのツールに「音楽」があって、これがとても大事になってくるんです。

――公演チラシに、「観客はそれぞれ、一人が一個ずつ、何か音のするものを持参すること」と記されています。

だから、今回の作品は、お客さんと一緒に立ち上げるんです。もちろん我々が稽古で世界を作っていくんですけど、その中に実際にお客さんが足を踏み入れて呼吸する。音のするものは何でもいいんですよ。観劇の邪魔にならなければ。俺の友達なんて、「電源借りられる?」って。「いったい何を持ってくるんだ?」っていう(笑)

――ちなみに、渡部さんだったら、何を持っていきますか?

それなんですよ…よく聞かれるんですけど、すごく悩んでいるんです(笑)僕が芸人だったら面白いものを言うんでしょうけど。ポテトチップスとか…? あ、飲食はダメだよね(笑)アメを砕く音とか…これも飲食だ(笑)音楽監督のトクマルさんご自身も、「全部のパートがふける観客として座りたいな」と言ってました。

――トクマルシューゴさんが音楽監督というのも注目です。

今回の音楽は、トクマルさんの全編書き下ろしです。我々が作品のなかでもっと自由に動けるようにしてくださった音楽でもあり、素晴らしい楽曲が揃っています。甘酸っぱい曲から、乾いた曲、じっとりとした曲、塩気のある曲…ほんとうにさまざまな曲で飽きさせません。

――そこにお客さんが生み出す音が加わって…。そういう意味では、今回は劇場全体が特殊な一体感を持つ作品になりそうです。

力のある演者さんが揃ってるし、スタッフ、ウォーリー木下さんはお客様を取り込む演出で定評のある方ですし、トクマルさんはアーティストとして、何百、何万のお客さんの前で演奏を続けてきた人。それにバックボーンはいしいしんじさんの世界。ほんとうに目には見えない空気を作り出すというか、話の筋をつくってくれたいしいさんがいるわけですからね。毎公演、お客さんが違えば我々の舞台も変わってくる。何が起こるか分からないですよ。

音楽劇って、ミュージカルとは違ってまだあまりなじみのないジャンルですよね。でも実は日常に音はあふれていますよね? たとえば、男女のカップルがしゃべっていて、男がなんか馬鹿なことを言って、女は「なにそれ?どういうこと?」って言ったら、沈黙のあとに飛行機がビューンと通り過ぎる。これだって二つの心臓と、飛行機による、壮大な音楽劇なんです。耳という集音器があって、鼓膜というものを持って、劇場に足を運ぶという物好きであれば(笑)、絶対に感じるものがあるはず。なぜなら、我々が作る『麦ふみクーツェ』の劇場は、音にあふれてて。それは、デジタル音楽とかではなくて、生の音。一番耳に届く優しい音で体温に近い音で…。今回の目標のひとつに、「音楽劇って何?」って話になる時に、「この間やってた『麦ふみクーツェ』ってあるじゃん、あれが音楽劇だよ」って言われるような作品になれたらと思っているんです。

『麦ふみクーツェ』渡部豪太

――そんな挑戦が込められた作品のなかで、渡部さんは主人公の少年“ねこ”を演じます。

“ねこ”という男の子は、子どものころから聞こえる音があります。それは、ねこだけが見える「クーツェ」っていう謎の影が麦を踏む音なんですけど、それが彼の耳にずっと聞こえているんです。

――製作発表では、実際に渡部さんがネコの声を披露されて、さらに自分なりのネコの声を追求したいとおっしゃっていましたが、目指しているネコの声ってあるんですか?

「ネコよりネコっぽく。気味が悪いくらいネコっぽく」。ネコの声ってときに人の声に聞こえる、みたいなことあるじゃないですか。「なんだ、隣のカップルうるさいな」と思ったら、ネコだった…とか(笑)。

――ネコとしての自然さを求めるよりも、“ねこ”という個性を際立たせたいということ?

