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劇団「ヨーロッパ企画」人気の秘密を探る<前編> ~異色の劇団が起こした革命

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1998年の結成以来、コメディにこだわった舞台を作り続け、今では全国で1万人をも動員するまでになった京都の劇団「ヨーロッパ企画」。動員アップのきっかけが「メンバーの誰かがTVで大ブレイク」という理由が大多数な日本演劇事情の中にあって、特にメディアで派手なヒットを飛ばしたわけでもないのに、ここまで動員数を伸ばし続けるケースは珍しいだろう。しかしその舞台や活動をよく見ると、実は彼らは従来の劇団とはいろいろと異色であり、そのことによって突出した存在になれた…と思えるのだ。というわけでこの機会に改めて、ヨーロッパ企画が起こしたレボリューションについて、真面目に分析してみたい。

『サマータイムマシン・ブルース』
『サマータイムマシン・ブルース』

関連記事:ヨーロッパ企画からこのお二人が登場!『キョートカクテル』ヨーロッパ企画・石田剛太&諏訪雅にインタビュー!

物語性より「企画性」を重視した“演劇だからこそ”の笑い。

日本のシチュエーション・コメディは、井上ひさしや三谷幸喜などのように、登場人物たちの会話とそれに付随する演技のおかしさで笑わせる、物語性重視のものが多い。ヨーロッパ企画もまた、初期の頃は割と物語性が強く、映画化もされた『冬のユリゲラー』(映画版は『曲がれ! スプーン』)や『サマータイムマシン・ブルース』はその時代のなごりだ。しかし2002年の『ロードランナーズ・ハイ』の辺りから、物語性より「企画性」に重きを置いたコメディ作りに挑戦し始める。

この「企画性」というのは聞き慣れない言葉だと思うが、「お題」と言えばまだピンと来るのではないだろうか。「高い所と低い所で会話をしたらどんな内容になるか」「極小の集合住宅で人はどんな暮らしを送るのか」「移動しながら話を進めたらどんな気分になるか」などの“企画”を先に設定し、それに似合う変わった舞台美術や装置を作り、そんな場所だからこそ生まれる物語を後から考える…という順番になっているのだ。通常の舞台は、まずは脚本があって、そこから物語を生かすのに効果的な美術を考える…というパターンが圧倒的に多いので、ある意味日本の演劇の常識とは逆行したスタイルと言えるだろう。

『Windows5000』(極小住宅の話の完成形)
『Windows5000』(極小の集合住宅で人はどんな暮らしを送るのか)

しかしそのやり方こそが、舞台でしか見られないような笑いを生むと、劇団主宰で作・演出家の上田誠は言う。物語性を重視した舞台は、映像で観た場合も特に印象が変わらなかったり、むしろ役者の表情を細かく観察できる映像で見た方が面白かった、なんて逆転現象も起こりうる。しかしヨーロッパ企画の舞台は、非常に大掛かりな舞台美術の中で役者たちがライブで起こす(ように見える)アクションや会話のおかしさor絶妙さを、同じ時空間で体感することに意義があるという、かなりイベント色の高いもの。つまり、まさに「舞台で観る方が断然面白い」コメディなのだ。だからヨーロッパ企画の場合「見逃してもDVDで観ればいいか」とは簡単には割り切れず、それゆえに多少無理をしてでも舞台で観なければと思わせる。そんな観客をコツコツと増やしていることが、現在も動員を伸ばし続けている大きな理由なのだろう。

単なる自然体ではない、エチュードから生まれるゆる~い会話。

 

かつて筆者が某大物俳優を取材した時、等身大の演技や表現しかやろうとしない今の若者たちに苦言を呈した後で「どうせやるなら、ヨーロッパ企画ぐらいのん気にやってほしい」と付け加えた…ということがある。確かに彼らが舞台上で交わすゆるい会話や、到底演技中とは思えないほど自然なたたずまいは、ヨーロッパ企画の大きな魅力の一つ。そのあまりのナチュラルさに「ほぼアドリブでは?」と思う人も少なくないらしいが、実際はキッチリとした台本が存在している。しかしこの台本を作る過程も、やはり彼ら独特のものなのだ。

ヨーロッパ企画の稽古初日に、台本があることはめったにない。その代わり“企画”の意図に沿った様々なシチュエーションが用意され、役者たちはその課題を元に自由にエチュード(即興芝居)を繰り広げる。そこから生まれた展開や、印象的な言葉を上田誠がピックアップして、それを起点にさらに話を深めていく…というやり方になっている。

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『ロベルトの操縦』(移動しながら話を進めたらどんな気分になるか)

たとえば「迷路を何度試しても同じ場所に出る」というシチュエーション1つ取っても、その反応は人によって異なるはずだ。さっさとあきらめる者、裏技的なモノを探す者、周囲の判断に頼り切る者…作家が一人で考えこんでもそのパターンには限界があるが、役者も演じながら一緒に考えると、その選択肢は何倍にも広がる。さらに役者の方も、エチュードで発信したモノが大なり小なり役に反映されるので、自分の性格や嗜好や身体性とかけ離れ過ぎない、自然体に近い役作りができる…というわけなのだ。

ナチュラルに見えるように演じることと、自分の身体からナチュラルに出てきた言動を再現すること。この2つは似ているように見えて、非常に大きな差異がある。ヨーロッパ企画の演技スタイルが真似しようとしても意外と簡単にはいかなくて、先の大物俳優のように見る人が見れば明らかにその違いがわかるのは、それが理由なのだろう。

さてこのように、前編はヨーロッパ企画の舞台の特徴について言及したが、次回は各メンバーの個性や活動&舞台以外での各種ワークの特殊性について解説をしてみようと思う。

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