ネコにもいろいろいると思うんです。鳴かないネコだっているでしょうし。それは人間と一緒なんですよ。ネコという声帯を俺がつくることができれば、俺が「はい」と言っても、「いいえ」と言っても、「ニャー」としか聞こえない。そこなのかなと。お客さんのなかに、ネコアレルギーの人がいたとして、ちょっとかゆくなっちゃうくらいの反応が現れたら最高ですよね(笑)

『麦ふみクーツェ』渡部豪太

――“ねこ”以外にも、頑固者の“おじいちゃん”やピアノが得意な“みどり色”など、個性的なキャラクター登場します。どのキャラクターにも強さと弱さがあって、それがとても魅力的な感じがします。

人間誰もがコンプレックスを持ってるじゃないですか。何かに秀でている人こそ持ってるかもしれない。「あの人完璧だよね」ってねたまれる人であっても、きっとその人なりのコンプレックスを何か持っている。この作品の中ではそんなコンプレックスが割と際立たせて描かれています。これは我々の世界、現実。俺のなかで『麦ふみクーツェ』は。明日起きてもおかしくない事象の連続と思っているんです。

――舞台をご覧になる人たちが、自分と登場するキャラクターに自分を重ねて共感することもありそうですね。ちなみに、今回、渡部さんが注目している “ねこ”以外のキャラクターは?

“先生”(“みどり色”を引き取って育てた、キテレツな行動をする盲目のチェロ弾き)は面白いと思う。“おじいちゃん”も渋いと思うし……でもやっぱり“みどり色”かな? すごいですよ、今回の“みどり色”は。今回というか初めてですけど(笑)。まるですでに公演しているように言ってしまいましたけど。

――本格的な稽古に先行して音楽稽古が始まっているそうですが、そこで感じたことですか?

そうです。今回のキャストは音楽畑出身の方もいるし、役者の方もいるから、それぞれの偏屈さとか熱量の違いとかがあって面白いです。本稽古はまだですけど、すでに本稽古といっても過言ではないことが行われていますね。“みどり色”のことは、本のなかに、「カラフルな“みどり色”、はじめて歌う。彼女の声はカラフルだ」ってあるんですけど、実際に聴いて、「ああこの人の声って、とてもカラフルだな」って思っちゃったんです。なぜかというと、それはこっちがカラフルな声を求めているからこそ、そう聴こえていることもあるけど、それ以上に、もっと聴きたいって思う声を“みどり色”役の皆本麻帆さんは持っているんですよ。それって彼女の引き出しの深さだったりとか、出し惜しんでいる彼女のまだ隠されている人間性だったりとか。きっとそういうのもあると思うんですけど。

『麦ふみクーツェ』渡部豪太

――話変わって、渡部さんのこれまでの「音楽」との付き合いについて伺います。これまで渡部さんは音楽とどう付き合ってこられたんですか?

すごく音楽マニアじゃないですけど、音楽は好きです。ジャンルにとらわれず、なんでも聞きますね。

――自分のなかで、そのときにピンときた音楽を聞く、みたいな感じ?

そうですね。ジャンルレスに。

――渡部豪太のベスト1はありますか?

エリオット・スミスの「ローズパレード」って曲。スケボーのビデオに、エリオット・スミスの曲が使われてて、興味を持ってアルバムを聴いたらその曲が入っていて。それからですね。自分のなかで1本の柱になってるかもしれない。切なさや甘酸っぱさがある曲なんです。

――渡部さんは、近年、テレビ・映画・舞台で俳優としての表現の幅を広げていらっしゃいますが、特に渡部さんにとって「舞台」は、どんな気持ちで取り組んでいるものなのでしょうか?

楽しい現場ですね。計算した演技はできてないですし、「かなり荒削りで不器用なものをお客さんに見せ続けているんだろうな」と思う。でも、見せ続けられるということは、きっと観ている誰かが良し悪しではなく、「面白い」と思ってくれているからだと思うので、そう思ってくれている方がいる以上続けたいし、いつの日か、そこからもう一歩進んだ洗練されたもの、計算され尽くした洗練されてないもの、自分のなかにあるものを高い計算の中で素直に出したいと思っています。

――そういう意味でも、この作品は俳優としての良い経験となりそうですね。

「計算され尽くした洗練されていないもの」を見せる。その試みとしてピッタリですよね。引き続き、おおいに渡部豪太らしさをいかんなく大きく発揮したいなと思います。主演を張らせていただくということで、もちろんテンションも上がっていますし気合いも入っています。覚悟して観に来てください(笑)

――最後に、改めて今回の『麦ふみクーツェ』で伝えたいメッセージ、意気込みをお願いします。

「日常にあふれているもの、自分を取り巻いているものは、形のないものだったり、見えないものにあふれてるんだよ」ってことかな。あらゆる事柄にはつながりがあって、触ろうと思えばいつでも触れる。それは、晴れの日、誰もがイメージ出来て、誰もが思い浮かべればあの晴れの日を思い出せるのに触れられない。でも絶対に自分の中にあるもの。金曜日の放課後とか、「明日土曜日じゃん!」って、ちょっとワクワクするじゃないですか。その時のワクワクする気持ちとか。言葉にできない物は言葉にしないだけで、そこにあるんだよってことが、もしかしたらいろいろ分かるかもしれない。誰も見たことがない。でも確実に自分のなかにはある。そういうものに対して、新しい気持ちになれるんじゃないかな。今回は、楽器を持って参加しなければならないという触れ書きがあって、一緒に作り上げる緊張感も楽しんでほしい。(人気アニメの)「刮目せよ」ではないですが「緊張せよ」みたいな。

あ、もし俺がセリフをかんだとしても「お客さんのせいだから」って言い訳してもいいよね(笑)。

『麦ふみクーツェ』渡部豪太


◇渡部豪太(わたべ・ごうた)プロフィール◇
1986年3月8日、茨城県出身。年少時より芸能活動を始め、ドラマ、映画、舞台と多方面で活躍中。最近の出演作に、ドラマ『そこをなんとか2』(NHK BSプレミアム)、連続ドラマW東野圭吾『変身』(WOWOW)、舞台『Yuming sing…あなたがいたから私がいた』など。また、3月31日(火)よりNHK Eテレ毎週火曜日放送の「テレビでフランス語」にナビゲーターとしてレギュラー出演する。日本・トルコ合作映画『海難1890』が2015年12月公開予定。

◇つながる音楽劇「麦ふみクーツェ」~everything is symphony!!~あらすじ◇
とある港町。“おじいちゃん”とともに港町にやってきた少年“ねこ”は、町民たちによる吹奏楽団「麦ふみ楽団」と出会う。頑固者の“おじいちゃん”と楽団メンバー、チェリストの“先生”と町を訪れた、“みどり色”とのラブストーリー……さらに、町に巻き起こる恐ろしい出来事を通し、“ねこ”はいつしか自らの生い立ちや過去を乗り越え、指揮者を目指し港町を巣立っていく。そして、晴れてデビュー公演が決まった“ねこ”は、「麦ふみ楽団」に一緒に演奏してほしいと手紙を出すが、演奏会の直前、“ねこ”は“みどり色”と火事に巻き込まれ——。

シアターBRAVA! 10周年記念シリーズ
『つながる音楽劇「麦ふみクーツェ」~everything is symphony!!~』
出演:渡部豪太、皆本麻帆、朴璐美、植本潤、木戸邑弥、小松利昌、田中利花、松尾貴史、尾藤イサオ ほか
スケジュール:
【東京公演】2015年4月10日(金)~4月19日(日)世田谷パブリックシアター
【大阪公演】2015年4月23日(木)~26日(日)シアターBRAVA!

公式ホームページはこちら

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(文/堀江純子)

Sorry, no image.

作品情報麦ふみクーツェ

‟この世でおよそ打楽器でないものはない“-。ヘンテコな人々が織りなす音溢れる空間、響き合う至福の時。

  • 公演:
  • キャスト:渡部豪太、皆本麻帆、朴璐美、植本潤、木戸邑弥、小松利昌、田中利花、松尾貴史、尾藤イサオ、ほか

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